第70話 ゴブリンのお仕事9
「ゴーブブ~」(さ~て、今日もサクサク書類を片付けるゴブ)
1週間ほど午前中だけ執務室で書類の整理をしているゴブ。
最初に机に積まれた書類は2日で処理したのでダンスレッスンに戻れるかと思っていたらまだまだ別の部屋に溜まっていたらしく後から後からどんどん書類が出てくる。
「ゴブ~」(一体どれだけ溜めこんでいたいたゴブ)
この手の書類は出てきたらすぐに片づけていかないと溜まる一方だゴブ。
毎日コツコツと出てきた分をやりきるのが大事なんだな。
明日は明日でまた別の書類が発生するものなんだゴブ。
何か最近は奥方様も隣りからいなくなってるし。
終わりそうになるといつのまにか書類が運ばれてくるし、きりが無いゴブな~。
「ミセッティちゃ~ん。書類は進んでいるかしら~。そろそろお茶にしましょう。今日は王都から届いた新作のケーキよ。一緒に食べましょうね」
「ゴブ~!」(やったー、これが楽しみなんだゴブ~)
くくく・・・こんな小学生の宿題レベルの計算問題を解いて高級お菓子が食べられるなんて貴族は最高ゴブ。
もうゴブリン貴族を名乗ってもいいのではないだろうか?
「今日は私が自ら紅茶をブレンドして淹れましたのよ」
「ゴブ~」(おおっ、奥方様が自らお茶を淹れてくれるとは)
先程まで席を外しておられたのはわざわざわたしにお茶を用意してくれていたからだったのか・・・感動ゴブ。
「ふふふ、集計作業はミセッティちゃんに任せてから心が安らかな時間が増えましたわ。身も心もほぐしてからいただくお茶とお菓子は最高ですわね」
「奥様・・・隣の部屋でマッサージと読書も良いですが最終の確認サインは早めにしてくださいね」
「はぁ~、実は計算よりも書類1枚1枚にサインをする方が地味につらかったりするのよね~。手首が痛くなってくるのよ」
優雅にお茶を口に含みながら奥方様がぼやいている。
この世界に印鑑という文化は無いのかな。
契約などに自署のサインをするとか西欧文化よりですな。
「ゴッブブ」(このお菓子用の銀のお皿を貸してもらうゴブ)
[神界]発動
銀の皿を材料に印鑑の魔道具を作ってあげるゴブ。
「あらあら~、今度は何を始めたのかしら?」
光がおさまるとそこには横長の文鎮みたいな小道具が出来ていた。
[祝福の焼きゴテ]
対象に押し当てて魔力を込めるとスティグマータ(聖印)を刻む
悪意やウソに反応して継続ダメージを与える。
込める魔力の大きさに応じて深く浸透する。
所有者登録 サイネリア・フォン・トゥルー・コスタリア
なんか拷問具みたいなのが出来たけど書類に押せば印鑑として使えるはず。
わたしは奥方様に印鑑を渡した。
「見た目よりも軽いわね~、何に使うものなのかしら?」
「ゴブ!」(魔力を込めてみるゴブ!)
言葉が通じないので身振り手振りで使い方を説明する。
「魔力を込めると私の名前が逆さまに浮かび上がってくるわね。これを紙にあてがえばいいのかしら?」
奥方様が書類に焼きゴテ(印鑑)を押すと文字がしっかりと焼き印された。
「ゴブー」(成功だゴブー)
「あら~。私のフルネームが焼き付けされたわ。それに筆跡も私の自筆にそっくり」
「ゴブッフー」(これでもう1枚1枚手書きしなくても大丈夫ゴブ)
「これだと書類の仕事が3倍、いいえ10倍以上はかどるわね」
奥方様は気に入ってくれたようだ。
おいしいお菓子を毎日食べさせてくれるお礼にしては少ししょぼいが良かったゴブ。
「はぁ、また奥様が楽をするものが出来ましたね・・・書類の決裁が早く進むのは良いことだとは思いますが」
カタリナさんがため息を付いている。
そんなに奥方様に自由時間を増やすのがいやなのかな~。
「ゴブ、ゴブ」(ところで書類をまとめていて少し気になることがあるゴブ)
「なぁに?もう今日のお菓子はこれで終わりよ」
「ゴブ~」(違うゴブ、書類の話だゴブ~)
ダメだ。アイラお嬢様がいないと言葉が通じないゴブ。
「何か伝えようとしてますね、アイラ様をお呼びした方が良いでしょうか?」
さすがカタリナさんだな。言葉は分からなくても意思が通じているゴブ。
「そうね、アイラちゃんがいないとミセッティとは細かい話が出来ないものね」
「それではお嬢様をお連れいたします。ダンスレッスンもあと10分程で終わる時間ですし」
「とりあえず呼びに行く前にこのお菓子を片付けてしまっておいた方がよさそうね」
「アイラ様とマリーにミセッテイに高級お菓子あげているのがバレますからね。2人にも分けるとあっという間に無くなりそうですね」
「ゴブゴブ」(確かにそれだけは避けねばマズいゴブ)
「う~ん、こういう時は何を言っているのか分かるんだけどね~」




