0040:魔術都市マギスティア
――魔術都市マギスティア
総人口約2500人。
海に面しつつも、各国家と街道的な接触の無い孤立した街。
そして、魔術によって発展し、大陸一の魔術学園を有する都市。
貴族領当主公爵、ギルバート・トール・ノイマン6世が管理する独立貴族領。
この都市の始まりは、初代当主であるノイマン1世の時代に遡る。
…時はおよそ400年前。
海に面し、周囲を山に囲まれた安全で完璧な自然の要塞。
立地的にも土地の価値的にも、各国は喉から手が出るほどに欲していた。
当時各国によって行われた領土統一戦争と呼ばれる、貴族領吸収運動。
コレにより、各貴族領は国家へと吸収されていった。
当然、本都市も国家吸収の危機に陥っていた。
軍事力でも、装備品でも、何もかも劣っていた本都市。
軍事的な吸収も秒読みの段階に陥った。
だが、その紛争を解決したのが、この街で生まれ育った男。
当時初の「人間の魔術師」であった「マギウスティス・トラナード」。
彼は大群に対し、たった一人でもって抵抗し、その戦力を打ち倒したそうな。
これにより、本都市は独立を勝ち取り、人間による魔術の始まりの地となる。
それを受けて、貴族当主ノイマン1世の命により、魔術師のための学園の設立が決定。
魔術を前面に押し出した、魔法の都市としての形が決まっていく。
そして、戦勝の名誉にと魔術師マギウスティスの名を都市につけることとなった。
それが「魔術都市マギスティア」の始まりである。
~~~
…とはいえ、だよ。
そんな魔術都市に来た所で、私みたいな魔術適性皆無しには、普通の都市と変わらん訳で。
悲しいかな、何かしたいこともすることもなくて。
結局する事といっても、何かある訳でもなくて。
「それ以前に勝手に動き回る訳にも行かなくて……」
「何か言いましたかな?」
「独り言ー」
そう、テクスに返した。
場所は魔術都市の海岸。
船も少なく、波も穏やかな海辺。
前日の夕方に到着後、翌日の朝に再びやってきた。
まだ4月半ばちょっと過ぎ程度の暖かさではあるが、観光として訪れた。
…とは言っても、殆どの連中が別行動中だからだけども。
シャルリアさんはテレーザと一緒に教会に。
魔術都市への到着報告もかねてだそうで。
タクトとドランはそろってギルドに行った。
私と変質者が怪しまれてたけど、怪しく無かったよ!っていう報告に。
変質者本人こと悠馬は、その足で魔術学園に向かった。
礼の恩師たるアルバートさんを探しに。
「おー…」
対して、返す波間に近寄り、着ては戻るを繰り返す波打ち際を往復するイーリス。
それを心配そうに、かつ温かな目で見るテクス。
そしてひざ上で仰向けに寝転がる大福!
ふぉぉぉもふもふゥ!もっふるもっふるぅぅ!
そう大福を指で撫で内心歓喜しつつ、視線を海に向ける。
「…海は始めてですかね?」
「一応、教育として知ってはいましたが…見るのは初めてです」
そう言われて、まぁ確かにと納得する。
現代の海みたいに観光に来る、何てそう無いだろうし。
…それ以前にモンスター蔓延る世界で、好き好んで泳ぐ奴はそうおらんわな。
海の魔物に襲われかねん、クラーケンとか。
「あんまり遠くに行っちゃダメだからね、危ないから」
「おぉおぉぉ…」
「聞いてねぇし」
「まぁまぁ……」
いつの間にか靴を脱いで、波に攫われる砂の感触を楽しむイーリスであった。
危ないって言ったろうが…言ってねぇか。
「浅瀬なら大丈夫だよね?」
「まぁ…そう危険はないでしょう」
ならよーしお姉さんも海で遊んじゃうZO ミ☆
早速靴脱いで海に突撃だじぇ!
イーリスとドキッ!女同士の水掛ごっこ!としゃれ込むのだ!
そう思いながら、海辺へと突撃するのだった。
「あっ冷っ」
やっぱ止めるのだった。
~~~
「い、居ない?
アポ無しだから断ってるとかでもなく?」
「はい、申し訳ありません」
そう、魔術学園の受付嬢に申し訳なさそうに答えられた。
広大な正面フロアから入って、即効でアポとったらコレだ。
アルバート氏が居ないんじゃ、俺何の為に来たの?って話ですよ。
…向こうにも予定があるとは思うが。
とりあえず、居ないってだけじゃ引き下がれないので、何処に誰と行ったのか、だけは聞いておく。
情報収集と人探しの基本だよワトソン君。
犬のホームズは幼少期に変な性癖を植えつけるよね。
何という英才教育、いいぞもっとやれ。
…じゃなくて。
「で、ではアルバート氏は今どちらに……」
「確か前日に、自然保護公園のダンジョンにお弟子さんとお子さん達と一緒に……」
「…潜ったんですか?」
「はい……」
入れ違いだったようで、一杯悲しみを覚える今日この頃。
どうしましょうか待ちましょうか。
…でもダンジョンも気になるし、うーぬ……
「…今、アルバート殿と言いましたかな?」
「んぉ?どちら様で?」
「あら、こんにちは」
受付嬢に呼ばれた彼はそう言って気軽に挨拶をした。
だからどちら様で?
「あぁ、挨拶が送れて失礼。
自分はこの魔術学園で臨時教員をやっている者です。
専攻はダンジョン構造とダンジョン生物が主だが……」
「これはこれは…アルバート氏に教えを受けた悠馬と言います」
軽く会釈しながら、互いに自己紹介。
ダンジョン生物と構造に関しての先生…だったのね。
「入れ違いと言っていたが、彼に何か用でもあったのかい?」
「まぁくだらないかもしれないですが…まぁ恩を返そうかと……」
「それなら昨日の今日だ、今からでもダンジョンに潜ってみてはどうかね?」
ん?と聞き返す前にそう言われた。
待ってそんな簡単に入れていいのダンジョン。
一応公園内とは言え、都市の中のダンジョンだよね確か。
「なぁに、今から帰る所だったからね、ちょうどいいさ」
「ちょうど…いい……?」
「あぁ、本業の説明がまだだったね……」
そう一息、呼吸を置いて。
「私はフロード、不死のフロードと言う。
自然公園とダンジョンの管理人もやっている」
…魔術都市ヤベーィ。
もっふもふぅぅぅもっふもふぅぅぅぅぅ!
あっ逃げないで大福ゥゥゥ!




