cord.12 新たな可能性
「うわぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴をあげるジークを見て、レイルは昔の自分を思い出す。
「…何という事を…!私は…!!」
頭を抱え涙を流すレイルを、リオンは思い切り殴った。
「つまんねぇ事言ってんじゃねぇ!!ありゃてめぇじゃねぇぞ!?てめぇはてめぇだろ!?あの時悪魔を作っちまった事、後悔する暇があんなら悪魔を消す方法探せっつたろ!!自分の罪が消える事はねぇから、これからどうするかを考えるっつったじゃねぇか!!ならやれよ!!今てめぇが出来る事は!!ここで泣きわめく事じゃねぇ筈だろうがくそったれ!!!」
長い間悪魔を作ってしまった自分を責め続けていたレイルに、昔リオンは進めと言ったのだ。殴られて倒れ込むレイルの瞳からはまた一粒、涙が溢れた。
「……取り乱して…すまなかった…。」
そういうとレイルは立ち上がり、ジークに歩み寄る。
「…ジーク、聞くのだ。高等治癒魔導師なら、抑える事が出来るかもしれないのだ!今の私にその悪魔を鎮める事は出来ない。すまない…!けれど、いつか必ず私が見つけ出すと…!!」
するとジークはレイルの言葉を止める様にレイルの顔の前に手を出す。
「…勘違い…するな、よ…レイル。俺は、何もレイルを助ける為に、この目を使ったわけ、じゃない。リスクを、背負って………この、力を使った…。その結果、だ。だから、レイルが背負い込む必要、は、ない…!」
苦しそうに言うジークを見て、誰もが言葉を失った。
「…けど…わ、るいな…俺と、ミトじゃ…その、高等治癒魔導師の所、まで行くのは、キツイ…だから…て、つだって…くれるか…?」
真っ青な顔をして無理矢理笑顔を作るジークにレイルは深く頷いた。
「おい待てよレイル!それじゃ最初の目的はどうすんだよ!」
リオンがそう言うと、レイルはミトとジークを見て静かに口を開く。
「…私達は、悪魔の事を調査している最中なのだ。私が呼び覚ましてしまった悪魔、そいつらは私が呼び覚ましてしまうまで眠っていた事になる。勿論、呼び覚ました後暫くしてからもだ。つまり、それを眠らせる方法があるのだ。もしかしたら消す方法もあるのかもしれない。それを探す為にリオンに手を貸してもらい、共に行動していた。そこでジークとミトのしている事を知った。2人は悪魔に取り憑かれていたセイト・グレス・ローダンセを殺した後、そのセイト・グレス・ローダンセと関わりの深かった人物を殺していたのだ。私達はその者達から少しでもいいから情報が欲しかった。考えたくはなかったが、もしもミトとジークが情報を渡したくなくて奴らを殺し、そして私達に黙っていたとしたら…と考えると、手荒な行動に出るしか私達には出来なかったのだ。すまない。謝罪してもしきれぬ。」
深く頭を下げるレイルにミトが顔を上げるよう促す。
「やめてくれレイル…!事情は分かった…!でもごめん、俺達は何も知らないんだ。俺達は本部に居るボスに仕事を任される。殺し屋である俺達には理由とか…重要な事は知らされないんだ。それで殺し損ねたら大損害だからね。ただ最低限の情報はこっちで勝手に調べてる。でもその程度なんだ。だから俺達は悪魔の事なんて今初めて………て…まさか…それでカインも…?…いや、とにかく今はジークをどうするかが優先だ。その高等治癒魔導師に心当たりはある?」
ジークに肩を貸したミトはレイルを真っ直ぐに見つめ、冷静に言う。
「…癒しの国クリスタロスの、水の都コリエンテに居るセフィラ・トーンだ。ミトも知っている筈だ。私達エレメンツの1人、水のエレメンツであり、ミトの幼馴染なのだからな。」
「…セラ…。成る程、了解。でも今あそこは王が危なくて港を閉鎖しているよな?陸路からだと凄く時間がかかるな…。テレポートと使いたくてもあれじゃジークの身体に負荷をかける事になるからな…。」
海に面した所に位置する水の都コリエンテは、都自体に港がある。港からの出入りが主になっているが、国が不安定な事から王が住むその都の港を閉鎖し、怪しい人物を入れないようにしているのだ。
「それなら…地重魔法のチャームカプセルは私達全員を包み込む。身体自体に負荷をかけることなくそれを使って移動をする事が出来る。しかし警戒されいる中上空から入るのは迎撃されかねない。クリスタロスの大陸の端から森を抜け、陸路でコリエンテへ向かうのが最善だろう。私達を信じてはくれるか?」
そんなレイルの言葉にミトは小さく笑う。
「当たり前だろ?なんたって俺達はエレメンツだからな!」
「…俺からも…よろしく、頼む…!悪い、な。」
「…ったくどうしてこうややこしくなるんだっての…!ま、こうなっちまったもんはしゃーねぇ…レイルが行くのに俺が行かねぇ理由はねぇぜ!」
そして4人は透明な球体に包まれ海を越え、クリスタロス領へと足を踏み入れた。