0076:忠告
一応、向こうの賢者達の教師として働いてはいる物の、休暇というものも当然ある。
何せ賢者達は、一応学科持ちの教員。
常に全員参加できるわけもなく、当然普通の休暇もある。
…なお、連休中なのに休暇?と思わなくも無い。
俺の連休は霧散したんだ。
いくら呼んでも帰っては来ないんだ。
ちくせう。
…とは言え休みの日に、休日返上でやる理由もない。
気持ちややりがいで効率は上がらんのじゃ。
と言う訳で、今日は俺もアルバート氏も、ついでに護衛の猫'sも休みじゃ!
「…どうしても行きたいの?」
「…………(コクコク)」
…と、思ってたんですけどねぇ……
飯か風呂かトイレ位しか降りてこない、半ば引きこもりと化したナイア嬢。
朝食を終えたと思ったら、早速向こうに行きたいと…言ってはいない。
正確にはジェスチャーで、袖引っ張って扉見て、って感じで。
かわいいでしょ?
だが引きこもりだ。
まぁ俺が居なくても、と思ったが…向こうの人からすれば、俺はどこに行ったのってなるわけで……
行くよ!行きゃぁいいんでしょぉ!(ヤケ)
結局、向こうに行くのならとアルバート氏と、ついでに護衛にとウキウキしながら猫'sも来る事に。
双子に至っては、もらえる賄賂目的だよ。
恥を知れ俗物ゥ!
…とりあえずフロード氏のダンジョン構造学に参加するあやめ達と共に向こうへ。
付いたらあやめ組みはサッサと去り、俺達も彼女の目的地へと同伴する。
とは言ってもそう遠くなく、暫くしたらサッサと付いた。
場所は中庭。
魔術の訓練をする場所のようで、幾つか的がある。
何しに来たのかと思いナイア嬢を見やれば、魔術陣を書いたコピー用紙を矢に巻きつけていた。
魔術陣は見える限りびっしりと、しかも隙間無く書かれている。
…執念というよりか怨念レベルである。
巻きつけ終えると、彼女はススッと俺に何かを手渡した。
何かと見るとまさかのレーザーポインター。
あやめが買い物の際に何故かせがまれて買ったヤーツ。
とりあえずジェスチャーで的に当ててくれというので、とりあえず当ててみる。
それを見るや否や、彼女も弓を構えるが…どこ見てんの?
次いで撃ち出されたのは真上。
完全に無駄撃ち!…かと思えば、自由落下の段階で徐々に誘導し始める。
目標はポインターが当てられた、的。
着弾、次いで、爆発。
命中箇所は的ど真ん中。
しっかりレーザーの当てた場所に誘導され、魔術陣により爆発まで起こした。
「まさか、ココまでの物を書き上げとったとは……」
「…すげー」
アルバート氏とトールが驚きの声を上げている。
かく言う俺も、無言だが驚いてるよ。
うん、確かに凄いね。
…でもコレ唯のペイブウェイ※ じゃねーか。
※ペイブウェイ:米軍が運用するレーザー誘導爆弾
…かわいい見た目してるでしょ? ほんわかエルフさんだよ?
しかも弓の腕も中々よく、しかも誘導矢も完成し実力も折り紙つきと来たもんだ。
その実、ミリタリー沼に片足踏み込んでるミリオタエルフなんだよなぁ……
どこで選択肢間違えた。
その爆発に驚いたのか、周りから人がやってくる。
授業中だったり、自由行動中だったり様々だが、その表情には一様に驚き一色。
気を良くしたのか、ナイア嬢はレーザーポインターを別の的へと変えるよう指示してくる。
それに合わせて変えると、再度誘導爆撃を連続して披露し続けた。
しかも全てがちゃんと着弾し爆発してる。
何だ、テロリストの潜伏先でも爆撃する気か。
「おぅおぅ何だ騒々しい」
「やだ凄まじい…あら、もしかしてユウマさんでは?」
唐突に背後から聞こえてくる声に振り返ると、そこには見覚えはあるがこうして合うのは初対面の顔。
片や魔術学園炎系魔術の権威、威風堂々とした大男のライオ氏。
片や風系魔術を本道とした女賢者、飄々とした表情をしたシェール氏。
急進派と懐古派のツートップである。
「おぉ、これはこれは。
先日から行っている新理論講座、拝見しましたが実にすばらしい!」
「これは、えっと…ライオ…さん?」
「うむ、ライオ・ルストフィールドである」
「私はシェール・ド・マエスティでございますわ」
授業の際、後ろの方の席に居たのはうっすら確認してた。
参加自体は1回位しかなかった記憶だが、ここまで有名になってるとは。
「老いぼれ平賢者と言われてたアルバートが、こんないい師に会えるとは…実によかった!」
「気が向きましたら私達も、個別で聞きたい物ですわね」
「いやぁ、HAHA☆」
とりあえず笑ってごまかしとく。
ココでYESなんて言って言質取られる訳にも行かんしな。
そんな世間話をする中、後ろからざわつきを感じ振り返る。
別の重鎮でも来たのかと思えば、まさかの学園長の姿。
「これは…学園長」
「では私達は失礼させていただきますわ」
「えちょ…」
唐突に現れた彼を見るや否や、先の二人はそそくさと姿を消した。
何、逃げたくなるような相手なん?
学園長レイドボスなん?
お願いだからアルバート氏も姿隠さないで!
そんな思考を他所に、学園長は俺とすれ違いざまに耳打ちしてきた。
「…君の力欲しさに、周りを付け狙っている連中が居るようだよ。
周囲には気をつける事だね……」
彼はそう言うや、サッサと奥へと消えていった。
…気が付くと、俺は腰を抜かしていた。
妙にあの人、覇気が強ぇんだよなぁ……
相変わらず… スゲェ"覇気"だ




