530.念とノイズキャンセリングは似ているようです
-第1世界の核心へアクセスするための観測層-
オイラの八女茶適温修行は、5回ほどお茶を入れなおし、何とかクリアした。
最初は熱すぎるから、冷まさないといけない。
冷ますのは時間が解決してくれる。
問題は適温に下がった後に、いかにその温度を保つかだ。
そのあと、湯呑に手を翳し、お茶の温度の”揺らぎ”を手のひらで感じ取る。
適温だと”揺らぎ”が無い状態になるのだ。
だから”揺らぎ”を消すように、オイラから湯呑に対して念を送るのだ。
ノイズキャンセリングと同じで、”揺らぎ”に対して、逆向きの波を送る、つまり
逆位相の念を送る。
「善行、念を送ることはできるようになったみたいだな。
じゃあ、早速本番と行こうじゃないか!」
「そうね。善行。
体得できたみたいだから、その感覚を忘れないうちに、さっさとやっちゃった方が
いいわね。」
オトンもオカンも、さっきまでの疲れた顔をほころばせながら、まるで大したこ
とじゃないと言わんばかりに軽く言ってくる・・・。
だが、その瞬間だった。
観測層の空気が変わり、周囲の景色が変わる。
「ここはどこなんだ?」
しかし、その問いに答える者は居なかった。
あ、これが“本番”なんだ。
胸の奥がざわつく。
世界の底から響いてくるような震えを感じる。
「善行、感じたな。
ここから先は、オマエ一人で立ち向かうんだ。
その準備はできているのだから、自信を持つんだぞ!」
オトンの声はその一言を残し、聞こえなくなった。
オイラはごくりと唾を飲み込んだ。
ここから先は、もう“修行”じゃない。
でも、ここでしくじると異界が滅んでしまう。
そう考えると、強烈なプレッシャーに感じるが、不思議と嫌な感じはしない。
むしろ、中学時代のテスト前の様にワクワクしている自分が居る。
久々に感じた感覚だ。
「やってやろうじゃないか!」
そう言って、頬を勢いよく2回はたいた。
読んでいただき、ありがとうございます。
善行は何とか念を送る術を学んだようです。
次回からいよいよ、魂流への対応を行います。




