12話
威嚇するビックビーの攻撃範囲に入らないようにしながら俺はビックビーに近寄った。
「近くで見るとあれだな。気持ち悪い。」
ここまで大きなサイズだと蜜蜂が大きくなった姿のビックビーでも気持ち悪い。
そんなキモいビックビーが俺に向かってカチカチと牙を鳴らしながら威嚇する姿に若干の嫌悪感を感じながら俺は手のひらをビックビーに向けた。
ビックビーに向けた手のひらから角鹿の角をすごい速さで変異で生み出して刺突を行なった。
胴体に突き刺さる角鹿の角、それでもまだビックビーは死んでいない。だからそこから更に数回手のひらの角を戻して伸ばしてを繰り返し行なった。
「動かなくなったし死んだだろ。」
ビックビーが死んだことを確認した俺はビックビーの捕食をスライムに変えた手で行なっていく。
そうして捕食したビックビーの能力を変異して確かめてみた。
分かるだけでも全身の身体能力が向上しているし、それだけでなくビックビーの神経細胞を肉体の一部に組み込むことで学習能力と記憶力も高まっている。
スライムの核とビックビーの神経細胞を組み合わせることで俺自身の思考にプラスして並列思考が可能になるのではないかと確かめてみた。
『いやーまさか本当に出来るとはね、本体。』
「そうだな。本当に出来るとは思わなかった。でもこれはかなりエネルギーを使うし消耗が激しいぞ。」
『慣れればそれも少なくなって来ると思うぞ。これからもちょいちょい使って慣れて1日中使えるようにするのが良いんじゃないか?』
「それはそうだけど、こんなモンスターがいつ現れるか分からない森の中ですることじゃないな。防衛都市まで着いてゆっくり出来るようになってからだ。」
そこで俺は自分の並列思考との会話を終わらせて同時変異を解いた。
今の少しだけの間でもいつも以上にエネルギーの消費があった。やっぱり脳機能に関係するからカロリーの消費が多かったのだろうか?
「それにしてもスライム核だけでも並列思考みたいなことは出来ていたけど、なんでビックビーの神経細胞を組み合わせるとああなったんだろ?」
もしかして他のモンスターの神経細胞でも同じことが出来るのではないかと試してみたのだが大鼠以外のモンスターでは会話できるほどの並列思考にはならなかった。
「学習能力や記憶力が上がるから並列思考も会話できるくらいのものになったのかな、これは。」
知能の高いモンスターを捕食してそのモンスターの神経細胞を組み合わせても同じように会話できる並列思考になるのかもしれない。
とにかく新たな発見をしたことは今後の俺の冒険者生活で役に立ってくれるはずだ。
「まただよ。」
今の俺はラビットの耳を変異させて付けているからこそ、モンスターがこちらに向かって来ている音が聞こえた。
数は6匹。その移動速度はそこそこのスピードで移動しているのが聴覚で聞こえる。
次に相手がどんなモンスターなのかを既存の知っている臭いかどうかを確かめる為にウルフの鼻による嗅覚で判別していく。
「この臭いは角鹿だな。それだと角鹿が6匹か……厄介そうだ。」
1匹だけならどうにでもなる角鹿だが、それが6匹もいるとするとどうやって戦おうか。
悩んでいる間にも街道のもうだいぶ近くまで角鹿の群れがやって来ている。
もう仕方がない考えて戦うんじゃなくてその場のノリでやってやろう。
「出て来たな!」
角鹿の群れが街道まで森を突き抜けて出て来ると俺のことに気が付いたようで進路を変更してこちらに向かって角鹿の群れが走り出してきた。
角鹿6匹は全匹が角を突き立てて俺の方へと向かって三角の形で突撃してくる。
俺は待ち構えずにこちらからも角鹿の群れへと向かって駆け出して行く。
先頭の角鹿の角に当たるまでもう少しと言うところで俺は角に当たらない様に回避しながら角鹿の横を通り過ぎる。
「ここ!」
俺は角鹿の隣を通り抜ける際に角鹿の首に触れて手のひらから角鹿へと変異させて角を生み出して突き刺す。
かなり深くまで刺さったと感じてすぐに角鹿の角を手のひらの方へと縮めて変異を解いた。
先頭の角鹿の首から大量の血液が噴き出すその前に俺はもうその場にはいないで駆け抜ける。
駆け抜けたが次の角鹿が角を立ててこちらに向かって来ているのが視界に入るが、この角鹿にも先ほどの角鹿に行なった時と同じように角を躱して首にこちらが変異して生やした角を突き刺した。
先頭は1匹、中段は2匹、最後は3匹で突撃して来る角鹿の最後の3匹の前。
これを避ければ一先ず角鹿の群れの突撃の対処が出来たと言うことだ。
首を動かさずに真っ直ぐに角を向けている角鹿の突撃は思いの外に回避は難しくはなかった。
最後の突撃も最初と2回目と同じように回避した俺は回避途中で角鹿の首に他の2匹と同じように角鹿の角を変異で生やして首に穴を開ける。
そうして角鹿の群れの突撃を対処した俺は振り返った。
角鹿3匹が地面に倒れて首から大量の血液を流して身悶えしている姿がそこにはあった。
あの3匹の角鹿はもう何も出来ずに死んでいくしかないだろうが、まだ無傷の角鹿は3匹いる。
3匹の無傷の角鹿はどうなったのかを見ればが街道をそのまま走り去っていくのが見えた。
「えぇ、逃げるのかよ。」
俺の方に頭を向けることなく一心不乱に角鹿の群れはそのまま走り去っていくのだった。
とりあえずあの逃げ出した角鹿たちを追い掛けて仕留めるのは時間が掛かってしまうだろう。
あの逃げた角鹿の群れを倒すのは諦めて未だに生きている瀕死状態の角鹿3匹を仕留めることを優先することにした。
なるべく弱っている角鹿の個体から仕留めていくのだが、やはり一番弱っているのは最初に首を刺した角鹿だった。
身体を動かすのも緩慢になっている角鹿の首に思い切り足を振り下ろして首の骨を折っていく。
1匹、2匹、3匹と瀕死の角鹿を仕留めていくと、ようやくこの場に生きているのは俺だけになる。
でもこの角鹿たちの血溜まりはやばい。
早くこの血溜まりをどうにかしないと血液の臭いを感じ取ったモンスターがこの場に集まって来てしまうかもしれない。
まず俺が対処したのは角鹿たちの血液をスライムに変異して捕食することだった。
角鹿たちの首の穴から流れ出した血液の対処を終えてから、俺は角鹿たちを1ヶ所に集めて今度は身体全体の捕食を行なっていく。




