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BR∃AK∃R〜ブレイカー〜  作者: 笑夢
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cord.11 レイル・ロンド

 目を覚ますとそこは見慣れた自室だった。重い体を起こし、机の上を見る。そこには置いてあった魔術本はなく、見覚えのある分厚い本が置かれていた。


「…生きてる。」


 小さく呟いた瞬間、扉が開かれた。


「おぉレイル、起きたか。手荒な真似をして悪かったな。今回お前の体には魔力増幅の薬を投与した!この薬で何人も死んだ!だがこれは奇跡だ!お前は生きている!そこで、だ。お前にはロンドの名を広げてもらいたいのだ。これが成功すれば、もっと、もっとロンドの株が上がるのだ…!だから…しっかりやるのだぞ、我が愛息子レイルよ。」

「………研究の、手助けはいいんですか。」


 部屋をうろうろと動くヴァーデルの顔を見ずに静かに言う。


「今まで耳が腐るほど聞かされた事ですよ…?それが今度は名を上げろと言うのですか?虫が良すぎるとは思いませんか?何故俺が貴方の為にそんな事を。」

「黙れ!!!いいか!!お前は私の道具として使われていればいいのだ!!分かったらさっさと行け!!」


 怒鳴り散らすヴァーデルの言葉など頭には入って来なかった。レイルの中にはドロドロとした熱い感情が浮かび上がる。


 ーあぁ、憎いー


 尚も怒鳴り散らすヴァーデルを見て、小さく笑う。


「分かりましたよ、やってあげましょう。ロンドの名にかけて。」


 それからレイルは様々な街の祭りや武闘会に参加したり、殺人を繰り返し着々とロンドの名を広げていった。名を広げる為にはどんな汚れ仕事もした。

 半年後レイルは家へ帰った。勿論褒められるつもりはなかった。ヴァーデルの望む事をするつもりはなかった。誰からも怖がられるように、周りの研究員や契約会社から見放されるようにその為だけに半年間色々なことをしてきたのだ。家の扉を開けながら、ざまぁみろ、と小さく小さく呟く。


「…き…さま…!!何故帰ってきた!!ロンド家の恥晒しが!!」


 家の中でばったりと会ったヴァーデルはレイルにそう罵声を浴びせる。


「お前のせいで!お前のせいでどれだけの…!!もういい!!お前にはもう一生私の言う事しか聞けぬようにしてやろう!!」


 そう言うヴァーデルを見て、レイルは小さく笑った。以前よりも大勢の研究員達がレイルに目隠しをし口を塞ぎ、そして縛り上げる。レイルはもう抵抗する気もなかった。塞がれた口の端が静かに上がるのを感じていた。


(…ここは…あぁ…俺はまた生き延びたのか………。)


 一週間後に目を覚ましたレイルは虚ろな瞳で天井を見上げる。


「…おぉ!起きたか!体は動くか!?どうだ!私の為に全てを捧げてくれると誓うな!?」


 そう言って立ち上がるヴァーデルの姿がレイルの視界の端に映る。そんなヴァーデルをゆっくりと見ると、小さく笑う。


「…俺は俺だ。貴方の物じゃない。」


 そう言ったレイルを見て目を見開くヴァーデル。すぐにレイルの胸ぐらを掴みかかる。


「貴様何をした!!!何故私の実験が成功しない!?吐け!!ゴミのくせに!!貴様の様な奴はいらん!!死ね!今すぐ!!私の目の前で死ね!!!!」


 レイルを何度も何度も殴りつけ、怒鳴り続ける。


 ーあぁ、憎い、憎いー


 そんな時、痛みと共に骨にまで響く様な低い声が聞こえた。


「憎イノデス、カ。アノ男ガ。」


 レイルはヴァーデルの腕を掴み目を見開く。そんなレイルを見て、ヴァーデルの顔は恐怖に引きつった。


「私ハ悪魔デス。貴方ノ怒リト負ノ感情ニヨッテ呼ビ戻サレタ悪魔デス。」


 レイルは自分の耳を疑った。魔法の勉強をしていた時、ある魔術本に書かれていた事を思い出す。古代の大魔法使い、ウェスト・ロン・エリヴィンに取り憑いたと言われている悪魔。それがただの言い伝えでないことが明らかになったのだ。悪魔は人間の莫大な負の力や怒りの力、そしてその魔力によって生み出されると言い伝えられていた。が、実際に悪魔を見たものなどいない事から言い伝え、伝承として今の時代に細々と語り継がれていた。レイルも勿論半ば信じていなかった。そんなレイルに追い討ちをかける様に、頭の中に声が響く。


「私ニ力ヲ貸スノデス。彼奴ヲ殺ス事ナド容易イノデス、ヨ。憎イノデショウ、彼奴ガ。」


 全身に鳥肌が立つ。ヴァーデルは思い切りレイルの手を振りほどき、尻餅をつく。瞬間全身に激痛が走った。その激痛にレイルは頭を押さえて悲鳴をあげる。体には力が入らなくなり、ドロドロとした物が込み上げてくるのをハッキリと感じた。


「……我ニオ前ニ俺ニ貴様ニ私ニ…。」


 レイルの口から低い声が出る。レイル自身にも、何が起こっているのか分からなかった。一瞬、本当に一瞬だった。気がつくとレイルの目の前に横たわるヴァーデルの姿があった。そのヴァーデルの身体から溢れ出る鮮血に、笑みが零れる。何という快感。


「如何デショウ、カ?コレデ貴方ハ自由ナノ、デス。」


 ーあぁ、解放されたのかー


「…くっ…はは…あっはははははは!!!俺は…!!私は自由だ!!!!!」


 それからレイルは悪魔の言いなりになりもう一体の悪魔を目覚めさせた。その悪魔達はレイルの元を離れ多くの人々に混乱をもたらせた。

 これが、後の地のエレメンツであるレイル・ロンドの15歳の記録である。


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