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第57話 お嬢様誘拐事件5

「ゴブ~」(この町で悪いやつのところへ案内するゴブ)


わたしより少し身長の高い女の子に話かけた。

この子は《《本物》》のテイマーの素質を持っているのだ。

どこかの偽物さんと違ってな!ぷぷぷ!

まぁ[翻訳]の方がスキルの格は上かも知れんが。


「う~ん、悪い人~?この辺りにはいっぱいいるよ~。じゃあ一番悪そうな人から会いに行けばいい~?」


「ゴブゴブ」(やっぱりちゃんと話が通じているゴブ~。早く案内するゴブ)


「分かったよ~、こっちこっち~」


どうやら先導して付き合ってくれるようだ。

まわりの孤児たちも3人くらい付いてきている。

お嬢様と同じくらいの年齢の女の子も後ろから付いてきている、子供たちの世話係なのかな。


それにしても貧民街というだけあって一歩メイン通りから入るとかなり荒んでいるな・・・。

こっちの冬がどれくらい厳しいのか知らんがこんな廃屋寸前の家だと寒すぎるだろ。

それでも家があるだけでもマシな方ってところなのか。


「おば~ちゃ~ん。マルクの様子はどう~?」


崩れかけた長屋の1室に入って声をかけている。


「ああ、みんな最期の別れにきてくれたのかい?この子はもうダメさね。傷口から悪い病気が入ったのか、腐りはじめちまってねぇ。熱も出てきてもう意識も無いさね」


悪いやつって体の具合が悪いってことか!微妙なニュアンスが違ったゴブな。

まぁ孤児たちに極悪人の案内が出来るとは思っていなかったけど。


ふ~、やれやれ。見てしまったものは放っておけないゴブな~。


「ゴブ」(ヒール)


傷口がふさがり、腐りはじめていた部分も元通りゴブ。


「わ~い、ゴブリンさんすご~い。またマルクと遊べるようになるかな~」


「ゴブ」(傷はもう治ったゴブ。あとは暖かいものでも食べて体力を回復するゴブ)


「うわっ、一体何なんだい?それによく見たらあんたゴブリンじゃないか。最近の女神様のお使いは魔物なのかい?マルクがまた元気になるなんて夢のようだよ」


「今度はこっち~」


2件隣りに案内される。ここにお嬢様がいるとは思えないけどな~。


「ここのおばーさんはね~。ひざが悪いって毎日言ってるよ~」


「ゴブ」(はいはい、今度は膝ね。ヒール)


何か訪問診療みたいになっているゴブ。

これだけ劣悪な環境で栄養も足りず重たいものを持ち続けていたら悪くもなるわ。

って違~う!


「ゴブゴブ」(体の悪い人もいいゴブが悪人を教えてほしいゴブ)


「は~い、悪いことしてる人だね~。知ってる~」


最初からちゃんと説明してるってのに・・・。頼みますよゴブ。


少し歩いて一軒家の住宅の中に案内されるとまだ昼間なのにすごく酒臭かった。

食堂にある木製の長椅子におっさんが横になって寝ている。


「ココ君のお父さんはね~。ココ君に働かせて毎日お酒を飲んでるんだよ~。お酒を買うお金を渡さないと叩かれるんだって~。悪い人だよね~」


あ~。そっち系ですか。確かに悪いやつだな~。犯罪者じゃなさそうだけど。


「んだぁ?ガキどもが揃って何だってんだぁ?ココの奴は夕方には戻ってくるぞ。それとも何か、元C級のおれに何か文句あるってのか?うぃ~」


そこそこ良い家があるのは元冒険者のころの名残か。今は落ちぶれているけど。

元冒険者だけあって腕っぷしには自信がありそうだな、どうするか。


「はいはい、ここからはおじさん達の出番だね」

「私たちが彼を説得いたしますからゴブリンさんは次をまわってください」


さっきから後ろについてきてきているな~と思っていたがどうやらドノバン一家と闇魔法ギルドの組員さんだった。

こっちは子供だけで荒っぽいことは苦手だからな~、よろしくゴブ。


「ゴブ~」(では後は任せたゴブ)


そそくさとわたしたちは家から退場した。扉を閉めてそっと中の様子に聞き耳を立てる。


「おう、こら、てめぇ。ゴブさんを威嚇してんじゃねぇぞ。ドノバン一家を敵にまわしてこの界隈で安心して暮らせると思うなよ」

「闇魔法ギルドも黙っていませんよ?」


「え・・・?いや、別に組織に盾つこうなんてこれっぽちも・・・さっきのゴブリンが何かうちのココと関係あるんすか?」


「ココだかククだかどうでもいいんだよ!てめぇも剣で腹ん中かき回されてぇか!」


どかっ!ガラガラ、ガシャーン!


「くくく、酒を飲むのも自由ですがクズはクズらしく生き残るために少しは稼いで銀貨1枚でも多く教会に寄付するのです。それがこの町での新しいルールです」


何かよく分からないけどこれであのおっさんも真面目に働くようになるかな。


ふ~、ちょっと休憩ゴブ。何か歩きまわって疲れたゴブ。

子供たちは元気ゴブな~。痩せてるのによく動きまわるゴブ。

長屋の中心にある井戸の近くで休むことにした。


「ゴブ」(のどが渇いたゴブ、水を汲んで飲もうゴブ)


「え~、いいけど~。そのまま飲むとお腹イタくなるよ~」

「この辺りの井戸の水はそのまま飲むとお腹を壊します。一度沸かすか浄化の魔道具を通さないとだめですよ」


何だと!そのまま飲めない井戸水なんて使えないじゃないか。

井戸を覗きこむと確かに濁っているような気がする。


「あ~。それがこの辺りが貧民街になっている原因でもありますね。ここは町の下段になっていますからどうしても汚物が流れ込みやすくて。町を拡張しようとした時に飲めないのが分かって計画が中止になったって話です。おかげで俺らみたいなハグレもんが住み着いてもそこまで厳しく追い出されなかったってことでもありますが」

「ある程度稼いでいる者は煮沸したり浄化の魔道具できれいにしてから飲んでますがここで暮らしている方はそんな余裕はなさそうですからねぇ」


仕事を終えた2人も渋い顔をして話に加わってきた。


生活用水が汚れていては健康的な生活がそもそも出来ないゴブ。

ふ~やれやれゴブ。また聞いてしまっては無視できないゴブ。


わたしは子どもたちに適当な大きめな石を集めてきてもらった。


聖魔法レベル5[祝福] 


浄化の石

・触れたものを浄化する(弱)

・消費魔力軽減

・周囲の魔力をわずかに吸収


効果を弱めたかわりに消費魔力も少なくし、周囲から魔力を吸収する機能つきにしてほぼ半永久的に浄化し続けるはずだゴブ。

見た目はただの石だけどな。


「ゴブ」(えいっ)


とりあえず1個を近くの井戸に放り込む。

うん、ちゃんと浄化できているようだゴブ。


「ゴ、ゴブリンさん、あんたってやつぁ・・・」

ドノバン一家のチンピラさんが感動して涙を浮かべている。


「ゴブ」(残りの石を他の井戸にも放りこむゴブ)


「分かった~。この石を入れればお水がきれいになるんだね~」

子どもたちが残りの石を持ってそれぞれ走っていった。

結構大きめの石なのに元気ゴブな~。


とりあえず結構時間も経ったし教会に戻ろうか。

結局、お嬢様の手がかりは何もなかったゴブ。

ライアンの奴と合流して次の探し方を考えないと。


教会に戻るとさらに寄付の袋が積みあがっていたゴブ。


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