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第三十三話 「境界突破」

「木更を、外へ出せェェェ!!」


その叫びと同時に。


人格の海が爆発した。


ドォォォォン!!


白い光が、黒い海を切り裂く。


イーターの身体が崩壊しながら暴走する。


無数の人格が空へ解き放たれていった。


泣き声。


叫び声。


笑い声。


何千もの“人間だったもの”が、光の粒になって消えていく。


“監視者”が初めて反応した。


『異常行動を確認』


『人格核Ω、制御不能』


木更は走る。


門へ。


本物の世界へ。


背後では、カイの光が“監視者”を押し止めていた。


だが限界が近い。


管理AIの警告。


【人格核出力、臨界点到達】


【朝霧カイ、存在崩壊開始】


木更の足が止まりそうになる。


「……っ」


だが。


カイの声が聞こえる。


『振り返るな!!』


木更は唇を噛み、さらに加速した。


門の向こう。


崩壊した現実世界が近づく。


灰色の空気。


本物の風。


本物の重力。


その瞬間。


“監視者”が木更へ視線を向けた。


世界が止まる。


管理AIが絶叫する。


【観測固定!!】


【羽川木更、存在消去危険!!】


木更の身体が透け始める。


人格が分解される。


意識が消える。


だが。


次の瞬間。


黒い海から大量の手が伸びた。


人格たちだった。


今までイーターに喰われていた人々。


彼らが木更を押し上げる。


『行け』


『生きろ』


『外へ』


無数の声。


その中心に、カイの声が混ざっていた。


白い光が、木更を門の外へ弾き飛ばす。


世界が反転する。


視界が真っ白に染まる。


そして――。


ゴロッ。


硬い地面へ身体が転がった。


痛み。


冷たい風。


砂埃。


木更はゆっくり顔を上げる。


そこは、崩壊した都市だった。


本物の世界。


遠くでサイレンが鳴っている。


空は灰色。


だが。


“現実”だった。


その時。


複数の銃口が木更へ向けられる。


「動くな!!」


防護服姿の人間たち。


ガスマスク越しに、震えた声が聞こえる。


「……人間?」


木更は呆然と彼らを見る。


その瞬間。


背後の“門”が閉じ始めた。


崩壊する人格世界Ω。


その奥で。


朝霧カイが最後に笑った気がした。


そして。


門は完全に閉じた。

【作者からのお願い】

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