第46話 召し上がれ
「ふふ~ん」
鼻歌を歌いスキップをしながら、俺は道を行く。
あの後、小麦粉と砂糖以外にも卵とミルクも手に入れた。
本当はベーキングパウダーか重曹が欲しいところだったがどこにもそれらしい物は無かった。 けど無くても何とかなるからこれで材料は揃った訳だ。
「ねえアル? 何を作るのか教えてよ」
隣までやって来たエミリアが尋ね、直ぐ後ろにいるアーリアさんも知りたそうに俺を見ている。
「ん? あぁ、パンケーキを作ろうと思ってさ」
「アル作れるの!? 凄い!」
「昨日も食べたけれど、アルファンド君はパンケーキが好きなの?」
「あぁ、昨日のパンケーキも美味しかったんですけど、ちょっと試してみようと思いまして」
俺の言葉に二人は首を傾げるだけだった。
そりゃそうか、エミリアはともかくアーリアさんは何度かパンケーキを食べている、しかも昨日のあのパンケーキをずっとだ。
だからあれが当たり前になっているのだ。
よし、俺がアーリアさんのパンケーキの感覚を変えてやろう。
ちょっとおかしな目標を立てつつ、俺達は宿へと帰った。
「よし、始めるか」
宿へと帰って来て、女将さんから幾つかの器具を借りて俺は早速キッチンに立った。
ちなみに二人は後ろから俺の作業を覗いている。
余りにもじっくりと見られてやや緊張するが、作業に取り掛かった。
先ずは卵黄と卵白に分け卵白を泡立てメレンゲを作るのだが、泡立てる器具が無かったため風魔法を使う。
「……アルファンド君には悪いけれど、世の中の魔法使いがこれを見たら卒倒するわね」
アーリアさんが苦笑しながら呟いた。
そりゃそうだ、まさか魔法を料理に使うなんて誰も想像もしないだろう。
だけど他に代用出来る器具が無く、考えた末に風魔法で泡立てれば上手く行くのではと思い付いたのだ。
まあ魔力の使い方の練習にもなるだろうから目を瞑って貰おう。
しかし魔法ってやっぱり便利だな、手が疲れるといった事も無く綺麗なメレンゲが出来上がった。
次に小麦粉と砂糖、ミルク、卵黄を混ぜ合わせ大元となる生地を作り、メレンゲを加えてさっくりと合わせる。
フライパンに油を敷き、生地を流す。
二人にはふわふわなパンケーキを食べて貰いたいから厚めに仕上がる様にするのを忘れない。
やがて焼き目が付くにしたがって香ばしく甘い香りが部屋に充満する。
「良い香り……」
充満した香りに思わずエミリアが鼻をひくつかせて呟く。
ふふっ、待ってろよエミリア、今本当のパンケーキってやつを食べさせてやるからな。
焼き目がしっかり付いた事を確認してひっくり返し、中まで火が通ったところで皿に移した。
出来立てで湯気が立ち上るパンケーキを二人に差し出す。
「焼き立てが一番美味しいから早速食べてみて下さい」
二人は差し出されたパンケーキに早速手を着け、そのまま一口食べる。 すると二人の目が驚きで見開かれた。
「わぁ……! 美味しい!」
「凄いわ! こんなにふわふわなパンケーキ、初めて!」
そうだろうそうだろう、たかがパンケーキ、されどパンケーキだ。
作り方や手間の違いで全く違った仕上がりになるんだからな。
「まだ生地が余ってますから、どんどん焼きますね」
二人の反応に満足しながら、俺は更にパンケーキを焼いていく。
まさか前の世界の趣味がこんな形で役立つとは思わなかったが、二人の喜びようを見て心底良かったと思う。
冒険者になったけど、これを本業にしてもやって行けるかもな。
っていかんいかん、あくまでこれは趣味、冒険者として腕を上げないと駄目だ。
……でも、たまにこうやって二人に振る舞うのも良いかもな。
次は、何を作ろうかな?
全く本編とは関係ない話になりましたね
まあ、ちょっとだけ自分の趣味を入れたくなっただけです。
お菓子作り、楽しいですよね?




