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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
32/40

cord.31 友の為

「この反応…!バリア展開!カイン!あたりに警戒を!」


 術式からなる警告音。それを聞くなりルーティは強力なバリアを張った。


「ちょ!カイン!?」


 ルーティの言葉も聞かずカインは崖から飛び降りた。そしてすごい速さで城へと入って行った。城へ入ると兵士の死体が至る所に転がっている。血の匂いが広がりカインは鼻を擦る。


「よくやるな奴らも。」


 死体をチラ、と見ると一瞬にして魔力を感じる方へ移動を開始する。辿り着いたその場では鎧の男、フレインと呼ばれた男がジークに歩み寄っている。


「何を…やっているんだあいつは…!!」


 カインは怒りを露わにする。


 ーあいつを殺すのは、俺の役目だ!ー


 他の人間に殺される事など許されていないのだ。ジークはカイン自身の手で息の根を止める。そうでもしなければこの怒りは収まらない。セイトをあの場で無残に殺したジーク。セイトがどれだけ世界から怖がられていようと、狂っていたとしてもカインにとっては大事な存在だった。それをいとも簡単に消し去ったのだ。何故セイトがあぁも変わってしまったのか調べる為に、当時セイトを慕っていたソキウスを探し回った。そのソキウスまでもジークはカインの目の前で殺した。結果的にソキウスは自爆ではあったが、ジークのせいだという事に変わりはなかったのだ。カイン自身、何も出来ない自分に腹が立っていた。憎む相手にやりたい事を食い止められ、プライドの高いカインは冷静ではいられない。


 ーてめぇは一生苦しんで生きろ…!ー


 振り上げられた剣。カインは気配を殺して一気に斬りかかった。フレインはギリギリでカインに気が付いた。が、もう遅い。カインは魔法で鎧を柔らかくし、鎧ごと腹を突き刺した。フレインはその時小さく笑いやっと死ねるのか、と囁いた。カインには分かっていた。フレインは何処かで死を望んでいた事を。ジークに殺される事を望んでいたという事を。


 ーそんな思い通りにさせるかー


 フレインが荒い息遣いでジークに怒鳴る。カインは小さく舌打ちをするともう一度剣を突き立てた。


 ーいいザマだ。苦しみ悶えろ。それがてめぇにはお似合いだー


 そんなカインにジークは掴みかかる。涙でぐちゃぐちゃになった顔で睨み付ける。


「…フン、美しい友情ごっこだな。俺は…俺はてめぇのそれを壊されたんだ!!俺の気持ちが分かるか!?いいや分かるはずがねぇ!!てめぇなんかに!分かられてたまるか!!」


 突き飛ばされたジークは目を見開いて肩で息をする。カインは深呼吸をして息を整えると乱れた服を整えた。


「奴を殺して来い。そこで決着を付ける。それまでせいぜい生き延びる事だな、屑。」


 そう言うとジークの前から姿を消した。



「カイン!!あんた城に行ったね!?ここで王を守るのがあたしらの仕事だって…!」


 崖の上へ帰って来たカインに怒鳴るルーティは途中で言葉を切る。


「…まったく。最近のあんたを見てると不安だよ。復讐なんて…やめなよね。」

「…こうでもしないと…俺の気が済まないんだよ。」


 肩で息をするカインを冷たい目で見るとルーティは静かに口を開いた。


「…あんた、もう限界でしょ。」


 そう言われたカインの体が小さく震える。それに構う事なくルーティは続けた。


「黒闇の神剣ーゾークルーセントの副作用。流石のあんたも隠しきれていないよね。」

「黙れ!だから何だ…!?手に入れたこの力を手放せと…!?ふざけるな!そんな事して生き長らえて何になる!俺の目標は!あいつを苦しめて苦しめて無残に殺す事なんだよ!時間がない事くらい…!俺が1番よく分かっている!」


 ゾークルーセントの力はどの古の武器よりも強大だった。その為、ゾークルーセントを召喚して使うたびに所持者の命を削るという副作用を持っていた。それ故ゾークルーセントを長い間所持する者は居なかった。人知れぬ場所…セイトが逃げ込んでいた洞窟の奥に放置されているのをやっとの事で見つけ出したカインは何度かゾークルーセントを召喚してその剣を体に慣れさせていた。


 ー大丈夫だ。あいつとやりあうだけの時間さえあれば、大丈夫だー


「…死よりも力を取るなんて…あんたも大概だね。」

「だから何だ?そんな事俺には関係ない。何を言われようと…!ゔ…あ…!」


 突然カインは胸を押さえてふらつく。そのまま座り込むカインを、ルーティは何も言わず眺める。カインはそんなルーティを睨みつけた。


「……その痛み、今までどれ位起きてる?」


 そんな突然の問い掛けにカインは胸を押さえたまま目を見開く。今までよりも長く続く痛みを抑えようと大きく深呼吸をする。


「…その様子だと…10回は起きてそうだね。 まだ…間に合うかな…。」


 ようやく痛みが薄れていき、胸を押さえる手からも力が抜ける。そしてフラフラと立ち上がると汗を拭った。


「…想い人への強い思いが呪いを解く鍵となる。って言い伝えられていてね。もしかしたら、まだ間に合うかもしれない。でもその為にはもう神剣を使わない事。そして治療後神剣との契約を切る事。」

「ふざ、けるな…!手放さない…絶対に…!!」


 その言い伝えはカイン自身も聞いた事があった。しかしそんなものに望みをかける程馬鹿でもなかった。ジークを殺してカイン自身も死ぬ、最悪はそれで良かった。ジークの死に様を見れれば、それまで生きていられればそれでいいと思っていた。


「…絶対に…殺すんだよ…俺が…俺の手で…!」


 心の奥底でドロドロとした魔力が蠢くのを感じた。がすぐに収まり身体も楽になる。大きく深呼吸をすると空を見上げた。


 ー大丈夫。まだいける。それまで俺もお前も…死ぬ事は許されないんだよ。だから…言う事を聞いてくれよ、俺の身体ー

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