2.『アビスから来た子供』
第2話!
その日も、いつもとおんなじだった。
朝、起きて、バラドの作った飯を食って、食器を洗って、本とペンを持って外に出る。あの木の麓に言ってルナと合流する。ルナの「私のほうがずーっと早く着いていた!」という謎の自慢話を聞きながし、一緒にルナの家に向かう。そこで一緒に勉強して、ルナの家族の手伝いをし、午後は外で魔法の練習。ルナはどんどん強くなっていく。レイも負けてられない。だが、制御石のことと、過去のトラウマのせいでまともに魔法を扱えない。それでも練習を続け、夕方に家に帰る。バラドが料理を3人分作っていて、ルナも逸に食べる。その後はルナの気分次第でルナは家に泊まるか、帰るか。
レイ17歳、ルナ16歳の毎日はそんな感じだった。
その日も、いつも通り外で魔法の練習をしていた。
あの日、あの子が来てから、レイとルナの生活はガラッと変わった。
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自分にとって、アビスは楽しい場所だった。様々な謎の現象が起きる場所、魔法の原点。そんな冒険のしがいのある場所はない。
あんなに自分の能力が使える場所もない。影と影の間を自由に潜って移動できる自分の能力が活かせられる。いや、楽しすぎる。
他の魔法使いや冒険者、浄化庁だってアビスでの探検は大変なはずだ。しかし、ミオにとってはイージーモード。怪物や異常幻象に巻き込まれること無く、様々な場所を探検した。さすがに最深部は政府の研究施設もあり、行くのは難しい。何をそこで研究しているのかは気になったが、今はスルーだ。
かわりに自分は誰も探索していない場所を冒険した。
そこで、見つけてしまった。
世界で初めて自分が見つけたのだから、これは自分で名前をつけるとしよう。名前をつけるとするならば、『記憶の泉』。うん、悪くない。
とにかく、そこは泉だった。タダの泉じゃない。声が聞こえるんだ。その記憶の泉に手を突っ込むと、どこからとも無く、自分の脳内に直接。声だけでわからないけど、誰かの声。聞いたことはないけれど、きっと、同い年、あるいはちょっと年上くらい。
『僕を殺せ!』『僕は、僕を許せない』『お前らも、すごく大事な僕の仲間、真剣組の仲間だ!』『あぁ、楽しかった。』『セラ、もう大丈夫だよ。』『死ねよ、緋ノ宮ラク!』『僕は僕だ!』『あぁ、知ってる。僕の妹だ、アカネ。』『ずっと、目を背けてきた。ごめんなさい、本当にごめんなさい。』『なるほど、カウンセリングだね。』『ユウリ、プロポーズの返事、するよ。』『...僕の怠惰のせいです。』『セラフィナ、愛してる。これまでもこれからも、ずっと。』『闇に、呑まれるなよ、少年。』『僕は罪人だ。英雄じゃない。』
とにかく、いっぱい聞こえてきた。悲しそうな声、嬉しそうな声、怒った声、その他、色々。
姿はわからないけれど、きっと優しい人なんだと思う。どんな見た目なんだろう。イケメンだったら良いな。
この泉、他の人の声も聞こえるのかな?色々試してみよう。そう思った時だった。
「見つけた、この泉か。」って声が聞こえたんだ。
まずいって思って影の中に隠れた。女の人だった。20歳くらい?間違いないのがその人が『浄化庁』であるということと、自分みたいな便利能力無しでココまで来たスーパー探窟家であるってこと。
浄化庁は自分の敵。バレルわけには行かない。まぁ、影の中に潜んでいる限り問題ないはず。そう思ってた。
「そこに誰かいるわね。」
そう言われて、いきなり閃光弾みたいなのを使ってきたんだ。影がなくなって、自分は隠れられなくなった。無理やり影から出されたんだ。
それで、まず言って思って必死に逃げたんだ。逃げて、逃げて、逃げて。めっちゃ追いかけてくるんだもん。しかもライトで自分をずっと照らしながら。角を曲がった時に影があって照らされる前に一瞬で入って撒いたんだ。それで、安心した。
今回バレたのはアビスに長く潜りすぎたと思って、地上に帰ることにしたんだ。影を伝って地上まで登って。で、お日様の下に久々に戻ってきた。そしてら、いたんだ。大勢の浄化庁が待ってましたと言わんばかりに。
本当に危なかった。なんとかそれも頑張って撒いて、森の中に逃げ込んで、船に密航して、街に来て。その後また森に潜って、ヘトヘトで歩いていったら森の中にお家を見つけたんだ。
そこに魔法の練習をしているお兄さんとお姉さんがいて。で、助けを求めたんだ。
「僕を助けてくれませんか?」
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いつも通りレイがルナと魔法の練習をしていたら、茂みの中から少年が出てきた。ちょっと赤っぽい色をしていた短い髪。体中傷まみれで、目も虚ろだった。
「僕を助けてくれませんか?」
彼がそう言ったので、レイとルナは助けることにした。
「ちょっと!大変じゃない!どうしたの?大丈夫?ちょっとレイ!アンタも速く動きなさいよ!バラド呼んできなさいよ!」
「わかってるって!」
ルナのほうが先に動いた。レイは頼れる大人、バラドを呼びに家まで走った。
「ちょっと、大丈夫?どうしたの?」
「僕、浄化庁から逃げてきて...凄く追いかけてくるんだよ、アイツら!僕を捕まえようとして!穢れた者だから...」
「今、頼れる大人を呼んでるから!もう大丈夫よ、私たちが守ってあげる!ところでアンタ、名前は?どこから来たの?」
「あっ、僕の名前はミオ!13歳だ!どこから来たって言われたら...アビス。」
「アビス?!アンタ、アビスから来たの?!」
少年はさっきまで虚ろだった目をいきなり輝かせた。
「うん!そうだ!僕はアビスを冒険していたすごい『穢れた者』なんだぞ!褒めても良いんだよ?」
「レイ、聞いた?この子、アビスから来たんだって!」
「ルナ、バラドのおっさん、作業中だった!あのおっさん、集中したらまったく聞く耳持たねぇからな。だから家から救急箱と水とパン持ってきた。」
レイはそう言いながら走ってくる。
「そんなことより、この子アビスから来たんだって!凄くない?凄くない?!」
「そんなことよりじゃねぇよ。先に治療だ治療。痛いところ無いか?」
レイはルナを無視して少年の治療をしようとする。
「...痛いところはないけれど....めっちゃ腹減った!」
少年は大声でそう言った。
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「で?このガキはアビスから来たのか?」
「ガキじゃねぇし、ミオだし!アムアム、ウメェなこれ!このパン気に入った!」
「ねぇ、アビスの話もっと聞かせて!もっと、もっと知りたい!」
レイ、ルナ、ミオの3人はそんな感じで会話をしていた。
「おぉ、今作業が終わった!レイ、ルナ、どうした?」
バラドが丁度いいタイミングでやって来た。
「おっさん!このガキが迷い込んだみたいで!身よりもねぇらしい!」
「ガキじゃねぇって!ミオだって!」
ミオはパンを口にほうばる。その様子をバラドはじっくりと見つめ、ミオの服の汚れに注目する。
「うわ、こりゃめっちゃ汚れてるな!おい!家で風呂を沸かしておくから入れてやれ!」
バラドは大きな声で叫び、3人に手招きした。
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「よし、風呂は湧いた。レイ、一緒に入ってやれ。」
バラドはレイにそういう。
「おっさん、このガキ...じゃなくてミオはもう10歳だ。一人で入れるだろう。」
「は、心配だろ。まぁ、そのちびっこが一人で入るというならそれでいいが。」
バラドとレイはミオを見つめる。リビングで椅子に座ってパンを食べながらルナも様子を見ている。
「ん?誰かと一緒に入って良いのか?じゃぁ、僕はあそこに座っている姉ちゃん、名前なんだっけ。と一緒に入りたい。」
「......はぁ?」
ふざけるなこのガキ。ムッツリか?ムッツリなのか?エロガキが!ルナの裸を見ようなんて!
「このエロガキ!ルナの裸をそんなに見たいか?駄目に決まってるだろ!一緒に入るなら男に決まってるだろ?」
レイはミオに半ギレだった。
「あのー、兄ちゃん、勘違いしているみたいだけど、僕、女だよ?」
ミオはすこし困り顔でレイを見つめる。
「...は?」
「別にツルペタでも、一人称が『僕』でも、僕は女だよ。紛らわしかった?なんなら、証拠見せようか?」
「悪かった悪かった!お前、女だったのか?ごめん、俺、勘違いしていた。」
レイは頭を下げてあやまる。
「なるほど、そういうことなら私、一緒に入ってあげるわ。ミオ、一緒に入りましょ?」
ルナは椅子から立ち上がり、ミオと一緒に脱衣所に向かう。
「覗いたらぶっ殺す。」
マナはそう言って脱衣所の扉を締めた。
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「......アイツ、女だったのか。クソガキだとばかり。」
「すまん、俺もそうおもってた。」
「おっさん、だよな!あんなツルペタなのが悪い!」
バラドとレイは会話しながら晩飯を食べていた。
「...ん?レイ、少し黙れ。誰か来る。」
バラドの一言でレイは黙る。たしかに、ザク、ザクと足音が聞こえてきた。
「......誰だ?」
バラドは魔法の杖を片手に扉の向こう側にいる謎の人物に言う。
「驚かせて済まない。警告しに来たんだ。」
扉の向こうから聞いたことのない声が聞こえた。
「要件は何だ!言え!」
バラドは荒々しく叫ぶ。
「...お前ら、『穢れた者』だろ。今すぐ逃げろ。ここに『浄化庁』が来るぞ。」
扉の向こうの人間はそう言った。
ミオは『樹冠祈願』でいなかったボクっ娘。ボクっ娘は可愛い。ボクっ娘は正義。




