32話 〈ヒーリングミュージック〉
深夜2時。
『ヒアアフター』なるマンションの管理人室でユルカは7階の防犯ブザーが鳴っているのを確認し、停止ボタンを押した。
また7階から電話がかかってきている。慣れた手つきで電話を切ると、エレベーターの防犯カメラを見やる。誰もいない。
毎日の動作を終え、寝静まったロビーを眺めた。マンションの管理人さんは夜になると1階の部屋に帰ってしまう。
彼女は──ユルカは警備やらを兼ねたゆるい、第2の管理人だった。
深夜2時から3時まで、何回か閉鎖されたはずの7階から非常ブザーやら電話やら異常な『怪奇現象』が起きる。それを口外しないのがユルカの仕事であり、精神的に参った管理人さんを休めるためのお手伝いもしている。
非常ブザーは今夜も絶好調。何度消しても作動するし、無言電話もいつも通りである。
ユルカはあくびをしつつ、マンション自体の電気代はどうなるのだろうと考えていた。ブザーはひっきりなしに鳴るし、7階は常に電気がついている……らしい。
なら、何とかすべきでないか。
(7階の人たちが大人しくなれば良いんだけど)
ふと、いい案が頭に浮かんだ。慌てて席を立ち、棚からラジオ用のCDを取り出す。そこには癒やしの音楽集が収められていた。
昼間から夕方まではラウンジに音楽を流しているというので、CDがあるのは知っていた。この中から気持ちが穏やかになるヒーリングミュージックを選べば――
防災無線や7階の廊下に設置されたスピーカーから流せば、彼らも気持ちがゆったりとするのでは?
ユルカは早速ラジオにCDをセットして、マイクの近くに向けて流してみた。
結果は散々で、7階は荒れに荒れた。
電話が鳴り止まず、なぜだかラジオ自体や防犯カメラが壊れてしまい……音楽が再生できなくなってしまった。
「あれ? ダメだったかあ……」
ヒーリングミュージックなら人は休まるのでは、とユルカは不思議がる。謝罪するにも7階は立ち入り禁止なのでできないが、管理人さんに謝るとしよう。
(人って難しいなぁー)
記憶喪失のせいと決めつけて、彼女はうーむ、と壊れたラジオを眺めた。
去年の7月から更新が止まっていました……。
お久しぶりです。
のんびりやっていきたいです。




