第九話 保存領域
リリカと舞前さんは早速キュンキュンについて恋に花を咲かせていた。舞前さんのドキドキを、リリカが微笑みながら受け止めてた。走り出したら止まれないように、恋のエネルギーを受け止めるとはこんなにも糖分が多いのか。
「いのりちゃん真福くんと、お昼を一緒にどうでしょうか」
「え、お昼をですか」
「大丈夫ですよ!まずはヤミーいただきます作戦ですわああ!!」
「ヤミーって美味しいってことか?」
リリカは俺を真剣な顔でこちらに近づいてきた。
「悠斗さまもいつも真福くんと食べているんですよね、いのりちゃんに協力してください!」
「そうだな、舞前さんと真福の決戦を見よう」
「悠斗さま何を想像してるんですか、展開はきゅんですよ」
舞前は拳をプルプルさせながら決意したようだ。
「わかった、私は坂口真福とお昼を一緒にする」
「いのりちゃん応援します!ヤミーいただきます作戦、レッツーグラッチェ!」
「レッツグラッチェ〜〜!!」
リリカと舞前さんは勢いよく手を掲げていた。
恋ってなんかいいな、協力プレイだどこからでもかかってこい!!
****
チャイムが響くと坂口真福は速攻、廊下を出ていくのを俺は止めていた。
「真福、ちょっと待て、どこいくんだ」
「え?購買部だけど」
そこにリリカと舞前いのりが走ってくる。
「坂口真福。君はいつも、そのお昼はどこで食べているんだ、生徒指導として一緒に食べてほしい」
「生徒指導として?お昼も監視されるなんて悠斗、僕なんかしたかな?」
「いやあ、今日は天気がいいからな、あははー行ってきなよ」
「うんうん!真福くん是非!」
「まあいいけど、ということは舞前さん!僕が舞前さんの血を吸ってもいいんだね?」
真福の吸血鬼設定はまだ生かされていたようだ。真福、舞前さんに何回怒られたいんだ。
「……しょうがないな、桜の校庭で待ってる」
真福は驚きのあまり、石のように固まっていた。
「……嘘だろ」
「真福、校庭でお前のキューピットメモリアルが待っているんだ」
「ふふふ、来た来た来た〜キューピー」
真福は全力で舞前いのりについていく。
舞前いのりと坂口真福が桜の木下で座っている。少し離れて、リリカと俺はサンドイッチを食べていた。真福は購買部で買ったホットドックを食べていて、舞前いのりはお弁当を広げて、緊張しているのか前を向いて食べている。
「ところで舞前さん!今神霊部で松井先生のパンツを探してるんだけど」
「ぱ、パンツ!?!?」
「ひまだったら探してくれってお願いされているんだけど、どこに行ったか知らない?」
(真福くん!!)
(パンツって何だよ!!)
リリカは顔を赤らめている。
「変態だな!坂口真福、何の話をしている」
「神霊部の謎!消えたパンツなんだよ」
リリカも気になっているようでむずむずしていた。
「どっかに落ちてないかなーなんて」
「坂口真福」
「あのさ、真福でいいよ」
「…え」
「生徒指導だとしても、舞前さんと仲良くなりたいし」
「仲良くって……私は君のこと怒ってばっかで」
「うん、でも僕は舞前さんといると楽しいよ!指導で色々言われてるのも一理あるし!
友達にならない、いのりちゃん?」
「い、いのりって、はい…よろしくお願いします」
舞前さんは顔を赤らめている。
「僕は吸血鬼だからね!何でも食べちゃうよ」
がぶっとホットドッグを食べている。
(真福くん…)
(マジかよ、真福かっこいいじゃん)
空気を真福にするところは真福のいい所だ。舞前いのりはお弁当をバンっと閉めて立ち上がる。
「…真福、パンツ探してやるよ」
「どどどうしたの、いのりちゃん」
「生徒が悩んでいることを解決するのが、生徒会長の役目だ。協力しよう」
***
放課後はリリカと舞前いのりと神霊部に行くことになった。多目的室ではすでに怪しい光景が見えた。真福と神霊部員の神尾さんが一緒に人形を囲んで話している。
「D組担任、松井先生のパンツの件だが」
「ええ、どうしましょう」
「先生から誰か盗んだ生徒がいるとみた」
「そこで先生を狙っている犯人を探すために、尾行しようと思う」
「び、びこうですか!」
「何かわかるかもしれない」
「ところで、何か見られているのですが」
「そこにいる悠斗、リリカちゃん、いのりちゃん!ようこそ神霊部へ!」
「犯人って本当に探すのか」
「えへへ!みんなでストーキングだ!」
(俺たちが犯人みたいじゃん)
沈黙で息を呑むとごくりとなる。空間は夏の暑さとジメジメした雨で濡れている。
松井先生を尾行すると明治霊園にたどり着いた。神霊部は先生に見つからないようお墓に隠れている。松井先生は線香をあげていた。
「次どこか行く時には、私を起こしてね」
「先生…」
松井先生がお供えで出したのは、幼児の
「パ、パンツ!!」
俺は真福の口を全力で押さえて隠れる。
(静かにしろっ)
「だって…あれは公式なのか、公式でお供えしていいのか」
「…先生の子供かな」
「真福、もしかして子供のパンツを探すのか」
「僕は花柄のパンツとしか聞いてなかったんだよお」
松井先生の後ろのお墓で、中年の男性がじっと見ていた。
「見てください!あれは先生を見ている男性がいます」
みんなが気づくと、松井先生に男性が近づく。
「やばい…犯人だ」
「私がいこう」
「舞前さん、危険だって」
舞前さんが先頭をきり、松井先生の前で男性を睨んでいる。
「パンツは渡しませんよ!!!!」
男性はキョトンとした顔だ。松井先生がびっくりしていた。
「舞前さん、皆さんどうしてこんな所に来てるんですか!!」
「僕達はパンツを」
俺は真福の口を塞ぎ応える。
「たまたま通りかかったんですよ」
「たまたま?」
「ところで」
男性は松井先生の知り合いだったようだ。
「ああ、私は玲香の元旦那だ」
「そうだったんですね」
「あの、花柄のパンツはどこに」
「パンツ?私はお線香あげにきただけですが」
ーーー松井先生の後ろから影のような、異物が現れていて、パンツを食べている。
「先生……後ろ、後ろ!!!」
「やっぱり来ましたね…」
リリカが黒い霧で、呪縛札を召喚した。
「フリージング・ドメイン!!!」
リリカが異生に呪縛札を貼る。空間が保存状態になり時が止まった。みんなは動いていない。瞬間、異生を弾け飛ばした。
「リリカ…」
「悠斗さまは動けるんですね!やはり、先生に着いていた異生でしたね」
「…何だよこれ」
「月城家は異能使いです。異生ちゃんすっごく可愛いかったでしょ?」
初めて怖いと思った。リリカの目は黒目が凛としていて、お墓の周りをくるくるして狂人のように楽しんでいた。
突如俺の頬に呪縛札を貼り付ける。
「悠斗さま…怖い??」




