第73話 コスタリア領都の日常2
「ゴッブッ、ゴブッフー」(イッチニー、サンシーっと)
今朝も元気よくゴブリン体操を一通りこなして朝が始まる。
「えいっ、やぁぁ~」
隣りではアイラお嬢様と奥方様が剣術の稽古をしている。
お嬢様は体を動かすのは苦手なようで全然かたちになっていないゴブ。
奥方様は完全に脳筋の戦闘狂なのに。
お父上が理知的で物静かな方なのでそちらの血統が強いんだろうな。
「ほほほ、少し前より剣に振り回されることは無くなりましたがまだ全然ダメですよ、せめて自分自身を守れる程度にはならないと」
貴族の子どもたちは大なり小なり武芸を身に着けるのが当たり前だとか。
貴族って大変ですね。
でも普通は訓練の時は木剣でするのじゃないかな~。
どう見ても真剣だなアレ、歯引きもされてなさそうだし・・・
中学校入る前の子どもに訓練でガチの刃物を渡すとか日本では考えられんよ。
貴族って大変ですね(2回目)
15分くらいだろうか?お嬢様が肩で息をしはじめて辛そうになったところで今日の朝稽古は終わるようだ。
「ほほほ、技術がうんぬんとか関係無く真剣同士で立ち会うと緊張感があって稽古も身が入りますわね、これなら最近少し付いた余分なお肉も落ちそうですわね」
奥方様はご機嫌だ。
やっぱり最近太ってきてたんだな、私だけではなかったんだゴブ。
突然お嬢様を鍛えると言い出したから何かと思えば本当の目的は自分のダイエットだったんだな。
「気にされるならお菓子は午後のティータイムの時だけにいたしましょうか」
カタリナさんが休憩のイスと机を用意しながら呆れてつぶやいている。
「それだけは絶対いや」
「ゴブブ!」(その楽しみのために働いているゴブ!)
奥方様とわたしが即反応して却下する。
「はいはい、そして稽古されてノドが渇いたでしょうから飲み物を用意しましたよ」
メイドさん達が手早くテーブルに3つ飲み物を用意してくれる。
「本日は料理長自らお手製の季節のベリー3種にハチミツ漬けリモンを氷と一緒に砕きアクセントにハーブを刻みいれた特製スムージーです」
なんだか一流ホテルの長ったらしい説明付きのメニューみたいだな。
メッチャ美味しそうですけど。
「あら~今日も美味しそうですわね。それに健康にも肌にも良さそう~」
「本当においしそうです。ミセッティの分もありますわよ、飲まないの?」
「ゴ、ゴブ~」(う~ん、おいしそうなんだけどこの後いつもの走り込みだから)
ジュースを飲んでから走りに行くとアレをしたくなっちゃうんだゴブ。
ここ最近は毎朝いつもこうしてお嬢様と一緒にジュースを飲むようになって必ず途中で《《お花摘み》》の時間が必要になるからな~。
人目につかない場所は見つけたし最近は本当に花畑みたいになってきたから花を摘んでいましたって言っても信じてくれそうだけど・・・
しっかり浄化しているからアレしてることがバレて怒られることは無いはず。
「ゴブ~」(今はいいので帰ってきてからおいしくいただくゴブ)
「ミセッティは走ってきてから飲むそうですわ」
「ちなみに賞味期限は作ってから15分です。すでに5分程経過していますが」
「ゴブッ?」(そんなっ?短いゴブ)
どこかの高級ケーキとかで聞いたような話ですが!
作り手のこだわりの風味が無くなる前に食べてほしいとかなんとか。
「という訳で飲まずに行かれるならばもう片付けてしまいますが・・・」
「ゴブッ、ゴブ!」(いただくゴブ!もらうに決まっているゴブ)
そうして今朝もお腹タプタプのまま走り込みに出発するのだった。
やばい・・・もうすでに《《お花摘み》》タイムだわ・・・
いつもの馬小屋の裏まで我慢しなければまずいゴブ。
この時間はいつも誰もいなくて建物にカギがかかって入れないんだよな~。
今日も2回お花摘み決定だわ。
3番目の人目に付かないポイントの川原までは我慢できると思うけど。
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コスタリア家執務室
カタリナが奥方様へ[重要]と書かれた報告書を提出している。
「今週の採集分をリストにまとめましたので報告いたします」
第1ポイント(兵舎馬小屋の裏)
幸運のクローバー 22株
朝露草 15株
鈴音花 18束
天竜草 7株
第2ポイント(北側階段下の日陰)
月見草 3株
光コケ 2塊
第3ポイント(集水分岐水門の脇)
鏡石 23個
聖紋石 10個
昼光石 18個
水竜草 11株
「ほほほ、料理長に協力してもらったかいがありましたね、なかなかの収穫量ではないですか。少し第1、第3ポイントに偏りが出ているかしら?」
「まぁ、基本的には普通にトイレでしたいようですからね・・・バレていないと思っているようですが我慢できるときはそのまま帰ってきているんじゃないですか?」
「まずいわね・・・薬師ギルドから是非にと依頼がかかっているのよ。特に日陰や洞窟の奥にしか生えない貴重なものが採取できる第2ポイントのね」
「それでは今まで冷たい飲み物ばかりでしたが今度は暖かい飲み物にしてみましょうか?量を多めにしてちょうど半周くらいは我慢できるように調整してみます」
「では料理長には新しいメニューを考えてもらうように言ってちょうだい。それと今まで通り朝のこの時間は各建物の責任者は必ず施錠してミセッティを中に入れないように再度通達を出しておきなさい」
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「ゴブ~」(冷たいのもおいしいけど暖かい飲み物はほっこりしてたまらないゴブ)
「料理長もミセッティ様がおいしく飲んでいただいているのを喜んでいますよ」
「ゴッブ~」(それでは今日も張り切って走ってくるゴブ~)
「ふふふ・・・気を付けていってらっしゃいませ」
アイラお嬢様が糸目になってやりとりを聞いてあきれている。
「・・・別に誰も損をしていないからいいですけどね」




