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第66話 ゴブリンのお仕事5

「と、とりあえず医務室に行きましょう!悪い病気ではないと良いのですが」


ルー君がアリシア様の手を取ってたぐり寄せながら顔を近づけて心配そうに顔色を確認している。


「ひゃっ、けっこう力も強くなっていますのね。それに手もごつごつしていて男らしくなってる・・・。はわわ、私ったら何を言っているのかしら」


「ええ?何ですか?小声でよく聞こえません。歩くのがつらいですか?医務室に早く行かないと・・・少し失礼いたします!」


ルー君がアリシア様を抱き上げお姫様抱っこで持ち上げた。


「少し恥ずかしいかもしれませんがすぐに着きます、我慢してください!」


「は、恥ずかしいですけど・・・幸せです。よろひくお願いしまふぅ・・・」


持ち上げられたアリシア様がルー君の首に両手をまわして抱き着いた。


「そのまましっかりしがみ付いていてください!すぐに看てもらいます!」


ルー君はアリシア様を抱えたまま小走りでどこかに向かっていった。

小さい体格だとか言われていたけどけっこう力あるじゃないかゴブ。


隣りを見ると《《4人》》とも目をきらきらさせてガン見している。


「はぁ~、ありがたや~、ありがたや~。キャンプのみんなにいい土産話が出来たよ~。必死なルー君に戸惑いながら受け入れるアリシア様。尊い!尊いよ~」


「美男美女のぎこちない恋のはじまりの瞬間を堪能しました~まぶしいです~」


「優しそうなお相手でアリシア様も幸せになれそうですね」


「お嬢様の素っ気ない態度にはひやひやしておりましたがこれで公爵家も安泰です」


「ゴブ!」(うわっ、誰!いつのまに隣りに居たゴブ?)


いつのまにか隣りに妙齢のメイドさんがハンカチで目がしらを押さえている。


「あちゃ!アリシア様のお付きの方?私達はただ見ていただけで・・・な~んて」


「あなた方の行動は少し問題がありそうですが、害意のある魔法や呪いは一片たりともお嬢様に効果が出ないよう強力な術式と結界で防護していますから。敵意が無いのは存じ上げております。むしろよくやってくれたと感謝させていただきます」


ちらりとわたしの方を見てきた。氷のように鋭い視線だゴブ。


「ゴブ!」(わたしはただ命令されただけゴブ!)


「ミセッティ・・・私以外に弁解しても伝わりませんよ、途中からノリノリだったのは見てるだけで分かりましたし」


「ふふふ、ルーデンハルト様とお嬢様の婚約は大公様の悲願でもあったので責められることはないでしょう。詳細は全てご報告させていただきますが。それでは」


ぺこりと優雅にお礼をすると足音なく走っていった。


「ふぁ~、びっくりした~。公爵家にばれちゃったよ~。何か感謝されてたから今回は怒られなくて済みそうだけど」


「それよりお姉さま、先程の方がルーデンハルト様とかおっしゃっていましたけど、まさかルー君というのは・・・」


「うん、そ~だよ。ルー君は我が国の第一王位継承権を持つルーデンハルト様さ」


うぉぉい!この国の王太子様じゃねーか!

次期国王の婚約とかって国の一大事じゃないかゴブ。

レイシア様・・・とんでもねー案件を持ち込んでくれたゴブね・・・。

しかも一部始終をがっつり見られていたっぽいし。

やっちまったもんはしょうがないけど。


「王太子様なのに護衛の方が一人もまわりにおられませんでしたね~」


マリーが首をかしげてまわりを見渡している。


それは違うな。今[結界]を薄く延ばして探索してみたけどルー君と一定の距離を保って追いかけている人の動きが10人以上はいるぞ。

通りには誰もいないように見えるけど。


本人たちは2人で会っているつもりだろうがさすが国のVIP、きっちり警護(監視)されておりますね。

はじめてのおつかいっていうテレビ番組を思い出したゴブ。

映像記録なんて残してないですよね?


そして王家にも私たちの所業がバレる可能性大。

わたしはただのテイマーされたゴブリンですから別に構いませんが。


「ルーデンハルト様もうっかりレイシア様に相談したおかげで10年の思いがかなったんですね~。良かったです~」


「そーそー。相談された時に婚約者候補リストを見せてもらったらアリシア様が無くてアイラちゃんが挙がっていたりしてびっくりしたよ~」


「ゔぇ?私も婚約者の候補に挙がっていたのですか?」


「うん、今回の王妃候補はバランスをとるために軍派閥以外でってことだったらしいけど。ただ一人の例外だったらしいよ。肖像画付きでね、聖魔法の素質ありとか、すでに奇跡を起こして乙女の問題を解決しているとか何とか。それを見て今回の作戦を思いついたんだよ~」


「私があの方と婚約する可能性もあったのですか・・・」


「あれ~?アイラちゃんもしかしてルー君のこと気になってた~?ごめんよ~」


「い、いえ。私はしゃべったこともありませんし、今日初めて見た方ですから。まわりの方が言うほど子供っぽくは無いな~とか優しそうだな~と思っただけで」


「あはは~それって初恋じゃん。ごめんよ~、気付く前に終わっちゃったね~」


「レイシア様~、ひどいですよ~。アイラ様も気付く前に初恋を散らしちゃうなんて。もう!私の王妃候補付き専属メイドのチャンスが無くなっちゃったです~」


「あら~、マリーったら野心家ですね~。さすがうちの派閥の出身だよ~」


「ベツニ、モウオワッタコトデスカラ、キニシテイマセンケド」


アイラお嬢様がまた目が糸のように細くなって不機嫌モードになっているゴブ。


「聖魔法が使える人材は貴重だからね~。それも貴族の女性ともなると一族に取り入れたくもなるよ。近くに居るだけで回復、解毒、解呪が優先して受けれるからね」


「平民だと保護と称して正教会が子供のうちから囲いこむからね~。聖女にされちゃうとなかなか勿体ぶって表には出てこなくなっちゃうから。教会の威光が届かない貴族出身でもないと簡単には結婚相手には出来ないらしいよ~」


「おお~、アイラお嬢様が次期王妃候補になるのも分かりますね、惜しかった~」


「デスカラ、ソノハナシハモウイイデスッテ」


「ゴブゴブ」(女は愛するより愛される結婚が幸せという話があるゴブ)


アイラお嬢様をぽんぽんと叩いて励ましてあげる。


「くっ・・・、ミセッティにまで慰められるとは・・・だんだん悔しくなってきましたわ。まだ何も言っておりませんのに」

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