Mission11:他プレイヤーとの接触
[やあ、傭兵諸君。
〈prosthesis gear〉の扱い方には慣れたかな?
諸君らの働きにより、〈仮降下地点 α 〉周辺の脅威
度は作戦開始当初に比べ大幅に低下した。
そこで我々〈ELO〉は、降下地点周辺の支配を盤石
なものとするべく、至上任務…以後は{ P - order }
とでも称しようか?─を発令することとした。
記念すべき最初の{ P - order }は〈仮降下地点 α 〉
に建設予定の地上前線基地、仮称〈 α ベース〉建設
の為のマテリア収集、及び指定エリア内の〈 AIM 〉
の掃討だ。
「至上」とは銘打ったが、これはあくまでも依頼に
過ぎなく、参加は強制では無い。
当然ながら、地上前線基地建設成功の暁には参加者
各員に莫大な報酬を約束しよう。
更に、特に貢献した者には特別な報酬を与える用意
もしている。
地上前線基地は傭兵諸君らにも有用だ。
是非とも、奮っての参加を期待している。
〔 6d/18h/45m 〕(※RT)
〔 60 - , - - - Mt/14,000,000Mt ~ 〕
〔 5.1 %〕 ]
(ふむ…。)
通知の内容を見る限り、このイベントはゲームの進捗により発生したミニイベントのようだ。
他のゲームで言うところの「ワールドクエスト」または「ストーリークエスト」というやつだろう。
【 prosthetic war 】の言い方に戻すと、今回のこれは{ P - order }のチュートリアルといったところか?
その証拠にイベント期間はリアル一週間とMMOにしてはやや短く感じる期限だが…ゲーム内時間で20日以上あると考えたらまずまず。
更に、成功条件に示されたマテリア最低要求値は14Mと莫大…に思えるが、一人当たりで1,400Mt─1日当たり〈RHラビット〉20体分とかなり「Easyモード」だ。
実際イベントの開始からまだ6時間経っていないというのに、既に7時間分以上のマテリアが集まっていて、今も尚かなりの勢いで増加している。
掃討率に至っては9時間分に届く間際であり、廃人プレイヤー達がスタートダッシュを決めている様子が伺える。
…まぁ、廃人プレイヤーなんてプレイヤー全体の1割もいないだろうし、健康的な生活を送るとしたら「1日当たり〈RHラビット〉20体」は妥当な目標値だろう。
かく言う俺は廃人プレイヤー側であり、スタートこそ出遅れてはいるものの、割り当て分だけなら1日で余裕を持って達成可能だ。
次回の降下からはPK対策に自前で弾を持ち込むつもりなので、1日の稼ぎはこれまでより減るのは確実だが、それでも1日の稼ぎが1,400Mtを下回ることは無い筈だ。
掃討率とマテリアの収集率を比べるとマテリアが不足しているようだが、これはゲーム。
エリアの〈AIM〉掃討率が100%となったとしても、そのエリアにMOBが出現しなくなる…なんて心配はするだけ無駄だろう。
またマテリアは、現状それが可能であるのは〈クラフター〉に限られるが、フィールドからの採取が可能。
つまりマテリアの枯渇は、今のところ心配しなくても良いということだ。
「…うしっ!
ツクヨミ、『エントリー』だ。」
『音声認証、確認。
降下待機時間0、出撃します。』
─ Now Loading … ─
ヒュー…、ズドンッ!
『ピピッ』
[AMMO]→
地表に無事落下したドロップカプセル内で、いつものように〈トルバーⅠ〉を手にすると、電子音と同時に矢印が視界に表れた。
矢印に従い矢印が示す場所を見ると、そこにはいつもと異なり白い太字で「AMMO」とだけ書かれた黒塗りの箱があった。
シュン…
『大型弾×30を拾得しました。』
俺が手を伸ばし指先が触れると弾薬箱は光の粒子となって消えてしまったが、ツクヨミのアナウンスで持ち込んだ弾を無事拾得出来たことを知る。
自分で用意した弾なのに「拾得」と、拾い物扱いに俺は苦笑いを浮かべた。
そんな一幕が先にありつつも俺はいつものように、ドロップカプセルの搭乗用扉の内ハンドルを回す。
ガコンッ、パシュッ!
すると、勢い良くぶっ飛んで行く搭乗用扉。
物好k ゲフンゲフンッ!…検証班が調べたところ、この扉には僅かながらダメージ判定が存在するようだ。
よいプレイヤーの皆は決して、降下したてのドロップカプセルの扉の前に立ってはいけないぞ!
(えっとAAナイフは…、っとここか。)
戯れもそこそこに新装備の位置を確認すると、人体で言う鎖骨の窪みの辺りに、左右一本ずつ装備されていた。
装甲を兼ねた鞘のせいで若干首が動かし辛くなり、外見的には頭部が僅かに胴体にめり込んでいるように見えることだろう。
しかしその変化はチェリハ乗りの俺だからこそ気付ける変化であり、他の義体を使うプレイヤーには「そういうデザイン」と受け取られるだろう…と俺が思うくらいには外観に変化が無い。
〈増加装甲〉は明からさまな程に存在を主張していたが、外観の変化が少ないのは都合が良い。
…まぁ、チェリハが元よりゴツい外観だったことも外観に変化が少ない理由だろう。
「肩にナイフを載せて、何故背面まで硬くなるのか?」という点に関しては、「ゲームだから」としか言えない。
物理エンジンや設定は凝んでいる癖に、こういうところは変にゲーム的なのも【 game form 】クオリティだ。
そんなこんなで、変化点の確認を終えて─
シュボッ…、チュドーンッ!
シュボッ…、チュドーンッ!
─ひたすらクソウサギを爆殺すること15体。
ガシュン、ガシュン
『ピピピ!』
(ん?)
次の獲物を探してぶらついていると、いつもとは異なる電子音が鳴る。
気のせいかと俺は思ったが、ツクヨミのアナウンスで「気のせい」では無いことがすぐに判明した。
『マスター、此方に〈prosthesis gear〉が接近中。
数2、…警戒して下さい。』
どうやら他のプレイヤーと鉢合わせたようだが、アーサーを意図せず爆殺した時は特に通知は無かった筈だが?
ミニマップに表示される2つの光点の方を向きつつ俺が内心で首を傾げると、ツクヨミが苦々しく言う。
『…以前はレーダー範囲外から急接近されたので。』
(なるほど…。)
確かに〈チェリハーパ〉は他の義体よりも目、特に対空レーダーの性能が良くなかった。
それに〈ポラリス〉の全速力が悪い意味で噛み合ってしまい、警告する間も無かった─というわけか…。
(ホントにリスはチェリハのメタだな。)
速度にレーダー性能で〈チェリハーパに〉大幅に勝り、〈トルバーⅠ〉に次ぐ火力の初期装備─しかもスナイパーライフル。
弾は1スタックはキャパシティに影響しないため素ペック上では、チェリハはリスにレーダー範囲外から一方的に撃たれる運命にあるのだ。
この前の一件でそのことを理解したツクヨミであったがどうやら納得はしていないらしく…以降、レーダーの反応に目を光らせているような節が見受けられている。
まぁ…レーダーに齧り着いたところで、そのレーダーが劣っていては仕方ない…と言うのは野暮というもの。
ツクヨミはレーダー性能が悪いのを分かった上で、俺のプレイスタイルを尊重してやれる事を全力で努めているのだ。
(全く…、俺のサポートAIは最高かよ。)
此方に近付いて来る他プレイヤー2人が接触してくるのを待つ間、警戒するツクヨミに「未知の物におっかなびっくりな子猫の姿」を重ねて和む俺であった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、☆、いいね等、執筆の励みになります。
「面白かった」「続きが気になる」という方は是非、評価の方よろしくお願いします。
感想、レビュー等もお待ちしています。




