第58話 お嬢様誘拐事件6
教会に戻ると何だか大勢の人たちが女神様に祈りを捧げていた。
「うっす、ゴブリンさん、お疲れ様でっす」
「「でっす!」」
何か人相の悪い奴らが私たちを迎えてくれる。何だこれ。
わたしたちは帰る途中に異世界名物の肉串を食べながらきたので、お土産として買ってきた肉串を居残り組の子供たちに渡す。
「わーい、ホントにお肉が食べられる~」
「さっきね~、柔らかいパンも買ってきたんだよ~」
さて子供たちも満足したところだし本来の目的をしようか。
大勢の人が集まってきているんだ、これを利用しないことはないゴブ。
「ゴブ!」(みなさん注目~!)
わたしは素早く[神界]を使って女神像の脇に原寸大のお嬢様の像を作成した。
少し光り輝くエフェクトも入れて目立たせてやったゴブ。
「ゴブゴ~ブ」(こちらがわたしのご主人アイラ様だゴブ。どこにいるか知っている人はいないかゴブ)
「あのね~、この人がゴブリンさんのご主人様アイラ様なんだって~みなさん知っていますか~」
幼女テイマーのテトが皆にわたしの言葉を伝えてくれる。
「おおっこちらが我らが救世主ゴブリンの主人アイラ様か、皆に知らせなければ」
「アイラ様がこの癒しのゴブリン様を遣わしてくださったということか」
「アイラ様、いや聖女アイラ様、万歳!」
「ゴブ?ゴ~ブ」(違う、そうじゃないゴブ。いや確かに聖女にして身代わりになっ てもらおうとか思っていたけど、今は探しているだけゴブ)
「聖女じゃない~だって~、今は探しているだけだって~」
「おおっ、何と謙虚な・・・これだけの奇跡を起こしながらまだ聖女としては力不足、そして真理を探している途中と申されるとは・・・」
「女神セレスティア様、万歳! 聖女アイラ様、万歳!」
何か不穏な雰囲気になってきているぞ。
脇で人相の悪いヤクザな奴らとフードを被った陰気な集団と身なりのきっちりした黒服たちがうなずいたり、拍手して一緒になって盛り上げている。
「う~っす。お待たせ~。何だか騒がしいっすね~」
ライアンの奴がシスターと一緒に奥から出てきた。
鎧を脱いでラフな格好になっているし、2人ともいい匂いがして湯気が出てるぞ。
「ゴブ~」(自分だけお風呂に入って汗を流してきてずるいゴブ)
「しっかし、水をきれいにする浄化の石とはいい考えっす。貧民街は水が悪いってのが有名だったんで。お風呂のお湯もきれいになって気持ちよかったっす」
シスターさんは少し足元がふらついている。
「シスター、大丈夫~?気分悪いの~?」
「え、ええ、大丈夫です。あまり見慣れない量のお金に当てられたみたいです。それに普段しないことをして少し腰に力が入らなくて」
「あはは~、分かった~騎士様の背中を流してあげてたんでしょ~シスターえら~い、普段しないことって疲れるよね~」
「え、えぇ、大事なお客様でしたからね、お背中ぐらいは流さないと。あはは」
何だと!まったくこの坊ちゃんはシスターをメイドさんと勘違いしているゴブ。
一人でお風呂も入れないのか、大人なのに情けないゴブ。
「それはそうと何だか人だかりが出来ているっすね」
そうなのだ、あの後も何件か連れられて重病人をまわって癒してきたから噂になっているようだ。
「聖女様のみ使いゴブリン様、どうかこの子の熱と咳を止めてください」
「ゴブ」(ヒール、浄化)
「この子は随分前ですが足を骨折してしまって、まともに歩けなくなってしまって」
「ゴブ」(ヒール、復活)
「近ごろ足が特に臭くなってきて」
「ゴブ」(浄化)
この町にはケガ人、病人が多すぎるゴブ。きりがないゴブ。
よーし、分かったゴブ。わたしがいなくても癒されるようにしてやるゴブ。
女神像とアイラ様像を魔改造してやるゴブ。
「ゴブ」(神界発動)
魔力吸収、譲渡のセレスティア像
・寄付箱に硬貨を入れて祈りを捧げると少し魔力を吸収《《される》》
・隣りのアイラ像に吸収した魔力を譲渡する。
癒しと浄化のアイラ像
・女神像から魔力が供給されるとヒールと浄化の魔法が発せられる。
女神に祈りを捧げて聖女様から奇跡を賜る。
これが世の中の仕組みゴブ。
ぶっちゃけ、自分の魔力を聖魔法に変換して還ってきているだけだが。
教会に寄付が入り、女神に信仰が集まり、体も癒される。
みんなが幸せになるいいシステムが出来上がったゴブ。
「ああっ、私の祈りが女神様に届きました!聖女様より癒しの奇跡が!」
「わしは大銀貨3枚を寄付するぞ!髪の毛を復活させるぞ!」
ヒールと浄化では部位欠損は回復しません、あと硬貨を入れると発動するが金額の大小は関係ないゴブ。勘違いして期待するのは勝手だから言わないゴブ。
あまり短時間に何回も祈ると魔力枯渇で昏倒しますよ?
「はぁ~。自分の魔力で回復っすか~。よく考えたっすね」
ライアンは気づいたか。さすがだな。
「ゴブ」(そんなに都合のいい奇跡なんてないんだゴブ)
くっくっくと悪い笑みを浮かべてしまったゴブ。
「いや~それでも魔法が使えない人たちにとって使い道のない魔力を回復魔法に変換できるのはかなり画期的だと思うっすよ」
「ゴブ」(でもお嬢様を見かけた人はいないみたいゴブ、屋敷に帰るかゴブ)
「お姉ちゃんをみんな見てないようだから帰ろうよだって~」
「そうっすね~。ここではこれ以上の情報は得られそうにないから戻るっすね」
「ああっ、ライアン様もう戻られるのですね・・・楽しい時間はすぐに過ぎてしまいますね。またお仕事の合間にお伺いください。お待ちしております・・・」
「お顔をあげてください、ライラ。同じ町で暮らしているではないですか。会おうと思えばいつでも会えます。そのような悲しい顔はあなたには似合いませんよ」
だから誰だよ。いつもは「っす」「っす」うるさいのに。
「不死不殺の守護騎士様、後は私どもにお任せください」
「新たなボスのもと、この町と教会をこれからはしっかりと守っていきます」
ズラッと男どもが出口まで並んで頭を下げている。
「ゴブ」(何か2つ名が付いているゴブ。不死不殺とか中2っぽいゴブ)




