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第十話

 そして、一連の騒動にさすがにレフィーユは疲れを見せていた。


 西方術者を中心にした、治安維持。


 それは周辺被害を顧みない手段であると、前に彼女は言ったが、その通り事後処理は大変だった。 


 そのため彼女が帰って来たのは深夜になり、この苗木旅館にある温泉で疲れを癒していた。


 「ふう…」


 学園にある大浴場とは違う独特な開放的な持つ湯船に、そこから醸し出す温泉独特の風景と香りと共に、レフィーユはようやく癒しを得たが、ご立派な職業病である。


 彼女がタオルで頬を撫でる頃には、脳裏で一つの資料を開いていた。


 『XX12年度、事件、事故の概要


 資料提供元 フォード学園 治安部


 〇月△日 〇〇ビル落下事故


 同日の午後3時頃、一人の少女が前記の飛び降りたという通報から事件が発覚した。


 被害者名 ジーナ・パート


 捜査当時、そのビルは誰でも入れるような環境であり、屋上まで簡単に来れるような環境であったため、被害者と記す。


 そして、捜査を自殺と他殺、両方で行うためである。


 捜査は彼女の通う苗木町にある中等部、怨恨関係は見あたらなかった。


 外傷は落下の際に出来た全身打撲、それ以外の外傷も見られず。


 様々な要因が考えられたが、XX12年度、当時、フォード学園治安部は警察と同じ様に治安部も彼女は自殺と仮の判断した。


 しかし、この調査は身内関係者、その学園の関係者達が情報を収集し続けていたと見られ。


 この事件は、ある人物が関わっているのではないのかという可能性が浮上した。


 指名手配犯 漆黒の魔導士である。


 この人物(プライバシー保護のため匿名とする)の情報によると、屋上には黒ずくめの人物が立っていたとの事で、可能性を挙げたのだが。


 時間軸的に、この事件を皮切りに彼の出現を考えたとすれば、拭いきれない可能性だからである。


 映像だけで実際には見たことは無いが、彼の風貌はその情報と告示しており、今後も調査が必要と思われる。


 -現在でも調査は継続中である』


 「身内関係者に学園関係者…。


 オルナと誰だ?」


 レフィーユはオルナの事を思い出し、やはりアラバの事が気になった。


 全く同じ戦法を取った時、アラバは別の方を見上げ、そのビルの名前は先ほどの資料と同じだった。


 考えれば考えるほど先ほどの疲れが蒸し返して来るのを感じたので、さっさと上がる事にした彼女は、浴衣に着替えて廊下に出た。


 すると自分の身体が少し火照っていたのを感じ、水分を取ろうと近くにある自販機に目を向けた。


 その時だった。


 「よっこいせ…」


 そんな声と、床にある扉が開くと、そこから主人公…である。


 「……」


 目が合うとお互いに何とも言えない空間が広がる。


 さすがに黙ったままだったが、先に耐えられなかったのは。


 カサカサカサ…。


 一匹のゴキブリ。


 隠密行動には、その表現が似合う指名手配犯、漆黒の魔導士。


 「とうっ!!」


 背後から、ものの見事なタックルをくらう主人公の姿があった。


 「相変わらず、変なトコロから登場してくれるな?」


 「そ、そうですかね。


 私にとっては久しぶりのような気がしますが?」


 そのまま治安部捕縛術で取り押さえられ、軽く痛みを感じるほど身動きを封じ込む湯上りな彼女は、圧し掛かりながら聞いて来た。


 「大体察しは付くが、理由を聞かせてもらうぞ?」


 「これは正面から来いと言いたそうですね。


 ですが、玄関先には治安部の見張りがいましたからね。


 いたっ、いや、怪しまれる事は避けたいじゃないですか?」


 「ふっ、なるほど。


 だが、良くこういう通路を都合よく用意できるモノだな?」


 「いたた、痛い、いい加減離して下さいよ」


 「今の私は不機嫌だ。


 大体、温泉のあったフロアにもこんな扉があったはずだ。


 お前は世の常、主人公は読者の期待には答えないといけないという事を…知らんようだな?」

 

 「あったたた…。


 何ですか、その主人公は、言っておきますが…。


 あの扉の裏側にあらかじめ『自販機前』とか『女湯、洗い場』とか書いてあるんですよ。


 私ゃ、人間ひととしてやってはいけない事は、いけないと思うのですよ。


 どうですか、読者のみなさん?


 ていっ、い!!」


 話している間にもドタバタと足掻くが、さすがに治安部のリーダー、レフィーユ・アルマフィ、湯上りの香りを香らせる中でも、その捕縛術は抜け出す事が出来なかった。


 「オルナにこんな体勢をとらせん事だな。


 私と違って、致命的なダメージを負う事になるぞ?」


 風呂上りの香りを振りまきながら、アドバイスをしていた。


 そんな時である、騒ぎを聞いた従業員らしき人物が現れた。


 「やや、すんません、アラバの兄さん!!


 取り込み中でしたけい!?」


 驚いて明後日の方向に行ってしまう。


 「違います、助けてムカイさん」


 慌てて呼び止めると、レフィーユもそのやり取りで、知り合いだと気付いたのだろう。


 「兄さんだと?」



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