0073:異世界生物録3
色々あっての日々の中。
現代で暇を潰し続けるのも限度がある。
とは言え、用も無く異世界に行く訳にも行かないし、危険に飛び込む訳にも行かない。
…逆に言えば、ちゃんとした用事があれば行っても問題は無い訳で。
で、そういうタイミングで、図ったかのように用事が出来る訳で。
そうなったら、もう行くしかないですよねぇ。
「という事なんでまた夕方ねー」
「じゃテクス、後頼んだよ」
「お任せを」
「あぅぅぅ…」
そう言って、悠馬共々向こうに出かける事になった。
といっても重要な用事ではない。
例の地下ダンジョン…領土統一戦争時代の元地下兵舎坑道に関する事。
不死身のフロードさんから、ダンジョンの方針が決まったついでに、その話をするとの事で。
悠馬が帰ってきてそう言ってきたから、速攻で志願しましたよ。
そら家で延々とダラけるのもなんかだったしね!
と言う訳で、パーティーを分割。
学園教師陣は悠馬を筆頭に、アルバート先生と人避けにトールエールの猫兄妹。
自然公園陣は私を筆頭に、タクトとイーリス、あと大福。
で、残りが……
「わ…私も…私もぉ……!」
「筋肉痛で碌に歩けん癖に、よぅ言うわぃ」
ソファにうつ伏せになったシャルリアさん。
太ももには湿布の姿が!
…前日のランニングでタクトを追って無茶したそうで……
加減しろ莫迦!
「てぇ」
「あたたたた…!」
「コラコラやめんか」
本来なら、今日は一緒にお菓子作りでも、と思ってたんだけども…これじゃぁね?
そう思いながら彼女の太ももをつついていくスタイル。
「じゃ、ドランとテクスさん、後お願いね?」
「出てこないかもしれないけど、ナイア嬢もよろしく」
「おぅ、行って来い」
そう言って、扉を潜る私たち一向。
「あぁぁぁぁぁぁぁ……」
そして、閉じる扉の向こうで、手を伸ばし続けるシャルリアさんが哀れで仕方が無い件。
「悲劇でしょうか?」
「喜劇やろ」
せやな。
~~~
やってきました自然公園。
やってきました管理小屋、件個人経営店。
特に苦労する事無く、さも当然のように来れました。
扉を前に、女一人に子供二人。
OPEN(なお異世界言語)と表示された看板。
さぁ手をかけるぞ、といった途端にバーンと開け放たれた。
「どーも!アルバートさんの使いでーす!」
「どーん!」
「躊躇」
さも当然のように開けていく子供組みの姿。
流石にツッコミが追いつかんわ。
…ってアレ?
「おや、確か…アヤメ嬢とタクト殿と…イーリス嬢、だったかな」
「どうも不死身さん」
そう言って、フロアに広げられた宝箱状の無数の箱の山を片付けている、フロードさんの姿。
何事?
「ん? …あぁ、生態研究に必要で注文したんだが…思った以上に多くてね」
「おや、生態研究に宝箱を使うと……」
ほほぅ?
すかさず、ポケットからメモ帳とペンを引っ張り出した。
設定魔と笑われるが、それがどうした。
こういう細々とした物が面白いんじゃないか!
「で、で、で? どんな生物に使うんです?
住処?隠れ家?それとも収集癖のある生物ですかね!」
メモを片手に、ツカツカとフロードさんに詰め寄る。
若干引かれてる気がするが、そこは気にしない方針で。
彼は私の詰め寄りに若干後退しつつ、住処として使う為に、と教えてくれた。
宝箱が住処と!つまりミミックか!
「正解、宝殻目ヤドカリ科に属する陸生ヤドカリの一種でね。
今回のは宝宿借なんて言われる固体なんだけどね」
随分俗っぽい名前ですね。
「ダンジョン内で宝箱等の箱に住み着き、物を集める癖がある、コイツは貴金属や宝石類を特に好む。
そこから収集ヤドカリや宝物ヤドカリなんて呼ばれてたりもする」
「…ヤドカリってことは、宝箱を変えるんですよね?」
「そう、その際に気に入った物以外を残して宝箱を移る…コレがダンジョン内の宝箱がなくならない理由だね。
ダンジョンに好んで生息する…所謂ダンジョンや冒険者の存在に合わせて進化した個体さ」
「ほほぉ…」
成程、よー出来た種だわ。
が、そう感心する私を他所に、顎に手を当て参った、といった表情になる。
「…でも、肝心の中身もこの宝箱の山に飛び込んでしまってね……」
「えっ、じゃ私達も……」
「いや流石に勝手に開けたりしない様に頼むよ?」
そう彼は続けながら、箱を開けていく。
次の瞬間、グサリ。
彼の胸を鋭い鎌のようなものが、貫いた。
赤い血が、彼の服を染め、床に血溜まりを生む。
「ごう、な゛るがら゛ね…」
ゴフッ、と咳き込むように血を吐きながら、彼は笑みを浮かべてこちらを見た。
一瞬、目を見開き、怯えるような表情をして。
「…あの、死にかけながら語り続けるの、流石に止めていただけませんかね」
素で返す。
不死身なの知ってんだぞ。
「な゛に…いづも゛の゛事゛さ。
大丈夫、どうぜ死゛なない」
「半死になる位なら一思いに死んでください」
酷い言い様?
知ってる。
「ははは、不死だがらね゛、死んでも生ぎ返゛る」
「そんな軽いノリで頻繁に死んでおられても困るんですが」
「軽く、所か相当ホラーだよね」
「それな」
「…きゅぅ」
「あぁっイーリスが!」
私とタクトの会話の最中、背後のイーリスがダウンした。
血溜まりとスプラッターな光景に、目を回してばたんきゅー。
刺激が強すぎるってレベルじゃねーぞ。
「あぁもう!タクトは彼女連れて外で休んでて!
不死身はさっさと片付ける!」
「分かった!」
「ごれば失礼じた…ゴフッ」
いいから、吐血、するのを、止めろ。
こんな休日があって堪るか。
「ほらサッサとモップかける!」
「ボク、これでも死にかけなんだけど?」
「黙れ不死身」




