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北方海の守護天使  作者: h.hiro
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第22話「採掘プラント防衛戦」

ロック島石油採掘プラントは激しく燃え上がっていた。

「くそお!もう俺達じゃ手に負えねえ、ハンターギルドからの救援はまだなのか?」

現場主任は退避した船の上で自分の無力さに歯ぎしりしながら救援を待っていた。

「先ほどの連絡では、もう間もなく到着すると。」

作業員の1人が通信機から振り向いて答える。

「本当なのか?もう3時間以上たっているんだぞ!?」

何時まで経っても来ない救援に苛立つ主任。

「主任、こちら向かってくる船影を確認しました。」

「やっとか・・・それでどこの商会が来てくれたんだ?」

主任の問い掛けに複合ディスプレーを見ていた作業員が歓喜の声を上げる。

「牧瀬商会のペガサスです。」

「守護天使が来てくれたのか。」

守護天使が指揮するペガサスが来てくれたと気づき主任が安堵の息を付く。

「ペガサスより通信・・・これより消火作業に入るとの事です。」

接近して来たペガサスは主任や作業員達が見守る中炎上中のプラントに近づいて行く。

「微速前進取り舵一杯、消火用ロケット弾発射用意。」

指揮所の艦長席に座って共用ディスプレーに映し出される炎上中のプラントを見つめながら恵理香が指示を出す。

『微速前進取り舵一杯。』

「消火用ロケット弾発射用意に入ります。」

艦橋の副長と火器管制担当が恵理香の指示を復唱する。

舵を切ったペガサスは艦中央に設置された普段は特殊ロケット弾が装填されているランチャーを炎上するプラントに向ける。

今回はプラントの消火作業の為消火用ロケット弾に変更されていた。

「ロケット弾の発射準備完了です艦長。」

火器管制担当が発射準備完了を報告する。

「舵を戻して下さい、速力はそのままで。」

『舵戻します、速力はそのまま。』

艦橋で操舵の担当を取る副長が復唱するとペガサスが舵を戻しプラントと平行に航行する。

「ロケット弾発射。」

進海域監視システムで配置を確認した恵理香の指示でランチャーから消火用ロケット弾が発射され火災を起こしているプラント上空に飛んで行く。

そして発射されたロケット弾はプラント上空へ到達すると設定通り爆発を起こし火炎を一気に吹き飛ばし消火に成功する。

「消火完了です艦長。」

センサー担当からの報告に今まで厳しい表情を浮かべていた恵理香はほっとした表情を浮かべて言う。

「皆さんご苦労様、これで消火作業は終了です。」

プラント上空からの音と衝撃波に主任を始め作業員達は茫然としてしまった。

「あ・・・こうしている場合じゃねえぞ!お前達作業に入れ!」

我に返った主任の叫びに作業員達は慌てて船をプラントに向ける。

そうしてプラントに到着した作業員達は予備のバルブを作動させ噴出していた原油を止める。

「何とかなりましたね主任。」

作業員の1人がほっとした表情で主任に話し掛けて来る。

「まあな・・・だが完全に解決した訳じゃない。」

主任はそう言って油で汚れた顔をタオルで拭くと作業員に指示を出す。

「ペガサスの守護天使を呼び出してくれ、まだ依頼は終わっていないとな。」

「シーサーペントに襲撃された・・・?」

主任から連絡を受けた恵理香はそう言って眉をひそめる。

『そうだ守護天使、3匹のシーサーペントにな、その結果がこれだ。』

作業中に突然海中から襲われその衝撃で火災が発生したと主任はその時の状況を話す。

「それでシーサーペント達は?」

『火災に驚いたのか姿を消しちまったがまだこの辺りに潜んでいるかもしれん、このままじゃまた襲われちまう。』

恵理香は主任の話を聞くと暫し考えてから答える。

「分かりましたこちらで対応しますのでご安心ください、あと守護天使は・・・」

『ああ頼むよ守護天使。』

天使と呼ばないでと言う前に切られた電話に溜息を付きながら受話器を置くと恵理香は隣に立つロベリヤに聞く。

「ロベリヤ、シーサーペントがまた襲って来る可能性は有りますか?」

「可能性は有ると思うね恵理香、連中は執念深いからね。」

聞かれたロベリヤは肩を竦めながら答える。

「そうだとすれば私達が対処しなければなりませんね。」

単なる消火活動だけでは済まなくなったとロベリヤの答えを聞いて恵理香は決断する。

「優香、ペガサスがこのまま追撃に行っても問題は有りませんか?」

ロベリヤ同様傍らに立つ優香は恵理香の問いにタブレットを操作しながら答える。

「燃料及び弾薬は十分、艦内システムにも問題無しよ恵理香。」

「ありがと優香、機関及びセンサーどうですか?」

「機関問題は有りません、何時でも戦闘速力を出せます。」

「レーダー及びソーナー等センサー全て問題無し。」

機関及びセンサー担当がそれぞれの席から答える。

「火器管制も大丈夫ですね?」

「VLS及び艦載砲何時でも行けます。」

火器管制担当も自身のディスプレーを見ながら報告する。

優香と担当乗員達の報告に恵理香は笑みを浮かべて頷くと言う。

「分かりました、レーダー及びソーナーの監視を厳重に、それでは行きましょう。」

「「「了解です艦長。」」」

ペガサスはロック島を中心に8の字に周縁海域を航行しながら捜索を開始する。

「・・・レーダー及びソーナーの反応はどうですか?」

捜索を開始て数時間経った頃恵理香がセンサー担当に問い掛ける。

「・・・今のところ反応はありません艦長。」

センサー担当が複合ディスプレイを見ながら答える。

「プラントに異常が無いか問い合わせてください。」

その答えを聞いた恵理香は共用ディスプレーに表示された時刻を確認するとプラントに連絡を取る様に指示を出す。

「艦長、現在プラントには異常は無しとの事です。」

プラントと交信した通信担当が恵理香に報告する。

「・・・戦闘配置を警戒配置に変更、交代で食事と休憩を取って下さい。」

捜索はまだ続くと判断して恵理香は乗員達に今の中に食事と休息を取らす事にした。

「はい艦長。」

警戒配置に変更されたペガサス艦内で乗員達は食事と休息を交代で取る。

ちなみに指揮所要員には補給担当の乗員達がサンドイッチとコーヒーを配っていった。

「さて上手く捕捉出来るといいんですが。」

サンドイッチを食べ終わった恵理香がコーヒーを飲みながら呟く、見逃せばプラントの作業員を危険に晒さす事なるだけに気は抜けなかった。

「恵理香、気持ちは分かるけど思いつめない様にね。」

難しい表情を浮かべ考え込む恵理香を見てロベリヤが声を掛ける、。

「ありがとうございますロベリヤ。」

優香や乗員達も心配そうに見ており余計な気遣いをさせてしまったなと恵理香が自分を戒めた時だった。

「艦長、複数のシーサーペントらしき反応あり!距離9千、方位020、速力12ノットで進行中です。」

センサー担当が複合ディスプレイを見て緊急の報告を上げるが恵理香は慌てる事無く冷静に指示を出す。

「海域監視システムを表示して下さい。」

恵理香の指示で共用ディスプレーに監視システムによってプラントに一直線に進む3匹のシーサーペントの情報が映し出された。

「進路を020へ向けます、前進全速、総員戦闘配置。」

『進路020、前進全速。』

「総員戦闘配置繰り返す総員戦闘配置。」

艦内にアラーム音が鳴り響き交代で休憩して居た乗員達が戦闘配置に戻って行く。

「シーサーペントが現在の進路を進んだ何処に到達しますか?」

急行の指示後恵理香が問うと進路を計算した結果を複合ディスプレイ上に見たセンサー担当が緊張した面持ちで答える。

「このままだと・・・ロック島石油採掘プラントです艦長!」

ロベリヤの予想した通りシーサーペントはもう一度プラントを襲う積もりだと恵理香。

「プラントに退避するように通信を。」

「はい艦長。」

指示を受け通信を送ると即座に返答が入って来る、このへんは事前に打ち合わせた通りだ。

「プラントより返信『我これより退避に入る。』との事です。」

これで最悪プラントの被害だけで済む、まあ恵理香としてはそんな事を許す積もりは無かったが。

「VLS及び艦載砲発射準備。」

「VLS及び艦載砲発射準備に入ります。」

火器管制担当の復唱に恵理香は頷くと指揮所のロベリヤと優香を含めた乗員達を見渡しながら言う。

「それでは行きましょう皆さん。」

暫く経って複合ディスプレイから振り向いたセンサー担当が報告する。

「シーサーペントまで距離2千です艦長。」

「艦載砲射撃用意。」

「艦載砲射撃用意!」

確実に撃破する為に恵理香は艦載砲の射撃でシーサーペントの進路を変えさせミサイル攻撃のやりやす海域まで誘導する積もりだった。

「距離1千、速力及び方位変わらず。」

「目標データを入力完了、射撃用意良し。」

センサー担当の声に火器管制担当が続いて報告して来る。

「打ち方始め!」

恵理香の指示で艦載砲がら発射されシーサーペントの周りに着弾する。

「シーサーペントがこちらへ進路を変えました。」

目的のプラントへ向かっていたシーサーペント達は身近に現れた脅威であるとてペガサスを認識し向かって来た、恵理香にとって狙い通りに。

「取舵一杯、進路080へ。」

『了解、取舵一杯、進路080。』

艦橋の副長が復唱しペガサスはプラントから離れるコースを取りシーサーペントを攻撃予定海域への誘導を開始する。

「艦長!攻撃予定海域へ到達しました。」

航法担当の報告に恵理香は共用ディスプレー上の海域監視システム画面を見て到達を確認すると攻撃の指示を出す。

「艦首VLS1番から3番発射用意。」

「はい艦長、既に対水上ミサイルに目標データを入力完了してます。」

火器管制担当が恵理香の指示に即座に返答する、優秀な乗員達なので改めて指示しなくても意をくんでやってくれるので楽だった。

「発射!」

「艦長、前方より新たなシーサーペント2匹接近して来ます!」

恵理香が発射の指示を出した直後に、センサー担当が緊迫した声で報告する。

どうやら今進行中の戦闘に刺激され別のシーサーペントが現れこちらに向かってく様だった。

「艦尾VLS1番から2番発射用意急いで下さい。」

咄嗟に恵理香は新たな対水上ミサイルの発射用意を指示する。

「対水上ミサイル2基への目標データ入力よし。」

新たなシーサーペントに対して対水上ミサイル2基の発射準備が完了する。

その時先に発射されたミサイルが後方のシーサーペントに命中し激しい断末魔の咆哮を上げ海中に沈んで行く。

「後方の目標を撃破、前方の目標速度を上げ急速に接近中!」

「対水上ミサイルを発射して下さい。」

「艦尾VLS1番から2番発射!」

艦尾VLSから2基のミサイルが前方から突っ込んで来るシーサーペント達に放たれる。

「3・2・1・到達!」

火器管制担当が叫んだ瞬間2匹のシーサーペントにミサイルが命中し炎と水柱に包まればらばらに吹き飛ばされる。

「状況の報告をお願いします。」

「全ての目標の撃破を確認。」

センサー担当の報告に指揮所内の乗員達に安堵の雰囲気が広がって行く。

「シーサーペント撃破をプラントに連絡して下さい。」

「はい艦長。」

通信担当が恵理香の指示でプラントに連絡を取る。

「プラントより返信『守護天使の活躍に敬意を表す。』との事です。」

プラントからのそんな返答に恵理香は少々過大じゃないかと思わず呟くと。

「いや当然だと私は思うけどね恵理香。」

「そうだね当然だと私も思うよ恵理香。」

「「「私達も同感です艦長。」」」

ロベリヤと優香そして乗員達にそう返され恵理香は苦笑するしかなかった。

「ありがとうございます皆さん、それでは中央港に帰りましょう。」

進路をは中央港に取りペガサスはその海域を去って行くのだった。


15:00 ロック島石油採掘プラントの火災鎮火依頼終了。

また原因となった個体を含んだシーサーペント5匹を撃破。

ペガサス及び乗員に損害は無し。

報告者:牧瀬商会所属駆逐艦ペガサス艦長牧瀬 恵理香。

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