0052:作戦決行 前編
いい考えは置いといて、作戦は決まった。
即座にその場に居る全員に振り返り、言葉をかける。
「ゴーレムの攻撃優先順位は?」
「派手に動いてる生物だったはずじゃ」
「なら囮は……」
「私の出番でしょ?」
そう胸を張って言い張るテレーザ。
張る胸もねーのに。
「じゃあシャルリア様は治療に専念して、後どれ位かかりそう?」
「完治なら丸一日は……」
「よし、ならタクトとナイア嬢は立坑内の連中に作戦内容伝えてきて!」
「判った!」
「…!」
「このっこのっ」
「その…いいのでしょうか?」
「いつもの事じゃん」
そうやで、テレーザに蹴られるのなんていつもの事だ。
何、気にする事はない。
「壁の破壊は俺が……」
そうして壁に振り返る。
非常に高い壁。
外にはゴーレム。
破壊の衝撃で破片が積もる可能性を考えると、どう壊すべきか頭を悩ます所だ。
「ぬー…天辺から爆破しても破片が飛ぶし……
下からだと破片が積もるし……」
「ならばワシが破片の誘導路を作る」
「…できるので?」
「お主の魔法の師は誰じゃ? 造作も無いわ」
そう、アルバート氏は不適な笑みを浮かべる。
やだ、何このイケオジ。
「誘導路を作り次第、一斉に破壊するんじゃ」
「了解!」
その言葉と共に、空気が変わる。
アルバート氏は杖を片手に呪文を詠唱し始める。
俺は片手を壁に向け、集中する。
イメージしろ……
天井に被害を与えないように、かつ確実に破壊するように……
考えろ、集中しろ……
失敗を考える必要は無い……!
爆破目標は壁の中。
水素のみを収束させ、次いで空気を圧縮する。
「伝えたよ!」
「大丈夫じゃろうなぁ!」
聞こえてくるドランの叫び声と、一緒に聞こえる金属音。
戦いはまだ続いている。
「よし…テレーザ」
「何さ?」
「ゴーレムに殴らせる場所は……」
「判った」
…流石、思考を読んで頂いて助かるね。
どうでもいい思考位はスルーしてくれてもいいのよ?
「やなこった」
「あぁんひどぅい」
そう言いつつ、収束を終える。
アルバート氏も詠唱を終え、魔力の誘導路が出来上がっていた。
…というか、色の付いた魔力壁って初めて見ますが、何アレ。
僕ちゃん教わったこと無いんですが。
「準備完了じゃ」
「…うっし」
氏の発言を最後に、準備は整った。
「作戦開始!」
俺の叫び声と共に、壁は爆発した。
~~~
閃光、次いで、爆裂。
地下には似つかわしくないその破壊は、確実に壁を崩壊に導いた。
破壊によって崩れた石は、魔力で編まれた誘導路に落ちると、その道を伝って落ちていく。
破片は内側に飛ばず、そして真下に落ちず、左右にしっかりと。
次第に崩落音が収まり、爆発と崩落によって起きた土煙が周囲を覆った。
次の瞬間。
「…来た、来たよぉ!」
あやめの叫び声に合わせる様に、ドシン、ドシン、と振動が伝わる。
壁が綺麗に取り払われたのもあって、ゴーレムが侵入してきた。
ここまでは作戦通り。
次の誘導は、完全にテレーザ任せになる。
失敗すればテレーザは叩き潰される。
誘導に失敗すれば、俺達動けない連中がそろって叩き潰される。
そんな可能性をはらんでいる。
が、それほど心配はしていない。
アルバート氏の見立てと、テレーザの腕前ならば。
「こっちだ木偶の坊ォ!!」
その声が響くと同時に、テレーザがゴーレムの前に躍り出る。
本来ならば自殺行為もいい所だが、彼女はやつの鼻先に飛び出たのだ。
腕の稼動範囲的に、即座に攻撃できまい。
次に彼女は、光を纏いながら左右に揺れつつ、素早くヤツの前へと躍り出る。
振るう腕は当たる事無く、そのすべてが空を切った。
次第に彼女は距離をとり、目標地点へと移動する。
それに合わせる様に、先ほどまでテレーザを振り払おうとしていたゴーレムは、また再び足を上げた。
「よっし!」
「…ふぅ」
ドシン、ドシン、と振動と共に音を響かせ、妖精の光にまるで誘われるかのように動き出した。
第一の目標地点は、テクスとドラン、そしてタクトが居る立坑。
「来た!こっちに来た!」
外でこちらの様子をうかがっていたタクトは、即座に声を上げた。
戦闘を続けるドランとテクスは、戦いながら視線をこちらに向け、期を伺う。
確実なタイミングで、かつ最高の瞬間を。
振動と音が徐々に彼らの近くへと迫っていく。
そしてテレーザは、鼻先での誘導を止め、地表付近へと滑空した。
場所は彼らの居る立坑、その真横。
ゴーレムは狙いを定めたのか、ゆっくりとその巨腕を振り上げ……
「今だ!」
次の瞬間、タクト達は立坑から駆け出し、飛び退く。
瞬時に、ドガン。
叩きつけられた地面は隆起し、炸裂し、崩壊。
立坑と立坑の間の地面は、その一撃で粉砕される。
その振動にも恐れずに飛び出そうとするノーム達だったが、その行動は失敗に終わる。
そう、狙った場所は立坑同士の間。
片や排水されず、水が溜まり続け、隣に流れ込んでいた。
その壁が破壊されたらどうなるかなど、考える必要も無かった。
次いで、濁流。
崩壊した地面は、圧力に負けて一気に流水へと変じ、濁流となって流れ込んだのだ。
流れ込む土石流は、数と暴力で迫っていたノームすらも、あっという間に飲み込んで流していった。




