第50話 本心
「うぷっ……食い過ぎた……」
店から出た俺は、満腹を通り越して苦しくなった腹を擦りながら呟いた。
無理矢理詰め込んだ為、普段ならもう少し余裕のある筈の胃袋が妙な圧迫感を感じている。
「アル? 大丈夫?」
「だ、大丈夫……」
心配そうに覗き込んで来るエミリアを手で制し、俺は後ろの四人に視線を向ける。
「えっ!? じゃ、じゃあアルファンド君とは同じ部屋で寝泊まりしているの!?」
「そうよ、でもどんなにアピールしても何もしてくれなくて……」
「そいつは重症だな……」
「あれか? あいつは女に興味が無いのか?」
好き放題言っている四人に、俺は怨めしそうな視線を向ける。
ふざけるな、俺はそっちの気は無いし女性にしか興味は無い。
だけど流石に手を出したら今のこの関係が壊れるのではと思って我慢しているだけだ。
「アル……女の子に興味無いの……?」
先程とは違った意味で心配してくるエミリア。
「そんな事は断じて無い、俺はちゃんと女の子に興味があるから」
「本当に?」
「……あのなぁ、俺はエミリアの事が好きだからな?」
俺の一言に、エミリアは顔を赤くして俯いた。
……あ、今自然に告白の様になってしまった。
でもそう言わないといらん誤解を受けてしまうから仕方ないだろう。
実際、エミリアの事は好きだし嘘は言ってない。
「あ、あのね……私も、好きだよ……?」
「えっ? あ……」
今度は俺の方が赤面してしまう。
こうして面と向かって言われると、どう返していいのかわからない。
「……ちょっと貴方達、私を差し置いて何を話しているの?」
後ろから肩を捕まれた。
慌てて振り向くとアーリアさんの極寒の瞳が俺を射ぬいていた……恐い。
「あの、アーリアさん……?」
「二人で甘い空気を漂わせちゃって、やっぱりアルファンド君には年増な私なんていらないのかしら?」
「年増って……あのですね、アーリアさんは年増なんかじゃないですよ? 凄く綺麗でスタイルも良くて、俺なんかが一緒にいていいのかって思うぐらい魅力的な女性です。 それにアーリアさんは憧れの先生で、一緒に旅をする大切な仲間で、俺にとって大事な人なんですから、あまりそんな風に自分を悪く言わないで下さいよ」
ちょっと過剰なスキンシップと、時折見せるだらしなさと、変態的な言動があるのがたまに傷だけどな。
あれ? 結構難のある人じゃないか?
「……アルファンド君!!」
「うわぁっ!?」
突然、アーリアさんが俺を強く抱き締めて来た。
必然的にその大きな胸に顔を押し付けられる形になり、息苦しくて手をバタバタとさせる。
「やっぱり私には貴方だけだわ!」
「く、苦し……アーリアさん、落ち着いて……!」
「わっ、わっ……! ア、アルを離して!」
エミリアが後ろから俺を引き剥がそうと襟を引っ張り、その結果首が締まって息苦しさに拍車を掛ける……というか止めを刺しに来ている。
「離しなさいエミリアちゃん! アルファンド君は今から私と愛を確かめ合うのだから!」
「駄目! アルを離して!」
ぎゃあぎゃあと言い合う二人と、その間に挟まれる俺。
つうかアーリアさん昨日もそんな事を言っていたけどそんなに確かめ合いたいのか? いや、俺はしないよ?
「……ただ者じゃないわね、彼」
「何だろうな、男なら憧れる状況なんだろうけど」
「……俺は御免だな」
少し距離を取って俺達を見ている三人、そんな冷静に状況を見てないで助けてくれよ!
あ、何か意識が遠退いて来た……。
おかしいな、遠くにウィルが見える……何か慌てながら手を振ってるけどどうしたんだ……?
遂に幻が見え、やがて視界が暗くなって行った。
その後、顔を青くしてぐったりとした俺を見てようやく二人は俺を離した。




