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第八話

 膝を上げる体重を出来る限り減らし、踏み下ろす足は体重を出来る限り増やして走る。


 その軽いクラウチングをとってからの軽重けいじゅうの付いたスタートは、自分が見下ろしている場所でもオルナを目立たせる。


 こういった強者がいれば、この現場はすぐに終わるだろうと思えた。


 「しかし、本当にお強い、ですがあんな姿で…」


 だが本来なら先頭を切って戦う彼女が無いので、探しているとレフィーユは、ずっと様子を伺っているのが見えた。


 そのためか簡単に自分と見つけ、目が合うと彼女はサインを送って、専用の通信機に通信を入れてきた。


 「どうしたのですか?」


 「いや、違和感があってな」


 「違和感?」


 改めて眼下を見下ろす。


 戦うオルナが、更なる攻勢を見せる。


 そんな中で、両校の治安部が戦っている。


 最初は二校が入り乱れている事に違和感があるのだろうかと思いもしたが、


 「やはり武道の時間にも感じたが、あちら側は東方術者が少ない」


 「ですが、それを補って余りあるオルナさんの戦闘力のおかげでレフィーユさんが参加しているのと、あまり変わりないですよ」


 「変わりないのは、おかしい。


 前に高い検挙率を誇っていると言ったが、私と同じ方法なら、オルナ達は東方術者が少ないのにどうやって、検挙を上げていると言う?」


 その時、オルナがレフィーユに駆け寄って叫んだ。


 「おい、レフィーユ、お前達の部隊を下がらせろ!!」


 「何?」


 「いいから、後はゼジに任せろ」


 その通信を拾って、ちょうどモブの大方が通りの方に逃げ込もうとした時、レフィーユがその先にいる他の治安部員が整列していた事で気付いたのだろう。


 「まさか!!


 皆、下がれ!!」


 自分に構わず叫んだ、その瞬間だった。


 「うわあああああ!!」


 この叫びがモブ達のモノか、避難している人達のモノかわからなかった。


 西方術者達が協力して放った火の玉が、その逃げたモブに放たれたのだ。


 炎だけならまだ良いだろう。


 集団に向けての電撃、動きを束縛するための強風、そこに向けての氷塊が彼等が逃げるであろう道を完全に塞ぎ、彼等を殲滅させる。


 「おい、止めさせろ、周りに被害も出てるぞ!?」


 その光景は街路樹も燃やされ、慌ててモブが避けた氷の玉が止めてあった車に直撃するなど、あまりにも無残だった。


 レフィーユの悪態には怒り混じっていたのは言うまでも無い。


 「こういう事か…」


 「レフィーユさん、これは?」


 「鎮圧の方法には二つの手段がある。


 一つは私達がいつもやっている、東方術者を中心にして行う鎮圧の方法と。


 もう一つは、西方術者を中心にして行う。


 この方法だ…」


 「ですが、これは…」


 身体に火が付いて転げまわっているモブを見て、戸惑いを隠しきれない現場がそこにあった。


 「わかってる、周辺地域の被害を省みない。


 私も避けた方法だ。


 ヤツらは、やってはならない事を選んで…」


 「検挙率の高い理由が、わかった気がしますよ」


 その時、モブの一人がレフィーユのいる辺りにやって来た。


 明らかに逃げる理由が、最初と違っていた。


 「このぉ!!」


 しかし、オルナがそれを許さず。


 「やめろぉ!!」


 レフィーユの静止ごと、相手を殴り飛ばし、さらに上に跨って止めの一撃を加える。


 その上がった手は、投降の意思があったのが見て取れた。


 「不服そうだな、レフィーユ?


 だが、私達はお前ほど実力がないんでね」


 「だから、お前達は、こんな方法を取ると言うのか?」


 「これが私達のやり方だ」


 レフィーユはじっと、先ほど殴り倒されたモブの方を見た。


 そこには彼だけでなく、他のモブ達も逃げて来たのだが…。


 今度はアズ達がそれを許さない、叩き伏せるその表情には笑顔が見えていた。


 「犯罪者にも与えて良い情は、あっていいはずだ」


 「犯罪者に情があってたまるか。


 あいつ等は、それくらいの事をやった、当然の報いだ。


 それくらいの覚悟が無いと、知らしめれば、犯罪者も犯罪に手を染めようと考えないだろう」


 「守らないといけないモラルくらいあるはずだ!!」


 「そんなモノを守って、治安なんか守れるか!!」


 さすがに両校の生徒が、この言い争いを止めようと囲みはじめていたが、オルナはレフィーユに対し、踵を返して言った。


 「どうして、あんたが今まで魔法使いを捕らえられないか、わかった気がするよ」


 凄惨な状況はまだ続いている。


 「レフィーユさん、これが私達のやり方なんです。


 貴女ほど指揮能力が高ければ、こういうやり方は避けたのかもしれませんが、この方法で私達は成果を上げてきた結果なんです


 みんな、治安を維持しようと一生懸命なんです」


 その時のゼジの通信は冷さを感じたのが印象的だった。


 アズはもう戦う気のないモブに、攻撃を加え笑顔だった。


 「こんな事…、私は認めん…」


 レフィーユは避難している人を見た、その人が危険なモノを見る目は、明らかに治安部だった。


 それを見た自分は、大きく深呼吸すると『彼女』は背後に立っていた。


 「私の出番のようですね…」


 振り返るとそれはいない。


 「すまん、お前を魔法使いにしてしまう」


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