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ハイレイ  作者: いれく
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1.『灰の手』

がっつりのファンタジーを書きたくなって連載、始めてみました!

 悲鳴が、聞こえた。


 最初は何が起きたのか分からなかった。


 なんでみんな悲鳴を上げているのか、なんでみんな逃げているのか、自分の身に何が起きているのか。


「穢れた者!」「何をする気?!」「許してくれ!」「昔から怪しいと思っていた!」


 なんだ、なんでみんな僕の顔を見て逃げる?


「うるせぇ!俺の自慢の息子にそんなこと言うやつはタダじゃ置かねぇぞ!」


 父親がそう言い返している。


「レイ!」


 大好きな声がした。


「私は、それでもレイのお母さんだから!」


 抱きしめられた。なぜ、母親がこんなに泣きそうな顔をしているのか、わからない。


 そっと、抱き返そうとした。それだけだった。ただ、抱きしめたかっただけだった。


 ゆっくりと、ゆっくりと母親の体は崩れ、灰になっていく。


「お母さん、か、体が!」


「レイ、大丈夫。大丈夫だから。」


 母親はそれでも、自分の頬をそっと撫でてくれた。


「お母さん!」


 母親は笑いながら、消えた。


「愛してる。」


 最期にそう言って。


「お母さん?お母さんっ!お母さんっ!」


 ただ、泣き叫ぶことしかできない。


 自分の身体の中から、なにかどす黒いものを感じた。悲しみとも、怒りとも言えない、だけどくらい感情。


「レイ!」


 父親が泣きながら叫んでこっちに走ってきた。


 それから後のことは覚えてない。


 目が覚めたら、村は更地になり、人影一つもない。


 少年が7歳の頃の出来事だ。



______________________________



「あー、これは派手にやったな、皆殺しじゃないか。」


 あれから1時間くらい経って、どこからとも無く声が聞こえてきた。


「君、相当強い『穢れた者』だね。」


 声がどこからするのか分からない。


「上だよ上。」


 見上げると、フードを被った青年が翼を生やして飛んでいた。彼はそのまま舞い降りてくる。


「...天使、さん?」


「どちらかと言えば悪魔だよ。」


 青年の顔は見えない。


「君は何が起きたかわかってないみたいだね。」


 青年は少年の前にしゃがんでそう言う。


「...全く...」


「だろうね。教えてあげようか?」


「えっ?」


「君が何をしたのかを。」


 少年はコクリと頷く。


「簡単に言えば、君はこの村の人間を皆殺しにした。で、きになるのはなんで皆殺しにしてしまったかだろ?君は『穢れた者』だったんだよ。」


 青年は不思議そうにする少年にそのまま語り続ける。


「『穢れた者』、要は魔法使いだ。君はちょ~強力な魔法を持っていて、それが発動しちゃったってわけ。その魔法がどんなものなのか僕は知らないけれど、村の人間がみんな死ぬほどの魔法だったんだよ。」


 そう言って青年は少年に手を差し伸べた。


「さぁ、逃げよう。」


「はい?」


 少年はいきなりの青年の提案に戸惑う。逃げる?何から?


「あー、そこも説明がいるか。えっとな、来るんだよ。『浄化庁』の奴らが。あー、『浄化庁』って言うのは『穢れた者』を排除する政府機関。アイツラも魔法使いなんだけど、神に忠誠を誓った奴らだ。で、君みたいなのを異端として捕まえて、こう。」


 青年は自分の首を親指でちょん切るジェスチャーをした。


「だから逃げよう。」


 少年は青年が伸ばした手を恐れた。手を掴もうとしない。


「何を怖がってるんだい?ほら、手を握って...」


 青年が無理やり少年の手を握ろうとした時、青年の手が崩れた。


 指先からどんどん灰に変わっていき、崩れていく。少年は怯えた目でそれを見つめることしかできない。


「...なるほど。」


 青年は3歩ほど下がる。すると体の『灰化』が止まり、青年の手は再生していった。


「...どうやって?!」


「期待させて悪いけど、もう灰になった人たちを戻すことはできないよ。僕は自分の体を再生させただけ。すでに灰になった人は戻せない。」


 青年はそう言ってポケットから綺麗な石がついたネックレスを出した。


「これを首にかけておくと良い。能力を封印できる。」


 少年は投げ渡されたそれを首にかける。少年が首にそれをかけた途端、青年が少年を抱き上げ、おんぶする。


「うわぁ!」


 崩れない。青年の体が。少年の目に涙が零れそうになる。


「しっかり捕まってな。振り落とされるなよ!」


 その涙は一瞬で無くなった。なぜなら次の瞬間にはこれまで体験したことのないほどの猛スピードで空を飛び抜けていたのだから。


「うわぁぁぁ!」


 青年は体から触手のように植物のツタを生やし、少年を背中に縛り付けた。


「来やがったな。」


 後ろに3人ほどの成人男性が同じくらいの速度で飛んで追いかけてくる。


「そんな速く飛んだらバードストライクしちゃうよー。」


 青年はそう言って指を三回ほどふる。するとどこからとも無く大量の鳥が現れ、男性の視界を遮る。1人、墜落していった。


「速度上げるぞ。」


 青年はさらに速度を上げる。風のような、とてつもない速度。少年はくらくらしてきて、意識を失った。





______________________________




「少年、大丈夫か?」


 少年が目を開けるとそこは森の中だった。青年は木の根本にすわり、少年を横にさせて見つめていた。


「まだ聞いてなかったね。君、名前は?」


 少年が目覚めたことを確認すると、青年はそう問いかけた。


「...俺は、ハイレイ。ハイレイって名前だ。」


「ハイレイ...面白い名前だね。漢字で書くと灰と零、か。」


「?」


「いや、なんでも無い。」


 青年は笑って少年の前にしゃがむ。


「いいかい?この山道を真っ直ぐ行ったら、森の中にぽっかり穴が空いたみたいな木が無い原っぱに出る。そこに一つのお家があって、そこに『バラド』っていう人がいる。その人の元を訪ねると良い。きっと君を匿ってくれる。そのネックレスを外したらダメだよ。バラドならきっと君の役に立つ道具を作ってくれる。バラドが外して良い、って言ったら外していいよ。」


 青年はそう言ってハイレイの頭を撫でた。


「僕らは『穢れた者』と呼ばれているけれど、穢れてなんかいない。これから辛いことも、苦しいこともあると思うけれど、きっと君を支えてくれる仲間ができる。君は一人じゃない、ということを忘れないでほしい。」


 そして青年は、何かを懐かしむように言った。


「闇に、呑まれるなよ、少年。」


 そう言って、青年は翼を生やした。きっとその場から去るつもりなのだろう。


「あ、あのっ!」


 ハイレイはとっさに言った。


「名前は、名前はなんだ?お前の名前はっ!」


 青年は少し考えるような素振りをして、口を開いた。


「そうだなぁ、名乗るほどの名前はないし、権利もない。『怠惰の闇』とでも呼んでよ。厨二病みたいだろ?だけど、僕にとって大事な称号だから。」


 その青年の顔は見えなかったが、声にどこか悲しさがこもっていた。


「じゃ、立派に育てよ。そして、『穢れた者』の高みでまた会おう。少年。」


 青年はそう言って夜の闇に消えていった。







______________________________


「すみません、バラドさんっていらっしゃいますか?」


 『怠惰の闇』に言われた場所にある、小屋の扉を叩き、そっとドアを開ける。


「なんだ?坊主。何しに来た?」


 バラドという男は、外見は40代ほどの男だった。筋肉がついており、黒いヒゲを蓄えている。


「...封印石、お前、このネックレスどこで手に入れた?!」


 バラドはいきなりしゃがんでハイレイにきいた。


「えっと...『怠惰の闇』って名乗っている人から...」


 バラドはその名前を聞くと一瞬目をぴくっと開かせた。


「なるほど、おおよそは理解した。お前の能力はどこから発動する?」


「えっと、手です...手で触れたものがサラサラって灰になって...」


「分かった。ちょっと待ってろ。」


 バラドは後ろの部屋の扉を開ける。そこには大量の鉱石が並んでおり、バラドはその中から水色に光る宝石を取り出した。そのまま隣の部屋に移動する。そこにはいかにもな鍛冶道具がならんでいる。バラドはハンマーを引っ張り出し、宝石を金床の上においた。


「この扉を開けるなよ。危ないから。」


 バラドはそう言って扉をしめた。






______________________________


 2時間ほどがたった。


「坊主、完成したぞ。」


 バラドは扉を開けた。バラドの手には2本の鉄でできた手があった。


「コレを手にはめろ。」


 バラドに言われるがまま、ハイレイはその鉄の手をはめた。


 すると鉄の腕はピシッという音と共にハイレイの腕にピッタリとはまった。


「滅多なことがない限りその腕ははずれん。ちょっとそのネックレスを外してみろ。」


「えっ?」


「いいから。」


 ハイレイは言われるがまま、ネックレスを外した。バラドはその瞬間、ハイレイの手に触れた。


「うわぁ!は、灰になっちゃ...わない...」


「はっはっは!どうだ、すごいだろ?この鉄の手にはな、『制御石』というものが埋め込まれていてな、それがあればお前の力が制御される。坊主が間違って人を灰に変えちまうことはそれをつけている限りなくなるってわけだ。」


 バラドは笑ってハイレイの頭を撫でた。


「俺が睨んだ通り、お前は『灰』の魔法を持っている。その魔法は灰を使って戦うことが出来る。たとえば、手をかざしてみろ。」


 ハイレイが手をかざすと、そこから灰がサラサラと流れ出た。


「この灰を勢いよく飛ばして灰ビーム、みたいなことも出来るだろう。」


 バラドはまた笑った。


「で、坊主、行くあてはあるのか?」


 ハイレイはハッとして下を向く。


「無いなら、俺の家に住むと良い。ガキ一人くらい、どうってこと無い。」


 バラドはまたまた笑ってハイレイの頭を撫でた。


「い、良いのか?」


「はっはっは!勿論だ!おっと、まだ名乗ってなかったな。俺の名前はバラド。ドワーフだ。一応『穢れた者』だ。お前は?」


「えっと...名前はハイレイ。7歳だ。」


 ハイレイとバラドは握手をした。





______________________________



 あれから3年が経った。


 ハイレイは10歳。


「おっさん、行ってきます!」


「おうよ、気をつけろよ!」


 ハイレイとバラドはすっかり親子のようになっていた。


 ハイレイは毎日外に出かける。向かう先は野原の真ん中にある大きな木。そこで、いつも待ち合わせをしている人がいた。


「遅かったじゃない。私のほうが10分も速かったわ!」


 ハイレイに向かって叫んだのは緑の髪をした少女。


 名前はルナ・クロウ。ハイレイの新しい幼馴染だ。


 彼女は何千年も、何万年も遡ると竜にたどり着くらしく、竜の血が流れているらしい。様々な魔法を使うことができる。魔法が使えるということは、もちろん『穢れた者』に分類される。


 バラドが住んでいるところから少し離れた場所に家があり、その家の子供だ。他にも3つ、『穢れた者』が住む家がある。このあたりは集落、というほどでもないが、浄化庁から逃げてきた『穢れた者』たちが身を寄せ合って暮らしているのだ。


「レイー、今日は何して遊ぶ?大魔法使いごっこ?」


「イヤダよ。どうせ俺に浄化庁の役をやらせるんだろ?」


「当たり前じゃない!私はいずれ世界一の大魔法使いになる女よ?おとなになったら浄化庁の奴らをみんなふっとばしてやるんだから!」


「俺は浄化庁の役なんかやりたくねぇよ!」


「しょうがないじゃない!あなたには私の『大魔法使いになる』って夢より大きい夢なんて持ってないじゃない!」


「はっ!あるしー!」


「何よ、言ってみなさいよ。」


「聞いて驚け?俺は、『穢れた者の高み』にたどり着く男だ!」


 ハイレイは自慢げにルナにそういった。


「...穢れた者の...高み?」


「そうだ、穢れた者の高みだ!」


 ハイレイがそういうと、ぽかんとしたような顔でルナが見つめてきた。しばらくして、ルナは突然笑い始めた。


「ぷーくすくす!あー、おかしい!なんて?穢れた者の高み?ふふっ、何言ってるの?おかしいたらありゃしないわ!くすくす!」


「おまえー!バカにするな!コレはな、『怠惰の闇』にそう言われたんだぞ!」


「『怠惰の闇』?あー、いつまでおとぎ話の中にいるの?ふふっ、あはは!おっかしい!」


「ホントだし!『怠惰の闇』って名乗る男に俺は助けられたんだ!」


「あー、もう、冗談やめて?面白すぎてお腹が痛いわ!ははは!」


 流石にバカにしすぎるルナに、レイは頬をふくらませる。


「バカにしやがって。そんなにおかしいかよ。」


「おかしいに決まってるでしょ!...もしかして、しらないのぉ?『闇』の物語。」


「知らねぇよ、何言ってるんだ?オマエ。」


「ふーん?じゃぁ分からないわねぇ。じゃぁ、教えてあげる♪」


 ルナは笑うのをやめて、レイの隣りに座る。


「普通に考えたら知らなくて当然だわ。だってあなた、『穢れた者』の家系じゃないものね。これから私が話すのは、『穢れた者』の家庭で語られる話よ。何百年も前の実話、らしいわ。」


 そしてルナは語り始めた。




______________________________



 昔々、それは浄化庁なんかが出来るよりも、ずーと昔。神話の時代。『闇』というものが存在しました。『闇』は全部で9種類。『虚飾』、『憂鬱』、『傲慢』、『嫉妬』、『憤怒』、『怠惰』、『強欲』、『暴食』、『色欲』の9つ。



『闇』というものは、それぞれの9つの罪が積み重なったものや、『闇』の力に魅入られたもの、そして心の何処かに大きな傷を負ったものに取りつくの。


 『闇』に呑まれた者は多大なる力を手に入れるわ。それは、一人で好きなように世界を変えられるほどの。


 さてさて、あるところに一人の『穢れた者』がいました。彼は元々、もう二人のお友達がいました。しかし、そのお友達二人は闇に呑まれてしまっていました。二人が闇に呑まれてからその『穢れた者』は二人を避け、その二人の悪さに目を背けていました。


 そんなある日、その『穢れた者』は4人の少年たちが『闇狩り』をしていることを知ります。


 『穢れた者』はそれを知って、今、自分が目を背けてきていた『闇に飲まれた者』たちを再び見つめる絶好の機会だと思いました。


 『穢れた者』はとっても強かったので、まずは自分の住処の近くにいた『怠惰の闇』に呑まれた男を倒しました。


 その後、4人の『闇狩り』たちと合流し、共に『憂鬱の闇』、かつての自身の親友の男を封印しいきました。


 激闘の末、『憂鬱の闇』を封印した彼らは、次に『嫉妬の闇』の元に行きました。その女は『穢れた者』のもう一人のお友だちで、お互い愛し合ってました。


 『穢れた者』はこれも激闘の末、『嫉妬の闇』を殺すことに成功します。


 『穢れた者』は彼女を殺す時に、最期、泣きながら抱きしめてキスをした、とも言われています。


 二人のかつての仲間を倒した『穢れた者』は、残りの闇は4人の闇刈りが殺してくれることを期待して、4人に別れの挨拶をしました。


 彼は一人になってから、自分の怠惰を悔やみました。自分の怠け癖のせいで二人の親友を闇に呑ませ、殺す羽目になったと。そして彼は闇に呑まれたわけでもないのに、かつて自分が倒した『怠惰の闇』を名乗るようになりました。


 その後、彼は封印した『憂鬱の闇』を一人にしないために死なずに生き続けることを決め、今でも生きていると言われています。




______________________________



「はいっ!おしまい!」


 ルナは物語を語り終えた。


 ハイレイは驚いた。


 やっと『怠惰の闇』の意味と彼の言った言葉、『闇に、呑まれるなよ』の意味が分かった気がした。


 あの男が本当に『怠惰の闇』だったのかは分からないが、そうだと仮定しよう。少なくとも『怠惰の闇』を名乗るということは過去に似たようなことがあったのだろうから。自身の怠惰で大事なものを失った経験が。


「どう?これであなたが言っていた言葉のおかしさが分かったでしょ?『怠惰の闇』ってのはおとぎ話の話よ。」


 ルナはそう言うが、ハイレイはむしろ興奮していた。


「俺は穢れた者の高みにたどり着く!」


 ハイレイは大声でそう叫んだ。


 ルナが、コイツ頭おかしいんじゃないかって顔でハイレイを見つめていた。

 新しい作品を作ってみました!『樹冠祈願』という別作品を連載しているのですが、それとこの『ハイレイ』という作品は同じ世界です。なので、『樹冠祈願』のネタバレ、みたいになってしまうので投稿ペースは『樹冠祈願』より遅いです。もう一個、連載している『トリフォリウム・ワークス』の方は『樹冠祈願』が完結しないとどうしても進められないので、マジで更新無いです。だから、僕の作品は『樹冠祈願』>『ハイレイ』>『トリフォリウム・ワークス』の順の更新頻度です。


 『樹冠祈願』の根本的な部分に触れる話を避けられなくなってしまった瞬間に物語の更新が止まると思います。


『ハイレイ』自体は『樹冠祈願』を読まなくても大丈夫な物語にするつもりです。


さてさて、以前から夢だったんですよ。一つの大きな物語があって、それと同じ世界の別の物語を書くことが。これは『樹冠祈願』のスピンオフであり、同時に独立した物語なんですよ。『樹冠祈願』のキャラとかもいずれ出てくるかも?


 結構、『樹冠祈願』の方で世界観は練ってるので楽に書けます。


『樹冠祈願』は現代風の世界の物語ですが、『ハイレイ』は中世の異世界のような世界。どっちが未来でどっちが過去かはいずれ、どちらかの作品で語るつもりです。


文章が荒かったりしますが、大目に見てください。


よろしければ『樹冠祈願』の方も見てください!お願いします!

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