シャワーとか、歴史とか 5-(1)
——外国のお風呂って初めてだなぁ
シャワールームに足を踏みいれた彩那は、きょろきょろと見回す。ふつうに部屋として使えそうな広さだ。外国は湯船につかる習慣がないと聞くが本当にシャワーしかない。今住んでるアパートもシャワーだけだが、定員数一名だったそれとは段ちがいだ。
——ミ、ミーシャも、シャワー浴びたんだよ、ね?
またもや自らに愚問を投下する。別に彼がつかったお湯の中に入るわけじゃないのだから、よけいなことだ。でも、まだ彼の匂いが残っていて妙に意識してしまう。出会って二日目の関係で、同じシャワーとか。
——いやいやいや。もう最初から非常識連発な事態なんだから
気にしたらキリがない。シャワーを出して髪をぬらす。シャンプーを手のひらに取り、泡立てて髪につけた。
——おんなじ匂い
湿度の高い空間に広がる香りが、肺を満たす。
——期間限定の婚約者なのに
わかりきっている頭に、別の意識が芽を出す。
いっしょの道具を使って、同じシャンプーを使って……嫌でも距離が近づいてしまう気がした。そんなむなしい気もちも消すかのように泡だった髪をシャワーで流した。
用意されていたバスローブを着ると、体を包むふわふわした感触に癒される。ちょっとお姫様にでもなった気分だった。
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