第10話 成長
第10話 一段落
俺と母さんの喧嘩は一段落した。何年もかけた割にはあまりにもあっさりしていて正直腑に落ちてない感覚はある。と同時に考え込んでしまうことが1つある。仮に母さんがあのときのままだったとしたら、俺は一体どうなっていたんだろうかと。またあのときと同じようになってしまうのではないか………と。リビングで1人考えていた。
「亮太?」
聞き慣れた声が耳に入ってきた。
「沙奈………俺さ、成長してるのかなって。」
「どうかしたの?」
「いや、なんか振り返ってみると俺って助けられてばっかりだなって。なんか………昔から一切変わってない感じがしてさ。」
「そんなことないと思うけどな。私は亮太に支えられてきたし少なくともこの4年で成長してると思うよ。」
「そっか………ありがと。」
口ではそういったものの、やっぱり引っかかっていた。俺は本当に成長したのか、なんて自分じゃわからない。だから沙奈の意見は1番説得力があるが………今回に関して問題はそういうことじゃない。俺はちゃんと向き合えるようになっているのか。そこだ。なんと言うか俺は………焦ってる。劣等感を感じてる。沙奈に対してのものだろう。俺の中で沙奈は比較対象になっていた。自分を図るものさしと言ったらいいだろうか。それで基準を決めていた。だからなのだろうか。なんだか少し寂しいような気がする。
「ん、まだ気にしてるねその顔?」
「そりゃあ………気にしてるよ………この前言ってくれてたよな、昔の俺は一体どこに行ったんだって。もう一度………変わりたいんだよ。今までみたいな風じゃなくてさ、もっとちゃんと強くなりたい。」
「なるほど………でもそんなに急に変われるようなもんじゃないし、それに………ちゃんと向き合えてるじゃん。」
「そうかな………?」
「そうだよ。亮太はちゃんと問題と向き合って解決しようとしてた。そりゃあ昔みたいに向こう見ずな性格もかっこよかったけど、今の亮太も好きなんだよ。多分今の亮太ならちゃんとできてたと思うよ。なにせここ4年ほぼ毎日亮太と関わってきた私が言ってるんだから間違いない。亮太がどう成長してきたかは私が1番知ってるんだから。」
「………それなら…いいな。」
「もう、うじうじすんな。ほら思い出してみな。亮太は私に告白する時なんて言った?ほら付き合ってって言った時。」
俺が沙奈に告白した時………『結婚は俺がちゃんと生活できるようになったら、そのときにプロポーズさせてくれ。』
「………ちゃんと…生活できるようになったら………。」
「そう。亮太はそのちゃんとにどんな意味を込めたの?」
俺があの時『ちゃんと』の一言に込めた意味。金銭的な意味もそうだが………もっと他にもある。
「………今よりももっと成長できたら………強く成れたら………。」
「でしょう?で今私たちの関係性は?」
「夫婦………です。」
「そう。つまり私達は結婚した。それは亮太の中で覚悟がついたのと同時に亮太が自分の成長を感じ取ったからじゃないの?」
「………それは………そうかもしれない。」
「でしょう?亮太自身、自覚はないかもだけどさ気がついてるんじゃないの?それともあの台詞のほうが嘘だった?」
「あの言葉が嘘なんてことは無い………それだけは絶対に。」
「じゃあ成長したんだよ。そうでしょう?」
「あぁ、そう、だな。うんありがとう。元気出てきた。」
「その粋だよ。それでこそ、亮太だよ。さてと元気が出てきたならそろそろ本題に入りましょうかね。」
「本題?」
「そう、ちょっとお話があってね。前言ってたじゃん、コラボの話。」
「コラボ………するの?」
「したいなぁって。それで誰がいいかなって、まずは話し合いかと思ってね。」
「なるほどな。誰がいいか………。」
「まずそもそも繋がりがそんなに無いんだけどどうしようかな?」
「………え?繋がりがない?沙奈今お前のチャンネル登録者って?」
「二十万はとっくに超えてる。」
「そろそろ繋がりがあってもおかしくはないと思うんだけど………でもそうか。今までのメインだとASMRとか雑談とか歌枠とかか。ゲーム実況とかもやったことなかったもんな?」
「そうだね。全く。と、言うか1回もなかった。」
「なるほど………にしたってそんなに絡み少ないものかね。」
「まぁ、そんなもんなんじゃないかな?って言っても私から声かけていくのもな………どこも浅い人ばっかりだし。」
「難しいよな。俺もなにかいい案があるわけでもないし………。」
どうにかコラボができないものなのか思案するもやはりいい案は思い浮かばずじまいだった。やはり保留か………。
「ともかくまずは声をかけられないとな。繋がり浅いって言ってるけどどのくらいなんだ?」
「うーん………たまに話すくらい?」
「………それでも十分じゃない?」
「え、そうなの?」




