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扉開けたら即異世界 -ぶらり異世界冒険記-  作者: 神風 翼
第03章:迷宮編
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0047:地下奴隷坑跡地


バダバダバダと、細い小さな立坑に響く。

隣接した昇降水路に溜まった水が、途中の螺旋階段に当たりながら、水しぶきを上げる。

上を見れば、暗がりで何も見えない光景。

ただただ、音を立てて水が地面を打ち鳴らす。


「結構深いな…」


立坑の底、長い螺旋階段の底の光を前に、俺はそう呟いた。

光は例の発光する苔だ。


「上より光が強いね」

「多分二酸化炭素が溜まってるからじゃないかな…上でも息吐きかけたら強く光ったし」


イーリスの疑問にあやめはそう答えながら、辺りを見渡している。


幾分古く、長年使われていないであろう底には、上から流れ落ちる水が僅かに溜まるのみ。

その水もすぐ近くの排水溝に流れこんでいく。


「…地下道ってとこかね」


そう呟き、先に見える前後の道の一方へと歩を進める。


並び順はテクス、タクト、ドランを前に。

後ろには俺とあやめとシャルリア様。

間に挟むようにイーリスと大福、あとテレーザといった陣形で。


苔の光がしっかりしてる分、持ってきた懐中電灯を点けなくても十分見える。

強発光式のLED版を持ってきた意味とは……


やるせないぜ。



…ま、道が狭い以上、光はそんなにいらない。

何せ一人が両手を広げれば、もうそれで一杯な位に狭いのだから。


「…物資を運び入れる場所には見えないなぁ」

「第一湿り気ばっかで保存には向かんでしょ」


それな、何て答えつつ左右を見渡す。

壁ばかり、と思えば下のほうには排水溝のような鉄格子がちらほらと見える程度。


「…いえ、ここは恐らく元奴隷坑かと」

「奴隷坑?」

「奴隷を使って掘られた坑道ですよ…しかも大分昔の……」

「そりゃ400年前の代物だしなぁ」


テクスの一言に、そう返すタクト。

そういや400年前の領土統一戦争時代に整備された奴だったね。


「って事は、ココで奴隷は働かされてたのか」

「まぁ…今と比べれば大分扱いは酷い物でしたが……」

「そうなの?」

「今と違って、奴隷は全員元犯罪者だったそうです。

…そういった歴史ならドラン殿やテレーザ嬢の方が知っているかと……」


…そういえばドワーフやフェアリーって長命種なんだっけね。


「…恐らくココは排水房と見て間違いないの」


そう語り、全員の視線がドランに集中した。


「排水…房?」

「おぉ、…奴隷を従順にするのにも、吊るすにも刎ねるにも、結局道具には金がかかる。

金を使わずに痛めつける為に用意されとったのが、この排水房だったそうな」


そう言ってその場でドランは屈んだ。

それに合わせる様に一緒に屈んでみる。


「ほれ、奥を見てみぃ」

「…排水溝じゃなくて独房だったのか」


その鉄格子の奥には、廊下の地面よりも深い位置に埋まるように配置された部屋があった。

その小部屋の壁には、錆付いた鎖と金具が未だに残っている。

どう見ても独房だ。


天井付近には出水口と思われる穴と、その反対側のそれなりの高さに排水口が配置されている。


「昔は奴隷にも階級があっての。

三等から一等、その上の特級奴隷に捕虜奴隷の5つに分けられとった」


そんな構造の疑問を聞くよりも早く、ドランは立ち上がり、歩を進めながら会話を続ける。

それを追いかける様に、俺たちもその後を追いかける。


「三等奴隷は主に窃盗、スリ、万引き等の軽犯罪者。

二等奴隷は傷害、強盗、高額被害を出した犯罪者。

そして一等奴隷は殺人、国家反逆行為、火付けに盗賊なんかをやった重犯罪者なんかがなる」

「火付盗賊改方の出役である!」

「おっ鬼平っ!?」


ドランに続けてもいいか?みたいな顔された。

スイマセン続けてください。


「…で、奴隷になっても反抗的であったり、元から救いようの無い殺人鬼だったり…挙句奴隷同士で殺しをしたとなると特級扱い…言わば死刑同然となる訳じゃ。

一応、その特級と一等の間に捕虜奴隷が入る。

そんな奴隷達を働かせて、昔は坑道を切り開いていたそうじゃ。

等級が低ければ扱いは比較的マトモだったそうじゃが、上になればなるほど過酷極まっていたと聞く」

「それと排水房はどう繋がるんで?」

「排水房は…その名の通り独房を排水溝代わりに使う…水攻め部屋のような物じゃ。

さっき見た部屋は特級の部屋でな、奴隷を繋いで勢いよく頭から排水を被せる。

水は溺れる一歩手前まで溜まり、次の排水溝から捕虜奴隷の排水房へ流れ込む。

水は捕虜と一等は肩まで、二等は腰まで、三等はくるぶし辺りまで溜まるように調整されていたと聞く」

「えぐっ」


それって昇降水路の排水時に一緒に流すって事でしょ?

あまりの現実に気分が悪くなるデス。


「テレーザは知ってた?」

「私、まだ200歳にもなってないんだけど…」

「カカカ! まだ青臭いガキも同然じゃて!」

「うるさぁい!」


あやめはそう言って話し続けてるし。

よく平気ね。


「…まぁ、今となっては奴隷制度自体が見直されたのもあって、そこまで酷い扱いは無いそうだがな」

「当然です。

今の目で見れば刑が重過ぎます」


曰く、今は軽犯罪者は独房入り、重犯罪者のみ犯罪奴隷落ち、との事。

うーむ、異世界はやはり過酷極まる。



…そんな中、排水房のある道を過ぎ、十字路に差し掛かった。

ココからは坑道に繋がってるらしく、一部は土の天井を材木で支えられている。

所々に穴が開き、正に炭鉱同然といった所。


そんな所に、小さな人影が見える。

その小さな姿に合わせる様に、大福の威嚇が聞こえた。


すわ敵対モンスターかと思い、懐中電灯で照らし出す。

そこには見覚えのある剥げた小さい亜人の姿。


「ゴブリン?」


あやめの呟きに被せるように、ソイツはぎゃあぎゃあと声を上げた。

その声に反応するかのごとく、周囲の穴からそいつらがワラワラと姿を現した。


「違う…」


いち早く反応したのは、他でもないテクス。

それに合わせ、奴らは叫び声を上げ、武器を掲げた。


「ノームだ!」


剣を素早く抜き、盾を構え叫ぶように声を上げた。


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