銀龍の風①
夕暮れの風が、彼女の髪をくしゃくしゃと撫でた。
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チャミナは、とある建物を見上げていた。
田舎から出てきて、都会ででっかく当ててやる!
そう意気込んで故郷を飛び出した彼女が、冒険者として最初の一歩を踏み出す場所。
世界最強のギルド――『銀龍の風』。
今日は、その入団試験の日だと聞いてやってきたのだが……。
「なんか……ボロくない……?」
目の前にあるのは、年季の入った木造の建物だった。
とてもじゃないが、世界最強のギルド本部には見えない。
「あっちの建物と間違えたかな……?」
ふと視線を向ける。
一つ先の路地には、荘厳な石造りの宮殿にも似た建物がそびえ立っていた。
どう見ても、あっちのほうがそれっぽい。
「でも住所はここだよなぁ……」
手元の紙と建物を交互に見比べる。
何度確認しても、書かれている住所は目の前の建物と一致していた。
「……ええい、入るしかないか!」
覚悟を決め、チャミナは扉に手をかけた。
ギィィ……。
扉を開けた瞬間。
そこには、所狭しと人がごった返していた。
そして、開け放たれた扉に気づいた者たちが、一斉にこちらを振り向く。
「ひぃっ……!」
思わず肩が跳ねる。
だが、すぐに自分へ言い聞かせた。
いやいや、私は冒険者になりに来たんだ!
こんなことでビビってどうする!
チャミナは震えそうになる足を必死に動かし、人混みの中へと進んでいった。
そして、誰とも目を合わせないようにしながら、部屋の隅へと縮こまる。
……居心地が悪い。
ものすごく悪い。
できることなら今すぐ帰りたい。
そんなことを考えていた、その時だった。
「オイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイオイ!!!!」
狭い部屋にはあまりにも不釣り合いな怒号が響き渡った。
「こんなとこにガキが紛れ込んでるずぇーー!?」
声の主は、巨大な身体をした大男だった。
大男はズカズカとチャミナの前まで歩いてくると、上から見下ろすように睨みつける。
「ここが何処だか分かってんのか、チビィ!」
「…………」
「邪魔だから、とっととけぇんな!」
怖い。
ものすごく怖い。
今すぐ逃げたい。
だが――。
「邪魔なのは、そのデカい図体の方でしょ」
チャミナは強気に言い返した。
「騒ぐんなら周りの迷惑だから、そっちが帰ったらどう?」
(うわーーん! 怖いよー!)




