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銀龍の風①

 夕暮れの風が、彼女の髪をくしゃくしゃと撫でた。


https://51629.mitemin.net/i1281570/


 チャミナは、とある建物を見上げていた。


 田舎から出てきて、都会ででっかく当ててやる!


 そう意気込んで故郷を飛び出した彼女が、冒険者として最初の一歩を踏み出す場所。


 世界最強のギルド――『銀龍の風』。


 今日は、その入団試験の日だと聞いてやってきたのだが……。


「なんか……ボロくない……?」


 目の前にあるのは、年季の入った木造の建物だった。


 とてもじゃないが、世界最強のギルド本部には見えない。


「あっちの建物と間違えたかな……?」


 ふと視線を向ける。


 一つ先の路地には、荘厳な石造りの宮殿にも似た建物がそびえ立っていた。


 どう見ても、あっちのほうがそれっぽい。


「でも住所はここだよなぁ……」


 手元の紙と建物を交互に見比べる。


 何度確認しても、書かれている住所は目の前の建物と一致していた。


「……ええい、入るしかないか!」


 覚悟を決め、チャミナは扉に手をかけた。


 ギィィ……。


 扉を開けた瞬間。


 そこには、所狭しと人がごった返していた。


 そして、開け放たれた扉に気づいた者たちが、一斉にこちらを振り向く。


「ひぃっ……!」


 思わず肩が跳ねる。


 だが、すぐに自分へ言い聞かせた。


 いやいや、私は冒険者になりに来たんだ!


 こんなことでビビってどうする!


 チャミナは震えそうになる足を必死に動かし、人混みの中へと進んでいった。


 そして、誰とも目を合わせないようにしながら、部屋の隅へと縮こまる。


 ……居心地が悪い。


 ものすごく悪い。


 できることなら今すぐ帰りたい。


 そんなことを考えていた、その時だった。


「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!!!!」


 狭い部屋にはあまりにも不釣り合いな怒号が響き渡った。


「こんなとこにガキが紛れ込んでるずぇーー!?」


 声の主は、巨大な身体をした大男だった。


 大男はズカズカとチャミナの前まで歩いてくると、上から見下ろすように睨みつける。


「ここが何処だか分かってんのか、チビィ!」


「…………」


「邪魔だから、とっととけぇんな!」


 怖い。


 ものすごく怖い。


 今すぐ逃げたい。


 だが――。


「邪魔なのは、そのデカい図体の方でしょ」


 チャミナは強気に言い返した。


「騒ぐんなら周りの迷惑だから、そっちが帰ったらどう?」


(うわーーん! 怖いよー!)


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