18話 〈マンション探索 2階の壁〉
「ユルカちゃん。何回か心霊体験してるでしょ。わたしには分かるんだぞぉ〜」
ニヤニヤと卑下た笑いで彼女は詰めよった。
「ゆ、幽霊とか信じてませんよっ。このマンションは不思議な現象が起きるだけで断じて幽霊は──」
階段を登った直ぐ前、2階の壁に少年が埋まっていた。
「ひっ」
「わお。これはすごい」
「大事件ですよっ!ちょ、ちょっと君!大丈夫?!」
慌てて駆け寄るも、少年はすすり泣きながら壁に沈んでいく。
「ええ〜〜~…」
ペタペタと変哲もない壁を確かめながらも、少年の安否を心配する。壁に吸い込まれるなど尋常ではない。
苦情処理の経験からして彼は壁に埋まったり、出てきたりしているのか?
「…人って壁に埋まれるんだ。し、知らなかった…」
「いやぁ、彼ぐらいじゃないの?少なくとも私は埋まれないよ?」
藍田さんが少年のいた位置を確認する。
「ここに何かあったみたいだね。少し傷がついてる」
指でわずかな傷をなぞると、彼女は納得した。
「管理人さん。最近、火災報知機を新調していたから。もしかしたらここには古いタイプの発信機つきの報知器があったのかも」
「でも少年と何の関係が?」
「さあ…それは彼に聞いてみないと、だね!」
首をかしげざるえない回答に、ユルカは思考停止した。とりあえず次に苦情が来たら、管理人に火災報知機の事を切り出してみよう。
「これは霊感センサーがビンビン♡ビンビン♡反応してますよ〜!さあ、鏡を探そうっ」
二人が去った後、壁から黒々とした液体が漏れだす。傷跡は箱型の報知器が置かれていたせいなのか、それとも──誰かが埋められているものなのか。
誰にもそれは分からない。
久しぶりになりました(2回目)。
体調が優れない日々が続いてメンタルがジリジリ削られていますが、執筆すると少し救われた気になります。




