Mission10:戦いに備えよ!
意図せずPKを行ってしまってから、その回の弾を使い切ってマイガレージへの帰還後。
俺はそれまで使わずに溜め込んでいたカスタムチップを使って、〈チェリハーパ〉を強化することを強いられた。
というのも、俺が意図せずにPKしてしまったアーサーというプレイヤー。
彼は相当量のマテリアを溜めていたらしく、〈エクスカリバー〉なる明らかなレア武器を獲得するのを遠慮した筈が、俺はPKの戦利品として5,000Mtも獲得してしまったのだ!
加えてアーサーは義体の回収&修理費用として、半減した所持Mtから更に3割をロストする。
…もし俺がアーサーの立場だったら普通にキレる。
しかし俺に幸いだったのは、今回のPKにより何らかのペナルティが公式的には発生しないということだ。
動揺する俺を他所に、ツクヨミが運営─このゲームでは〈ELO〉に問い合わせたところ、「PKの瞬間の映像から俺に過失が認められなかった」とのことだ。
PKも遊び方の一つとは認められているが、やはりゲーム的にも世界観的にも何らかのペナルティは有るということなのだろう。
公式的には無罪判決の俺が「何故慌てて自己強化を図る必要があるのか?」と言うと、無罪なのはあくまでも「ゲーム的なペナルティは無い」というだけであり、復讐やPKKの対象から外れるわけでは無いからだ。
…失礼ながらアーサーは、レアMOBを横殴りしようとする程度にはマナーが悪く、そういう輩は証拠があろうと自分の非を認めようとしないだろう。
そんな奴にキルされるのも癪だし、PKという行為だけで悪と断じる正義厨の欲求を満たしてやるのも御免だ。
…まぁ、いい加減「初期スペックのままでプレイし続けるのもどうなのか?」と思い始めていたところだし、今回のPKは良い機会になったと割り切ろう。
ということで、強化の結果をドン!
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・耐久値 :200 (+2)
・E N 値 :160
・ブースト :速度+60%・バーストダッシュ
・ 出力 :6 (+1)[ capacity:67%]
・ 装甲 :8 (+1)
・機動力 :4 (+1)[評価:1]
・探知範囲 :空 3
陸 4
地下 4
水中 4
・装備 [右腕]
・〈トルバーⅠ〉( capacity +20%)
[胴体](装甲+2)
・〈装甲内蔵アーミーナイフ〉
( capacity +2)
・〈装甲内蔵アーミーナイフ〉
( capacity +2)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
カスタムチップを5枚消費して耐久面を強化したところキャパシティや、評価は変わらず1のままであるが、速度も若干伸びた…筈。
そして3,000Mtで売られていた〈装甲内蔵アーミーナイフ〉を2本装備することで、[胴体]に限っては装甲値が圧巻の10となった。
〈装甲内蔵アーミーナイフ〉を2本も装備したことで、せっかく30%に下がった速度の低下率が50%と元通りになってしまったが、むしろ「俺の義体が未強化である」と誤認…させられるか?
「…これであっさりやられたら泣くぞ?」
『カスタムチップを5枚しか使っていないのに、何を言ってるんですかマスター…。』
「何を言っている?」は俺がツクヨミに言いたい。
確かに俺が持っていたカスタムチップの枚数は、信頼感アップの際に貰った+購入分+レアMOBドロップを合わせて22枚。
残りが17枚と聞けばツクヨミが「5枚しか」と言うのも納得かもしれないが、それは甘い。
22枚中の5枚は割合で言うと凡そ4分の1、スーパーで売られているお高い肉が25%割引になっていたら、迷わずカゴに入れてしまわないだろうか?
…つまりはそういうことなのだ。
(取り敢えずこんくらいで良っか…。)
【 prosthetic war 】では「信頼度」─別のゲームの大半では「レベル」と表される数値は、掲示板で把握出来た中では最大で7だった。
俺だけが廃人プレイしているとは思えないが取り敢えず強化値7を基準とすると、チェリハの硬さと〈トルバーⅠ〉の火力があれば+5の強化でもそうそう殺られはしない筈。
…まぁ、いくらキルされるのが癪とは言っても、ゲームである以上「無敗」は有り得ない。
それこそ俺並みの廃人プレイヤーにキルされるなら、俺はその努力を称賛しよう。
たかが「信頼度7」で「スゲェ!」等と騒いでいるような連中が、安い正義を振り回して来た時、「俺と殺り合うのは割に合わない」と思い知らせられたら、それは俺的には“勝ち”なのだ!
『マスター…、性格悪いって良く言われません?』
「んなっ!?俺の心を読んだだと…!?」
『…いえ、普通に声に出てましたよ?』
「なんだ…、ふぅ。」
(焦った~…。)
思考操作が実用化された時から現在に至るまで、「個人の思考のハック」が一定周期でネットで騒がれるが、陰謀論的なそれが現実になったのかと思った…。
(しっかし…、珍しいな?)
俺からアクションを取らなければ、ガレージでは基本的に黙りのツクヨミ。
俺の独り言に反応したのかと思えば、どうやらそれは違うらしいことが直ぐに分かった。
『そんなことより、マスター。
〈ELO〉より{オペレーション:R t E}の参加者各員へ向け、全体通知が届いています。』
(おっ、遂に来たか…!)
ツクヨミが俺に告げたことを分かり易く言うなら、【 prosthetic war 】運営からの「お知らせ」である。
サービス開始から一週間。
廃プレイヤーには、ひたすらウサギ狩りをする作業ゲーと化してきた【 prosthetic war 】が、ようやく変化の兆しを見せたのであった。
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