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水の記憶 61


ゾドでは男たちが森を切り開き更地にした場所に、さらに穴を深く掘っていた。


オークに惨殺された者たちの墓である。


かろうじて顔が判明できたのは、ごくわずか。


オズバンが村ビル達と協議して、結局は共同で墓をつくることにしたのだ。


アイオン達の警護に残った兵士達も、総出で穴を掘り、遺体の残骸をビルが、魔法ではこんでまた兵士たちが土をかけ、ようやく完成した。


「未来ある若者たちがー。やりきれないな」


アイオンがため息をつく。


アイリスとロレーヌが墓前でひざをつき、鎮魂歌を詠唱する。


彼ら王族にできるわずかなことだ。


異母妹たちの背中にさらにもうひとまわり小さな影をアイオンは思い出した。


「サラシアナは大丈夫だろうか?」


問いかけに、ビルの顔がこわばる。


「ビル殿?」


「…先ほど、わが陛下より心話がありました。カインどのと数名の若い兵士が狭間の民に剣を向けたと」


「ばかな!狭間の民に剣をむけただと?なんてことをー。それではカインたちは?」


「サラシアナ王女と我が国の陛下により、いまはまだご存命です」


詠唱を終えたアイリスとロレーヌにも話はきこえていたらしい。


不安そうにビルをみている。


アイオンが代表してたずねる。


「いまはまだ、とは?」


「サラシアナ様がかなり強引なやり方で、古の精霊たちを呼び起こしました」


「サラシアナが?」


「王女様を導いたのは、我が国の王です。彼らは苦しむカイン様たちを氷に閉じ込め、一時的に仮死状態を作り出しました」


ビルの言葉にとりあえずカインば無事だとアイオンはりかいした。


「感謝する」


「いえ、むしろ、我々はお叱りを受けなければなりません」


「どういうこと?まさかサラになにかあったの?」


アイリスの言葉に、ビルの中世的な顔立ちがさらにゆがむ。


「サラシアナ様の魂が古の精霊たちの影に引きずり込まれてしまいました」


「なんですって⁈じゃあ、サラは?」


滅多に慌てないロレーヌにビルはもう一度ゆっくり首を振る。


「サラシアナ様の魂は、我が国の陛下が贈ったドワーフの指輪により護られています。サラシアナはご健在です」


「そう。それで、あなたはどうするの?ビル・ホーク」


3人の王族たちの瞳をしっかりとビルは見つめ返した。


「私は私の陛下をお護りする義務があります。どうか、私にゾドを離れる許可を」


「当たり前だ、ビル・ホーク。よくやってくれた。礼をいう」


「ありがとうございます。殿下方もお気をつけて」


そういうと、ビルは消えた。


移動魔法だ。


「大丈夫かしら?」


珍しく不安気なアイリスにロレーヌもよりそう。


アイオンは頷く。


「とりあえず、我々は自分たちのできることを精一杯やろう」


そして、待つしかない。

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