11-7 謎の天才女優、現る⑦
しかし、それは、昨日の結果とは、あまりにも、違っていた。
見終わったあと、昨日、衝動を受けていた舞台監督と演出家、脚本家は、あまりの思いがけない結果に、信じられない思いで呆然としていた。
黎明劇場本部からきた代表、伊庭利真栗は、舞台監督に声をかけた。
「いやあ、監督、話しには聞いていたが、代役屋が、これほどまでにすばらしいとは思わなかった。ひょっとして、美貌野美津子よりも、遥かによかったんじゃないのかい。大きな声では言えないがね。」
「ご期待に添えてよかったです。明後日からの公演は、これで安泰です。」
「美貌野美津子が大怪我したと聞いて、青くなっていたが、こんな女優がいたとはね。まさに、怪我の功名だな。美貌野美津子には、気の毒だったが、むしろ舞台から落ちてくれてよかったんじゃないのか。落ちてくれたことを感謝したいほどだよ。おっと、今のは、聞かなかったことにしてくれよ、はははっ、、、。」
「そ、そうですね。」
そうじゃない。私が今、言いたいのは、そこじゃないんだ。昨日の稽古は、すばらしかったが、なんと、今日のは、その何倍もすばらしかったということなんだ。今日、来ていた人たちは、もちろんあのすばらしさに感激しただろう。昨日の稽古をみてからだったら、今日の舞台の凄さが、さらにわかったはずなんだ。昨日の演技と、今日の演技の、その差が、その急激な進化の仕方が、、、、。それに、なによりも、キセキトワの凄さがわかりすぎたはずなんだ。
しかし、昨日が最高の出来だと思ったが、本当に、今日は、さらにとんでもなかった。今日は、昨日を遥かに超えてきた。その1つには、あの、年齢表現の凄さだ。18才、23才、そして、35才の貫禄ある女王の表現は、いったいなんなんだ。
昨日も、年齢の違いをメイクなしでも、上手く表現していると思っていたが、今日は、さらにその年齢にしか見えないところまで、その表現力がアップしていた。それに、あの女王そのものの貫禄は、ただの演技とは思えない。どうしたら、あんな貫禄のある演技ができるのか。キセキトワは、まだこんなにも余力を残していた。
キセキトワ、いったい何者なんだ。代役屋だって?とんでもない、彼女は、プロ中のプロ、いや、そんな言葉では追いつかない。まさに、その名の通り、奇跡だ、異次元の女優としか言いようがない。
監督は、そう言いながら、心の中では、まだ少し震えていた。




