食事でやらかした 2
パンは丸かじりがうまい~\(^o^)/
「松田さん。パンはひと口大にちぎって召し上がってください」
耳元でハインリヒの注意が飛ぶ。
彩那は頬が一気に熱くなった。
いつも出勤前や、お昼休みに、あわててパンを丸かじりしていた習慣が出てしまった。
だって仕方ないじゃないか。
お上品にひと口サイズにちぎっていたら朝も午後の始業時刻にも間に合わない。
ここは王宮の中で、今自分はミハイル殿下の婚約者なのだ。このくらいのことはやってのけなくてはいけないし、気を回さなければならない。きっとファイルにもテーブルマナーのことは書いてあった。そう頭では理解していても恥ずかしいやら、みじめやらで目が熱をもつ。
ガチャンッ。
突然何かを落とすような音がして、彩那はびくりと肩を震わせた。
「ごめん! 手が滑っちゃって」
あせった声に顔をもちあげればミハイルが席を立ち、何かをひろっている。その行動にハインリヒは目を見開く。メイドたちも口元を押さえた。ミハイルは拾ったナイフをテーブルの端に置き、パンを丸かじりする。
彩那は胸がぎゅっと痛くなった。
あんなきれいな所作で食事をする彼が、こんな無作法をするわけがない。
涙が落ちる前に残りのパンをかじって、奥歯に力を入れるように噛みしめた。こみあげる感情にやっぱり味なんてわからなかった。
デザートを終え、彩那とミハイルはハインリヒをともない食堂をあとにした。
「ミーシャ。あの、さっきはありがとう。……ごめんなさい」
となりを歩くミハイルを遠慮がちに見あげれば、おだやかに微笑まれた。
「アヤが、あやまることなんてないよ」
「あの、王子様の婚約者らしくできなくて」
「言ってくれたよね。自分が王子かどうか考えなくていいって」
「え? ……うん」
立ち止まったミハイルにとまどいながら、彩那は返事をする。あのときは混乱している彼をなんとかしてあげたい一心だった。
「うれしかったよ」
安堵と喜びに満ちた笑顔に、張りつめていたものがほぐれるのを感じた。
——あ、やばい
おさまりかけてたのに、目がじわじわしてくる。情けない顔を見られたくなくてそっぽを向く。
「ごめん。嫌な思いさせたね」
ミハイルは手を伸ばすと、彩那の頭をなでる。そのままごく自然に背中にも腕が回され抱きしめられる形になった。背中をさする手がひどくやさしくて。
「うぅ~……」
肩ひじ張ってたつもりはなかったのに。包んでくれるぬくもりに次々に涙があふれてきた。なんだか、彼とはとてつもなく住む世界がちがうのだとの思い知らされた気がした。こんなに、もっとも近くにいても、やっぱり彼は王子様なのだと。
そんなふたりの姿をハインリヒは黙って見つめていた。
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