後編
「ではお持ちします」
「ありがとうございます!」
たくさんの人の健康の悩みを自分の知識を使って解決する。
それはとてもやりがいがあることだ。
もちろん、他者の不健康を願うわけではないし、そもそもそういう人が生まれなければそれに越したことはないのだが。ただ、生きていれば心身の不調というのは時に自然と発生するものであり、ある意味それは完璧には避けられないもの。
だからこそ、私がしている仕事にも意味があるのだと思う。
人々が日常の中で感じるちょっとした苦痛や不快感を和らげるために協力できるなら、それはとても嬉しいこと。
「こんにちは~」
「あ、こんにちは!」
「お薬貰いに来ました~」
「順番に進めますので、しばらくお待ちください」
「ありがとうございます~。ここで待っています。急ぎません~」
だから私はこの道を歩む。
「あれから調子はどうですか?」
「風邪っぽい症状は落ち着いてきました~」
「なら良かったです」
◆
あの突然の婚約破棄からちょうど十年となる今日、私は、国王から表彰を受ける。
これまで多くの人々の体調不良を治してきた功績が評価され、今回、国からの表彰を受けることが決まったのだった。
はじまりは好きなことだった。
それを種として日々小さなことを積み重ねてきた。
そしてそれがついに花開く時が来た。
……ちなみにアンバンとアリアはあの後勝手に滅んでいったようだ。
私を払い除けてすぐ、二人は婚約したそうだ。しかし婚約後アリアが極度の男好きであることが判明したらしく。アリアは何度も浮気を繰り返した。それによってアンバンは激怒。そんなある晩、大喧嘩になり、アンバンは怒りのあまりビンタしてしまう。で、その一件によって、二人の関係は終わってしまった。
アリアはビンタされた際に負った頭部の怪我が原因となり自立した生活ができない状態になってしまったそう。
一方アンバンはというと、女性を殴ったという罪で逮捕され、牢屋送りとなってしまったそう。
命だけは辛うじて残っているが、二人には幸せな未来はなかった。
……といった感じだそうだ。
アンバンは私を切り落とせば幸せになれると思っていたかもしれない。
いや、恐らくは、間違いなくそう思っていたことだろう。だからこそ婚約破棄という形で勢いよく私を切り落としたのだろうから。
だがその果てにあったのは破滅だった。
私がいるから不幸なのか?
アリアといれば幸福なのか?
……結局のところ、そんな単純な話ではなかった、ということだろう。
「リサ殿、よく来てくださった」
「このたびは表彰ありがとうございます」
アンバンも、アリアも、もう私には関係ない。
私を認めてくれる人はたくさんいる。
だから小さなことは気にしない。
必要としてくれる人たちのために生きてゆくことこそが私の信じる道。
「貴女の功績は聞いている。不調に苦しむ民に癒しを与えてくれてきたそうじゃないか、それは非常に尊い行いだと思う。民の代表として……と言うと少しおかしいかもしれないが……今は、ある意味での民らの代表として、ありがとうとお伝えしたい」
国王は温かな人だった。
平民である私に対しても上から押し潰すように話すのではなく自然な形で言葉を投げてくれる。
そのため過剰な緊張に襲われることなく穏やかな心で向き合うことができている。
「我が国の民に優しさを与えてくれてありがとう、感謝しておる」
「いえ、そんな……」
「どうかこれからも人々を救い助けてほしい。貴女の行いは間違いなくこの国に良い影響を与えるはずだ。だからどうか、今後も、よろしく頼む」
表彰を受け、改めて、自分の立ち位置を理解することができた。
人のために。
世のために。
これからも自分にできることを着実に積み重ねていきたい。
苦しんでいる人を、辛い思いをしている人を、一人でも多く救いたい――それが私が歩む道の根底に流れているものだから。
どんなに高く羽ばたいても、初心を忘れずにいることが重要だ。
……後に国王の第一子である王子と結婚し夫婦で人々を癒す活動を広げていったのは、また別の話。
◆終わり◆




