cord.10 突きつけられた現実
大声を上げる2人をリオンとミトは不安そうに見つめる。
「ジーク!!もういいやめろ!!!」
ジークの元へ駆け寄ったミトは、ジークの右目から血が出ている事に気が付く。
「ジーク…!その目…!!」
そう言いジークの顔を覗き込むミト。そんなミトにジークは声を絞り出す。
「大…丈夫だ…!クク…こノ体……くそ!!ダ、大丈夫、だ…!!」
倒れこむレイルをリオンが支える。レイルは気を失っているようだった。
「おいおい…どうなってんだよこりゃ…!」
右目を押さえて呻くジーク。その異様な姿にリオンとミトは鳥肌が立つのを感じた。
「ミ、ミト…!今…この、右目…に!!悪魔、が…!入り込んで、から、俺…!こいつを抑え…こむ…!!から…!!」
その途切れ途切れの言葉にミトは必死に耳を傾ける。と、突然ふっとジークは膝から崩れ落ちた。肩で息をするジークを、ミトは支える。汗が止まらないジークの背中をさする。
「………これ…は…?」
目を覚ましたレイルが状況を把握出来ずにいた。が、元々頭のキレるレイルは直ぐに理解した。
「…まさか…私に悪魔が…あの声は悪魔で…!あの悪魔はジークの中へ入ったのか…!!」
「おうおう寝起きで訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇよレイル!どういう事だ!!」
リオンはレイルの胸ぐらを掴んでジークとミトを指差して怒鳴る。
「…私は……何ということを……。」
頭を抱えるレイルの手は微かに震えていた。
「まさか私が…!自分で生み出した悪魔に取り憑かれていたとは…!!」
現実を突きつけられたレイルの瞳からは涙が零れ落ちた。
「レイル、お前は賢い子だ。私の研究の手伝いをしてくれるだろう?」
物心ついた頃から聞かされていたその言葉は、幼いレイルにはとても冷たく感じていた。そんな親の言葉に、感情のない声ではい、と答える。いつもの事だった。
レイルの父、ヴァーデル・ロンドはそこそこ名の知れた研究員。薬品やロボットの開発を表立ってする中、その裏では人体実験を主とし、多くの狂人や獣人を生み出していた。そしてレイルは物心つく前からヴァーデルに道具のように扱われていた。24時間身動きを取れなくすると人間はどうなるか、人間の魔力はどこまで抜き取ると死に至るか、また他人の魔力を体内に入れるとどうなるか、様々な薬を使い様々な実験を行っていた。無理矢理実験をさせられ他の人間達が哀れに死ぬ姿を幾度となく見せられていた。しかし幸か不幸か、ヴァーデルはレイルを殺す事は絶対になかった。レイルはそんなヴァーデルの事が大嫌いだった。
渡された本を抱え、自室へと向かう為ヴァーデルに背を向ける。こんなくだらない実験や研究の勉強をする事は嫌いだった。魔法そのものが好きだったレイルはヴァーデルに隠れて魔法の勉強を続けていた。
「まぁ待てレイル。話は終わっておらん。」
早々に切り上げ、自室へ逃げようと思っていた矢先、ヴァーデルに呼び止められる。この時レイルは嫌な予感がしていた。恐る恐る振り返り、ヴァーデルの目を見て言う。
「…何ですか………?」
するとヴァーデルはレイルの肩に手を置き、笑顔で言った。
「私の為にお前の命をくれ。」
一瞬、息が止まる。あぁ、ついにこの時が来たか、とレイルは自嘲気味に笑った。やはり自分はそれだけの存在だったのだと突きつけられたようで、頭が真っ白になるのを感じていた。
「と、父さんだってな、息子にこんな事頼みたくはないんだ。しかし仕方のない事なのだ…!」
そんなヴァーデルの声など、その時のレイルには聞こえていなかった。
そしてレイルはヴァーデルの部下に全身を拘束され、台に寝かされた。そして何かを刺されたと思った瞬間意識を失った。




