37話 〈怪奇現象はクレンザーで対処〉
慣れた動作で7階の防犯ブザーが鳴っているのを確認し、停止ボタンを押した。
その刹那、エレベーターではなく非常階段……住人たちが使っている階段が滝になった。
「ええ〜〜?!?!」
訳がわからない。
2階の非常階段の踊り場には排水する施設、いや、機械やらはなかったはずだ。
「うわああ! 私の仕事が増えるう!!」
ユルカは掃除用具入れに直行するも、モップや雑巾、バケツしか思い浮かばなかった。ザバザバと流れ出る水。
不意にとんでもな提案が閃く。
この際――洗剤を使い、階段を洗ってしまえばいいのでは??
「うわあああ、私って頭いいっ!!」
早速、クレンザー粉末を大量に流し込みデッキブラシでこすってみた。
対して見た目は変わらないが効率的で、モップがけよりは良いだろう。
ザバザバと音を立てながら下る水とクレンザーの匂いが満たされ、階段はカオスにまみれている。
「誰かが踏んだガムが綺麗に取れてる! すごっ! これってまさか、日頃の行いの良さが生んだ奇跡??」
「な、なんじゃあこりゃあ?!」
「あ。管理人さん、お掃除してるんです。見てください。かつてなく階段が綺麗になってますよ!」
異変に気づいた管理人さんが仰天して、アワアワとエレベーターを指さした。
「今すぐエレベーターに塩をまいて! 手伝うから!」
「え?! し、塩ですか?!」
「いいからぁ!」
ドタバタと走っていく管理人さんにハテナを浮かべていたいが、仕方なし。エントランスに戻り、塩の袋を取り出し、エレベーターにありったけにまいた。
「数年に一度、こうなる日があるんだ。だから……まあ、ユルカちゃんは自由でいいね……ありがとう。階段を綺麗にしてくれて」
「いや、思いついただけですし。後片付けどうします?」
「大丈夫。水も止まってると思うから」
管理人さんの言うとおり、滝のような水漏れは止まっていた。
「ユルカちゃんは疲れたと思うから休んでていいよ。こっちで片付けるよ」
彼はそう言って、ションボリとクレンザーまみれになった階段へ向かっていったのだった。




