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第十四話

 「…それでは失礼する」


 私は頭を下げて、その家を後にするとユカリが手を軽く振ってこちらにやって来た。


 「お姉さま、こちらの方は済みましたわ」


 「ユカリ、ご苦労だった。


 残りは私がやろう、もう今日は上がっていいぞ」


 そう言って、ユカリを労い、帰らそうとするが…。


 笑顔を浮かべユカリは私の隣を歩くので、付き合うつもりなのだろう。


 放課後、私達は先の事件で治安部員が起こしたであろう被害者が出した届け出に対応していた。


 こうして、その被害者の自宅に向かうなどして苦情を聞いてまわるのだが、実際はそこまで咎められない。


 それには自分より年下の人間が、最前線で治安維持活躍しているという事が理由として大きいのだが…。


 今回、この作業にはユカリはボヤく。


 「ですが、ここまで多いと、さすがに疲れますわ…」


 無理も無い。


 「西方術者を中心とした治安維持とは、被害届けが増える傾向にあるらしいな」

 

 さすがの私も、この物量に台詞が皮肉めくほどだ。


 「何もお姉さまもやる、お仕事ではありませんわ。


 ガトウやイワトにお任せすれば、事情を納得してやって下さりますよ?」


 「ふっ、今の私達がいる日常と言うのは『犯人は超能力者だ』という。


 そんなマンガのような要因が、まかり通る日常でもある。


 全てを見ておく事というのは、治安部のリーダーとして、大事な義務だ」


 ちょうど高台に差し掛かったところで、少し強めに言ってしまったおかげで。


 「すいません、お姉さま」


 ユカリを謝らせてしまった。


 なので、私は首を振りながらユカリに言っておかなければならない事を伝える事にした。


 「謝るのは私の方だ。


 アラバの実力を見せるために、お前を見せしめにさせてしまった。


 すまなかったな…」


 「お姉さまぁ…」


 すると一変してユカリの目がキラキラして、私を見たので機嫌が直ったのだろう。


 「……」


 うん、少し、悪寒を感じる視線ではあったが…。


 私は気を取り直して、周囲を眺めていると、今度はユカリが聞いてきた。


 「ところでお姉さま、さっきからキョロキョロしていますが一体?」


 「ああ、こんな大した物量の仕事があるというのに、あちら側の治安部の姿を一向に目にしないのが、気になるのでな」


 そういえばとユカリも改めて周囲を眺めるが、その疑問はあっさりと解ける事となる。


 「まさか、先生方がな…」


 そう示すように、フォード学園の教師が、先ほどの私のように頭を下げているのが見えた。


 しかし、その姿は私の中にあった疑問がさらに膨れ上がる事となる。


 「あ、ええ、まあ…。


 生徒達はこの町を守る事に専念してほしいですから…」


 その教師の少し戸惑う表情に、私はどうしても確信を持ってしまう。


 「その割りには、生徒達の自由意志を尊重しすぎているようには見えるが?」


 やはりこの質問は、教師を黙り込ませてしまうのだろう。


 「すまないがオルナが、東方術を使って手合わせをしたいと申し出た時、貴方の後ろ姿を見た事があってな。


 あの応急処置の授業の時も、印象深かった。


 怪我をする可能性だけは避けないといけないというのに、自由意志の尊重とはよく言えたものだな?」


 「そ、それは、さっき言ったように自由意志を尊重してて…」


 「秩序を無くした自由など、ただの無法だ。


 教本どおりの言葉を言うかもしれないが、あの時、私は咎められるトコロまで覚悟はしていたほど、注意しなければならない場面だ。


 『何もしない』というのは教師の役目と言えるのか?」


 あえて先ほどの被害届けを見せて言うと、完全に教師が沈黙する。


 それにユカリは苛立ちを見せて、


 「黙っててはわかりませんわよ」


 強気に出るが、経験上、こうなると黙り通されてしまう。


 だが私も何も言わず、その教師の持つ被害届けを数枚取ると、私も引き下がる気は無いというのが見て取れたのだろう。


 「取り引きですか…」


 「私は何も言ってはいないさ。


 ただ、こういう事を自由意志の意思の尊重だと思わないか?」


 だが、その教師が周囲を眺め言った事は…。


 「どう思いますか、お姉さま?」


 「ふっ、ほとんど信用出来ん」


 ユカリは予想外のような顔をしたが、私からしてみれば、その一言で片付いた。


 「まず、あの西方術者を中心とした治安維持の方法に関しては、『ゼジ』が考案したモノであるという事。


 この届けを見て、それを仕方ないとしたのは『ゼジ』の指揮能力が問題があると言った。


 そして教師陣が、その後始末を仕向けたのは『ゼジ』の指示によるモノという事だ」


 「文句や責任は全部、ゼジが引き受けるって事ですわ。


 いかにも治安部のリーダーらしい態度というのでしょう」


 ユカリはそう評価をするが、実際はそうではない。


 全部ゼジが『こう言え』と指示を出しているのだ。


 だから会話の中に『名前』が、頻繁に出て来るが肝心の話す人物が評価する言葉が一切、出てこなかったのが良い証拠だった。


 「全く、気味の悪い話だ…」


 そこで気味の悪い話で、気になる事をさらに思い出す。


 オルナの頭痛に関して、聞いた時に出た教師の台詞だった。


 「それは少しわからないのですが…。


 最近、多く見られるますね…」


 自分の生徒を、まるで他人事のように言うので少し睨みつけてしまう。


 「い、一応、医者に精密な検査を受けさせたのですよ。


 ですが、異常も見られないワケで…。


 彼女もあの通りですし…」


 その時と同じ様な風が吹いた。


 「ですけど、それからでしょうか…」


 「どうした?」


 「いえ、これこそ教師が言うような話ではないのですがね…」


 先程の態度とは、うって変わって遠慮がちに目配せするのが、とても印象的だったので、構うことないと聞いてみると、とても真剣な顔で耳打ちをした。


 「私等の周りに何でしょうか、何かがいるような気がするんです」


 その時、不意にオルナが頭を抱えた場面が嫌でも思い浮かんだ。


 「何かとは?」


 魔法使いは空を見上げ、


 「振り返ると、何か…。


 誰かが見ているような気がするんです」


 アラバも後ろを振り返っていた事も。


 「ふっ、得体も知れないのは、相変わらずか…」


 当然、ユカリは私の心境をわかるわけも無く。


 「では、この残った仕事を、早く済ませてしまおう」


 「はい、行きましょう、お姉さま」


 頷いたので、私は更にかさ張った届け出の半分をユカリに手渡した。


 「何だ、作業は効率良く行わないといかんだろう?」


 何故か、ユカリは不満そうだった。 

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