第74話 コスタリア領都の日常3
明日は女神の日(日曜日)だゴブ~。
仕事が充実していると1週間もあっという間ですな~
充実していると時間が経つのも早く感じるものゴブ。
今日も奥方様の執務室で各領地の報告書(計算系)を処理して奥方様と優雅なティータイムを始めようとしているところだ。
「奥様・・・今日は週末ということもあってそれなりの量の書類がありましたが・・
もう全て見られてサインされたのですか?」
「ほほほ・・・もちろんです、カタリナ。最近は魔力を込めるコツをつかんで報告書程度の厚みであれば10枚ぐらいは一度に刻印出来るようになったのです。今日なんて4回刻印しただけで仕事が終わったのよ~」
「ゴブ~」(それはすごいゴブ~)
「こんなに仕事がはかどるのもミセッティちゃんが刻印の魔道具を作ってくれたからよ~。さあさあ、今日は西の王都と呼ばれるハーマイン領都で流行っているお菓子が届いたのよ。早くお茶にしましょう」
奥方様はもう我慢できないらしくいそいそと自分でお茶の準備を始めている。
「書類は一応全て目を通してもらいたいのですが・・・私と執事長で一通り見て重要そうな書類は旦那様の方にまわしておきます・・・」
「ハーベストの坊やも最期は少しは役に立ったわね、魔道具に魔力を込める練習がいっぱいできたもの~。ほほほほ」
「ゴブ~」(役に立って何よりゴブ~)
コンコンと扉を叩く音がして執事長が入ってきた。
「奥様、執務中に失礼いたします。先ほど先触れの使者が見えましてライアー子爵様が緊急の用でお見えになるとのことです」
「はぁ、ライアー子爵ですか。あまり聞かない名ですね、奥様はご存じですか?」
カタリナさんが少し首をかしげて奥方様へ確認する。
「・・・今日の予定は全てキャンセルです。手の空いている者は全て接客にまわるように。屋敷にいる全員に粗相をしないようにすぐに通達しなさい」
奥方様が珍しく緊張した顔になっている。
侯爵家がこんなに気を遣う子爵家とは一体なんだゴブ。
「目的はやはりミセッティちゃんかしら?それとも・・・いえ特に何も悪いことはしていないはずですから堂々といきましょう。叔母様のことだから深く考えてもしようがないですし」
「奥様、ライアー子爵様とは?国の諜報機関とか査察管のお役目の家ですか?」
「まぁカタリナは知らないのはしょうがないわね。諜報機関とかの方が何倍もマシよ。このことを知るのは王族とごく一部の上流貴族だけということになっていますからね。例え真実に気づいたとしても他言無用、知らぬ存ぜぬを決めてちょうだい」
「よく分かりませんが今日のことは全て忘れた方が良いということですね」
「もちろん我が家の公式記録にも残せません。お父様へは口頭で報告しますが」
皆で屋敷の入口に並んで到着を待つ。
アイラお嬢様も呼び出しされたようだ。
「もう~、ライアー子爵なんて知らないです~。お嬢様の勉強を中断してまで出迎えさせるなんて子爵家なのに生意気です~」
ぽんこつマリーが隣りで文句を言っている。
う~ん、確かにあやしいぞ。家格の差は明らかなのにこの対応。
肩書きだけではない何かがあるな。
元社会人として深読みすれば何となく察するものがあるゴブ。
しばらくすると大きな馬車が2台入場してきた。
装飾の少なめな質素な造りの馬車だが音も静かで揺れもほとんど無い。
かなりお金がかかっているな。
馬車が停まると女性の騎士が2名降りてきた。
続いて侍女さん達が2名降りてきてその後女性の貴族がゆっくりと降りてくる。
「ライアー子爵、お待ちしておりました。サイネリアでございます」
奥方様が丁寧にお辞儀をして出迎える。
「ふふふ、出迎えご苦労様。急にお邪魔してごめんなさいね。今日はライアー子爵として小用があって訪問させていただきます」
「はい、存じております。《《今日は》》ライアー子爵としておもてなしさせていただきます」
続いて男性の騎士が4名と執事のような妙齢のおじ様が後続の馬車から降りてきてライアー子爵の周りについて護衛し始める。
この警備体制・・・確実に国家の重要人物クラスだろ。
「それでは立ち話も何ですから応接室にて用件を伺います。お連れの方々もぜひご一緒にどうぞ」
サイネリア様は気にする様子もなく客人として接している。
ライアー子爵がちらりとこちらを見てくる。
アイラお嬢様のことが気になられたのかな。
「良い機会です。アイラ、ミセッティも付いてきて同席なさい。あなたもあながち無関係という話ではなさそうですし」
「分かりました、お母様。ミセッティも連れてお邪魔いたします」
わたしも付いていくのか・・・ゴブリンですよ?
何か怒られるとかじゃないですよね。全く心当たりが無いゴブ。
応接室には奥方様とカタリナさん、アイラお嬢様とわたしが入り、先方は女騎士2名と侍女さん2名にライアー子爵という顔ぶれになった。
「さて、この部屋は防音結界の魔道具で覆われています。用件をお伺いいたします。
ライアー子爵、いいえアナスタシア王妃」
「あらあら~、そんなにかしこまらなくても嫁ぐ前のアン叔母様とでも呼んでくれていいのよ~」
ぐはっ。重要人物だろうとは思っていたがまさかの王妃様ご来訪でしたか。
隣りのカタリナさんも目を閉じて待機したままだが動揺しているみたいだ。
「叔母様・・・こんなに緊急な訪問はやはり聖魔法関連ですか?何か重大な体調不良や呪いに見舞われたとか」
「ふふふ、相変わらずサイネリアちゃんは察しが良くて助かるわ。少し、いやかなり大変な問題なのよ。そして全て秘密裏に処置してちょうだい」
王妃様が真剣な目をして奥方様へ詰め寄られた。
「はっ、はい。もちろんここで行われることは口外いたしません。ライアー子爵として訪問があるといった時点で全て理解しております」
奥方様も大貴族としての誇りを胸に誓いを立てる。
「あなた方の忠誠に深く感謝するわ。それでは早く治療をお願い」
王妃様がお口をあ~んと開けて見せてきた。
「はい?」
奥方様とカタリナさんも何のことかよく分からないようだ。
女騎士さんと侍女さんたちは小さくため息をついている。
「ふえぇ~ん、良く見てちょうだい!虫歯が、虫歯がひどくなってきて昨日からズキズキ痛いのよ~。聖魔法で元通りに治してちょうだいぃ~」
子供かゴブ!王族なら専属の医者がいるだろ!
口には出せないので心の中で盛大にツッコんでおいた。
奥方様もカタリナさんもアイラお嬢様まで同じ死んだ表情になっているゴブ・・・




