3-4 奇才塾、その驚くべき指導 ④
そして、何日も過ぎていって、「怒っている」から、「かなしい」をへて、「たのしい」へと進んでいった。ここまでは、やはり「うれしい」と「たのしい」の違いは、難しかったようだ。
そして、この練習と同時進行に進めていく練習がある。
それは、声の使い方と発声訓練と滑舌の練習である。
早口言葉や声の出し方、そして、奇才塾独自の、クリアリティ発声法の練習。
・クリアリティ発声法とは。
声や音というのは、空間にある空気に響いて、周囲に音を伝え、相手の耳に届くことになる。この独自の発声法を行なうと、より空気に細かく遠くまで、そして、透明感のある音として広がっていく。特別に大きな声でなくても、より遠くに、そして鮮明に伝わり、より透き通ったようなクリアな声で響いていく。
そして、たとえ小さな声であっても、より鮮明に聞きやすく周囲の人たちの耳に届いていくので、歌ではなく、単なるセリフであっても、そのクリアさは際立って、繊細な音で伝わっていくので、マイクに、より綺麗に乗っていく。
奇才塾では、その作品に、多くの同年代の女子たちが出演する場合など、特にその声を美しく際立たせるために、この発声法を極めさせるのである。
だが、まだ、単語感情表現は終わらない。次のレベルは、そんなものではなかった。
「それでは、単語感情表現は、今日から、次のレベルに移っていきます。今日から、こういうものになります。」
そういうと、液晶ボードに映し出されたもの、それは、驚きの内容であった。
「さびしい」「せつない」「やるせない」
なんということだろうか。こんなに情緒的な内容とは、ただセリフのある普通の演技であっても難しいというのに、これを気持ちを作り上げて伝えるなんて、本当にできるのだろうか。塾生たちは、本当に壁にぶち当たってしまっていた。
だが、やるしかない。これは伝えるどころか、普通の演技でも難しい課題である。伝えるのも、もちろん難しいが、受け手としても、どんな伝わり方になるのか想像もできなかった。それにもかかわらず、やっと、何人かの塾生は、合格人数のポイントを上げていった。
それは、どのようにして、それぞれの気持ちを作りだしていくかということが、もっとも困難で重要であった。




