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第三十六話 「地下都市ノア」

重い隔壁が閉じる。


ゴゴゴゴ……ッ!!


直後。


地上から凄まじい衝撃音が響いた。


ドォォォン!!


地下通路全体が揺れる。


照明が点滅し、天井から砂埃が落ちてくる。


木更は壁へ手をつきながら息を整えた。


「……今の」


銀髪の少女が振り返る。


「地上区画の消滅」


声は冷静だった。


だが拳は震えている。


「観測者に見つかった区域は、基本的に終わる」


木更は言葉を失う。


地下通路の奥から、複数の武装兵が走ってきた。


防護服。


機械化された装備。


人格汚染を検知するセンサーまで付いている。


兵士の一人が少女へ敬礼した。


「第七探索隊、帰還確認!」


少女は短く頷く。


「生存者一名保護。汚染反応なし」


その瞬間。


兵士たちの視線が木更へ集中した。


ざわつきが広がる。


「……本当に?」


「外界接触者だぞ」


「しかも地上から?」


少女が低く言う。


「今は詮索するな」


そして木更へ手を差し出した。


「私は《榊レイナ》」


「地下都市ノア、第七探索隊隊長」


木更は少し遅れてその手を握る。


「羽川木更」


その名前を聞いた瞬間。


レイナの目がわずかに揺れた。


だが今は何も言わない。


彼女は木更を通路の奥へ案内する。


地下都市ノア。


そこは巨大だった。


果てしなく広い地下空間。


人工の空。


無数の居住ブロック。


市場。


工場。


学校らしき施設まである。


数万人規模の人間が生活していた。


木更は呆然と見上げる。


「こんな場所が……」


レイナが答える。


「人類最後の避難都市の一つ」


“最後”。


その言葉が重かった。


その時。


天井の巨大モニターへ警報が映し出される。


【地上第三区画 消滅確認】


【観測災害レベル4】


街中が静まり返る。


誰もが慣れているような顔をしていた。


だが目には諦めがあった。


木更は小さく呟く。


「……ずっと、こんな世界だったの」


レイナは少し黙る。


そして。


「十二年前、“最初の観測”が起きた」


「そこから世界は壊れ始めた」


木更は目を細める。


十二年前。


人格世界Ωが起動した頃だ。


つまり。


世界崩壊とΩ計画は同時に始まっていた。


その時。


ノア全域へ、突然サイレンが鳴り響いた。


ビーッ! ビーッ!


全モニターが赤く染まる。


【緊急警報】


【地下都市内部で人格反応を検出】


【未登録コード】


レイナの表情が変わる。


「……あり得ない」


次の瞬間。


地下都市の中央モニターへ、“一人の少年”が映し出された。


制服姿。


黒髪。


そして。


朝霧カイの顔だった。

【作者からのお願い】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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