0057:共に居るエルフ
日も暮れ、家々に電気が点る時間。
我が家は夕暮れ時、まだ日が落ちきる前に夕食となっている。
そこには猫二匹…もとい、双子が入り浸るようになり、我が家には人が溢れている。
元々俺とあやめの二人。
そこにテクスとイーリス、さらに大福の二人と一匹。
更にシャルリア様を筆頭にタクト、ドラン、そしてテレーザの四人。
この時点で既に八人に一匹。
そこに今、四人が加わっているのだ。
溢れて当然である。
一人は我が師であるアルバート氏。
そこに氏の養子である兄妹のトールとエールの双子。
そしてもう一人が、エルフのナイア嬢。
本来、こっちに紛れ込んでるのは猫兄妹のみである。
が、しかしだ。
「今夜もお邪魔いたすぞ」
「…………」
「いやいや、どぞどぞ」
そう扉から入ってきたアルバート氏とナイア嬢を、テーブルに案内する。
自分の恩師を置いて、さらに恩師の弟子を差し置いて、双子だけ夕食に混ぜるというのはおかしい。
それ故、食事時には必ず全員呼ぶように心がけている。
とまれ、コレだけの人数となると大皿料理の割合が増える。
個人個人に一皿ずつなんて用意してたら、あやめが過労でぶっ倒れかねん。
都合12人前とか飲食店じゃねーんだぞ、と。
とりあえず揚げ物、鍋物、中華なんかは大皿料理で出しやすい筆頭。
個別で取って個別に食えぃ。
そして一部はそれを肴に酒を飲む俺達。
最早見慣れた光景だろうよ。
…そんなワイワイと、皆で食事をするアルバート氏関係者を眺める。
…アルバート氏。
俺の魔法の師であり、魔術学園の一教師。
曰く俺ほど魔法の運用効率がいい訳ではない、ただの頭でっかちと言うのが自称。
次いで猫の双子の兄、トール。
前衛職の盗賊で冒険者志望の猫獣人。
腕前もあるし罠の知識も十分あるが、騒がしく猫っぽい気分家なのが玉に瑕。
その妹のエール。
同様に前衛の闘士で、速度と連打で戦うライト級ボクサー。
避けながら敵に連打を加えるラッシュスタイルだが、こっちもマイペースなのが何とも。
…そして最後に、尖った長い耳を持った金髪美女。
ファンタジー代表種族、エルフのナイア嬢。
彼女に関してを思い出すたびに、何ともいたたまれなくなってくる。
曰く、元々魔法が得意なエルフの中で、一切の魔法適性を持たなかったそうで。
何年、何十年かけても、一切の魔法が使えない事を不思議に思った両親は、魔術学園に入学させたそうだ。
結局そこで魔法適正が一切見られない事が判ったそうだが、彼女の集落では魔法が頂点。
魔法が使えるようになるまで帰るな! …なんて言われたとか。
同属に否定され、魔法が使えないだけで学園でも蔑まれて、彼女は存在場所を失った。
ストレスから対人関係が苦手になった彼女を、アルバート氏だけは見捨てず、個人的な弟子にまでした。
そうして今に至るそうだ。
実にイケメン。
イケオジで魂までイケメンとか。
嫌いじゃないわ!
今も喋ることは苦手なそうだが、対人関係は猫'sもあって大分改善。
ここまで随分苦労したそうで。
…それでも魔法に関しては一切ダメもダメ。
それ故に方向性を変更し、弓矢と魔術陣を使った魔術矢の研究を進めているそうだ。
元々手先は器用だったようで、見せてもらったけど…ヤバイね。
矢尻に米粒並みの文字でビッシリと魔術陣書かれてた。
早とちりや独断先行も多々あるそうだが、授業もしっかり受けている。
その間に関係ない魔術の知識も詰め込み、その間に弓の練習もしっかり。
…期間として、大よそ既に20年。
最早執念を感じる。
…ただ、そんな努力家な彼女なんだが……
「最後の一つ…欲しい?」
「…………(こくり)」
あやめのその一言と、箸に挟まれた唐揚げを見つめている。
オイさっきまでのクールビューティーは何処いった。
「欲しいぃ~?」
「…………(じぃー)」
「ほらぁー」
「…………(じぃー)」
ヨダレ垂らしながら、右に左にと動かす唐揚げに視線釘付け。
「俺も欲しい」
「私もー」
「ちょっとしか食べれて無い彼女の為の物だからダメー」
「バクバク食いまくったよねこの猫」
白米より食べてただろきっと。
というか、食べ物前に待ての姿勢とか完全に犬だコレ。
猫兄妹に対して次は犬だコレ。
あやめもにへらっとして無いであげなさいよ。
「あーん」
「あー……」
…なんなんだろうかコレ。
努力家、手先が器用な弓の使い手。
魔術が使えない反動なのか、物凄い貪欲に知識を吸収。
魔法の変わりに魔術陣を学び、弓と併用する等……
超努力型の彼女が、今や唐揚げ一個をおいしそうに租借している。
…なんだコレ。
(エサを受け取る雛鳥を思い出す大福の図)




