第49話 楽しい食事?
「美味い……!」
目の前に運ばれて来た料理を口にして、そのあまりの美味しさに俺は夢中でフォークを皿から口に往復させる。
隣ではエミリアも同様に料理を夢中で食べている。
あれから俺達はマイラさんの提案通り、近くにあった店へとやって来ていた。
大衆食堂に似た店で、昼時という事もあって中々に混んでいたが割りとすんなり席に着く事が出来た。
何がおすすめなのかわからなかった為頼む物は全てマイラさん達に任せたのだが、どうやら当たりだった様だ。
「ふふっ、気に入って貰えた様で良かった」
夢中で食べる俺とエミリアを見て、マイラさんは向かいの席で満足そうに頷いている。
ちなみに席だが、俺が真ん中で両端にアーリアさんとエミリアが、向かいの席にマイラさんと両端にオルガとロウさんが座っている。
俺達は普通に食事だけだが、何故かオルガとロウさんは昼間にも関わらず酒を煽っている。
「んぐ……この肉、凄くジューシーで柔らかくて美味いですね!」
「それはホーンラビットの肉よ」
ホーンラビット、確か魔物の一種だったな? 見た目は普通の兎だけど頭に一本の鋭い角が生えていて性格は見た目とは裏腹に攻撃的、しかしその角は貴重な薬の素材にもなるって話だ。
いやまさか食べてみたいと思っていた魔物の肉をこの様な形で食べる事が出来るとは思わなかった。
「この店はギルドと繋がりがあって、依頼で納品された魔物の肉をこうして料理にしているの」
「へぇ……」
「良かったわねアルファンド君、念願の魔物を食べる事が出来て」
アーリアさん、俺が食べてみたいと言っていたのを覚えていてくれた様だ。 隣から俺の様子を微笑みながら見ている。
ちなみにアーリアさんは見た事の無い果物を食べている。
「はい! 思っていたのと違って凄く美味しいんですね!」
「ホーンラビットは魔物の中でも特に癖の無い味だから食べやすいのよ」
成る程、つまり魔物によって色々と味が違うのか……何か勉強になるなぁ。
ん?
「エミリア、口元に付いてるよ」
「えっ?」
こちらを見たエミリアの口元に、肉の欠片が付いていた。
俺と同じで夢中になって食べていたから気付かなかったんだろう。
「ほら、動かないで」
手を伸ばし、口元に付いた欠片を指で取ってそのまま自分の口に入れた。
「ふあっ!?」
突然エミリアが奇声を上げ、顔を真っ赤にして固まってしまった。
どうしたんだろう?
「あらあら……」
「成る程、これが俗に言う天然タラシってやつか」
「おうおう、見せつけるなぁ坊主」
目の前に座る三人から、意味のわからない言葉を投げ掛けられる。
そんなにおかしいか? 別にただ取ってやっただけなんだけどな。
「アルファンド君、私も付いてるわ」
突然、肩を掴まれてアーリアさんの方へと強制的に振り向かされた。
アーリアさんの言う通り、アーリアさんの口元にも果物の欠片が付いている……とても不自然に。
……まあ、取れって言うのなら、取るけど。
アーリアさんの口元の欠片を取り、マナー違反にならない様に手元のナプキンでそれを隠す様に拭いた。
「え? 私のは、食べてくれないの……?」
何故かアーリアさんがこの世の終わりの様な絶望した表情で呟いた。
いや、さっきのは無意識にやったから恥ずかしく無かったけど、今のはちょっとね。
けど確かに失礼かもしれないな、別にそんなつもりは無いんだけど、どうしたものか。
「……あっ、はいアーリアさん」
それ程お腹が空いていないのか、それともホーンラビットは食べ飽きているのか、先程からアーリアさんは果物しか食べていない。
だから手元の肉を一口大に切り、アーリアさんへと差し出した。
所謂、あーんというやつで。
目を見開き、頬を赤らめながらもゆっくりとアーリアさんは口を開いた。
開かれた口にそっと肉を入れると、アーリアさんは途端に至福の表情で頬を押さえゆっくりと咀嚼する。
「あぁ……幸せ……」
「いやいや、そんな大袈裟ですよ」
「ア、アル! 私は!?」
「エミリアは同じ物を食べてるだろ?」
「むぅ……!」
俺の言葉に、エミリアは頬を膨らませて唸る。
そんな唸らなくても……可愛いなぁもう。
「……あの、アルファンド君? 貴方、二人とはいつもこんな感じなの?」
「いつもって訳じゃ無いですけど、結構二人は甘えん坊ですね」
目の前のマイラさんからの質問にそう答えると、マイラさんは目を白黒させオルガとロウさんに至っては何故か笑いを堪えている。
何が言いたいんだ?
「その年でもう……何だか貴方の将来が心配になって来たわ」
何で!? 別に変な気は無いぞ!? どう考えたって紳士だろ俺は!?
「まあ別に一夫多妻は認められてるから、罪では無いけど」
「一夫多妻なんて考えてません!!」
俺の声は賑わう店内に虚しく響き、周りから視線を集めた。
何だよ、俺が何をしたって言うんだよ……。
周りからの視線から逃げる様に、俺は残った肉をひたすら口に詰め込んだ。




