第101話 招かれざる客8
なんだか下町の方はざわついているようだけどお屋敷の朝は平和です
今日も朝からゴブリン体操とジョギング(とお花摘み)をして体調も絶好調
「今日は王都からお嬢様のご学友のマウントヒル家のお嬢様が訪問されます。相手は公爵家なので粗相の無いようお願いしますよ」
カタリナさんが食堂へ案内してくれながら教えてくれる
公爵家の来訪ってけっこう大ごとじゃないですか
公爵といえば王家の親類しか名乗れない、いわば準王族のような国家の重鎮ですな
まぁわたしには関係の無い話だから今日の午後は銀貨でも磨いてゆっくりするか
それにしてもマウントヒル家・・・日本語に訳せば山岡家か
なんだか久しぶりにラーメンが食べたくなってきたぞ
「ちなみに今回訪問されるシンシア様は王太子とご婚約されたアリシア様の妹君であらせられます、アリシア様の婚約においてはずいぶんと活躍したそうですね。アイラ様とミセッティ様も今回の訪問にあながち無関係ではないのでは?」
うっ、公爵家のメイドさんにばれていたから隠し通すことは出来ないだろうと思っていたが結構情報が漏れていますね
恋愛に興味に無かったアリシア様に恋のキューピッドとして矢を射抜いた件ですな
婚約した本人には知らされていないそうだけど・・・少し気まずいゴブ
「ゴブ~」(あれはレイシア様の命令で仕方がなかったゴブ)
「はぁ、そういえばアリシア様はマウントヒル家でしたわね。シンシア様の姉君でしたか・・・レイシアお姉様の恋愛話好きにも困りますわね、本人はいないし」
アイラお嬢様がめんどくさそうにため息をついた
「あはは、そんなこともありましたよね~、あの時のアレですか。学問にしか興味の無いお堅い女子がトロトロのメスになって見てるこっちが恥ずかしかったです~」
「こら~!マリー、人の恋愛をそんな風に茶化してはいけませんわ、その場にあなたもいてお姉さまと一緒になって煽っていたのもバレていると思いますわよ」
「うげっ、そういえばあの恐いメイドさんに一部始終を見られていたんだった・・・今日はお腹がイタいので早退いたします~、あうう~ホントに胃が痛いかも」
「屋敷に来られるのはシンシア様だけのようですよ、マウントヒル公爵は南区の迎賓館のほうでお迎えするとか。お館様がすでに準備のために出掛けられています」
迎賓館・・・通称『エルフの館』
貴族を迎えるために聖水風呂に隣接して建てられエルフが接客している休憩所
マウントヒル公爵が急に訪問された理由が透けて見えますね
娘の婚約のお礼よりもエルフに会いに来ているなんてことは・・・無いよね
まぁその辺りは下々のわたくし達が関知する内容ではないゴブ
「ゴブ」(ところでお嬢様とシンシア様は仲がいいんですか?)
「う~ん、同じクラスだからご挨拶はしますわ、シンシア様は公爵家なので取り巻きさん達が常に3,4人はまわりにおられますね。わたくしには何かライバル心があるみたいで何かと自慢してマウントを取られている気もしますが」
「ゴブ・・・」(マウントって・・・公爵家だから元々向こうが上じゃないか)
「そうなんですよね・・・元々向こうの方が格上なのですからライバルにもなりません、わたくしも自慢されてもうなずいて同意するしかないのです」
お嬢様の話を聞いて一抹の不安を覚えながら粗相をしないよう気を引き締めたゴブ
午前中のお仕事を終え、午後になると豪華な馬車が屋敷の正門から入ってきた
馬車から降りてきたのはザ・異世界貴族のご令嬢といった美人なお嬢様だった
優雅な仕草でエスコートされながら馬車を降りて綺麗な姿勢でそろりと歩いてくる
完全に人生勝ち組のトップランカーですね
「シンシア様、遠いところようこそおいでくださいました、サロンにご案内いたします。どうぞごゆっくりくつろいでくださいませ」
お嬢様も綺麗なカーテシーで挨拶しシンシア様を案内する
シンシア様の横にたたたっと小さい子どもが走り寄ってくる
「もう!遅いですよ、それに外でなければ走らないようにと言っているのにまだ分からないのかしら?」
「にゃ、にゃ~。靴が上手く履けなかったんだにゃ~、ごめんなさいにゃ~」
よく見ると猫獣人?いやもっと獣っぽいな・・・従魔なのか?
「ふふふ、この子は最近隷属したケット・シーです。わたくしはテイマーではありませんが隷属の契約書を使えば従魔に出来るのですよ」
そういってシンシア様はわたしの方をちらりと見て得意げにクスりと笑った
お嬢様がゴブリンであるわたしを従魔にしているのは皆が知っていることなので自分はケット・シーを従魔にしてきたのか・・・
すでにマウント合戦が始まっているゴブ
ゴブリンとケット・シーか・・・うん、見た目は少しだけ負けてますかね
「ゴブ・・・」(お嬢様・・・何かすまないゴブ・・・)
「そ、そんなことないですよ、ミセッティもよくよく、ちゃんと、近くで見るとかわいい顔立ちしていますから、緑の肌は最近やっと慣れましたけど」
「ゴブ~」(猫は卑怯だゴブ~)
「シンシア様って確か魔法関係のスキルだと聞いたことがあります~、わざわざ従魔を用意してくるなんてライバル心ありありですね~しかもかわいいです(ボソッ)」
「お嬢様にマウントを取りにきているという話もあながち間違いではないのかも知れませんね、今日は少しむずかしい接客になるかもですね(ボソッ)」
後ろでマリーとカタリナさんが小声で何か話をしている
日当たりのいいサロンに着くとシンシア様が猫の従魔を前に出しながら提案してきた
「今日はわたくしのケット・シーとそちらのゴブリンで3番勝負と洒落込みましょう。まずは知力がどちらが優れているか試していきましょうか、アレを用意なさい」
後ろから執事さんが礼をして出てきて鞄から遊戯盤を取り出し机の上にセットした
「これは・・・アレですか?」
アイラお嬢様が少し困ったような顔をして確認している
「あら、もうご存じですの?その点はさすがですわね、そう白黒大逆転ですわ!」
シンシアお嬢様はすでに勝ったようなドヤ顔で上機嫌にお嬢様を見ている
「ゔぇ」
マリーのやつが腹の底から鳴ったようなくぐもった声を出した
ゲップくらい我慢しなさいよ、客人の前ですよ?
「うぅ~、カタリナ様~この後の展開が目に浮かぶようです~本当に胃がキリキリしてきました~一旦休憩に入っていいですか~」
「何を気弱なことを言っているのです、コスタリア家直属のメイドとして誇りをもって毅然としていなさい。・・・私はことの流れを奥様に報告をしてくるので少しばかり席を外しますが両家に恥をかかせないようにしっかりと注意するのですよ」
「うっわ、一人にしないでくださいよ~ただでさえ公爵家にいろいろバレててやばいんですって、男爵家出身のメイドなんて家具程度と同じ扱いで気に入らないとすぐにアレでアレされちゃいますって~(ボソボソ)」
「それではお嬢様、すぐにお茶の用意をして戻りますので」
足早にカタリナさんが部屋から出て行ってしまった
「にゃ~、ひっくり返すよりハジく方が得意なんだけどにゃ~」
「ふふふ、カドですよ、教えた通りカドを先に取りさえすれば勝利は確定したも同然ですわよ。相手はゴブリンですからまともな勝負が出来るかさえも分かりませんが」
シンシア様とケット・シーさんはすでに盤の前で作戦会議を始めたようだ
「ミセッティ・・・相手は公爵家、分かっていますよね?いい勝負をするのですよ」
(バレないように手を抜いて上手く接待するのですよ)
「ゴブ!」(分かっているゴブ!)
敵は公爵家、相手にとって不足は無いゴブ
コスタリア家に喧嘩を売ってきているので全力で叩き潰せということですな
任せるゴブ!




