0017:病魔の正体
「…風邪ですなぁ」
あやめと俺とでイーリスちゃんを連れて、先ずは検査と病院へと駆け込んだ。
が、そうおじいちゃん先生は宣言した。
「…え?普通の?」
「普通以外に何があるというんじゃい」
あやめがまさか、と言った表情で聞き返すが、答えは変わらない。
目の前のイーリスちゃんは、聴診器やらで検査を受けていた。
あいも変わらず顔色は悪く、息も荒い。
「最近、びしょ濡れになったりした事は?」
「あ…あり、ます……」
「原因はそれじゃろうて」
そんな会話の後、ピピピと電子音が響き渡る。
彼女は受けた指示通り体温計を先生へと手渡した。
「ふぅむ、37.9℃…ごく普通の風邪じゃい」
そう言うや否や、机の上のカルテに向き直り記載を続ける。
近所の噂は非常にいい、腕の立つ先生故、まぁ間違いは無いのだろうけど……
「ホントに…ホントですか?
現地の人からは…なんか『幼子殺し』とか言われて、恐れられていたみたいですけど……」
「環境次第としか言えんなぁ。
食事と衛生環境が劣悪で、薬も少ないのなら…まぁそう言われてもおかしくは無いだろうねぇ。
ただ、栄養のある食事に清潔な環境、薬も存在しとる日本からすれば『ただの風邪』、で済むわい。
水分補給して、消化のいい物食べて、しっかり寝かせるんじゃぞ。
あと解熱剤と風邪薬、処方しとくぞぃ」
「あ、はい」
ここまで断定されてしまうと、もうハイとしか言いようが無いわ。
~~~
検査を終え、薬を受け取って支払いを終えた後、雨上がりの道を進んでいた。
健康保険証無いとやっぱ高いわ、診察料と薬。
すれ違う車、すれ違う人。
背中に背負った、小さな温もりをしっかり支えながら、道を行く。
「大丈夫?」
「うん…だいじょぶ……」
あやめの問いに、彼女はそう力無く返した。
それに対して、あやめはゆっくりとやさしくなで返す。
そんな背後の情景に、ほっこり。
「テクスさんは?」
「レイスティア公国の教会に出向いて、治癒布を手に入れに向こうに行ったよ」
「…私達が病院に行ってる間に?」
そーよ。
外で待ってた二人を追おうとした際に止められたのよ、向こうに行きたいって。
ついでだから大福も連れて行かせたけども。
とりあえず昼頃に向こう行って探してくるけども。
「やっぱり心配なんだね」
「完全に父親ポジションで草」
「生やすな」
刈られた。
そうなるとお昼はおかゆでしょうか、いいえ誰でも、問いに答えんかい。
何ていつものやり取りをしながら進む。
そんな時、背中の彼女がモゾモゾと動く。
「…ごめんなさい」
か細い、消え入るような小さな声。
「何故謝るのかと」
「だって…病気に…なって……」
辛そうにそう答えるイーリスちゃん。
でもね、実際謝る必要は何もないのよ。
「こっちじゃ普通の病気なんだし、気にする必要は無いのねん」
「そうよ、バカ以外は普通にかかる病気だから」
フェネック、そう言ってこちらを見るのを止めるのだ。
ちゃんと昔引いただろうが。
「それにもう家族みたいな物なんだからさ、今更気にするなぃ」
「家ぞ…く?」
「おうさ」
限りなくやさしく、そう返す。
確かに1週間ぐらいの付き合いしか無いけども、それでも俺とあやめにとっては娘のような…妹のような……うーん……
めんどくせぇ!お前も家族だ!
あと笑顔で「腹パンいる?いる?」て聞いてくるの止めてもらえますかねあやめさん。
そして、さっきよりしっかりと服を握ってくれているイーリスちゃん感極まって泣かないでね。
コレお気にの服だから。
「…泣かない」
「なら良かったでござるマイファミリーイーリスちゃん」
「家族なら…ちゃん付けも…止めて?」
「はい我が姫」
「他人事を止めろと言っているのが聞こえんのかこのサルゥ」
フェネック、腹への弱パンを止めるのだ。
蓄積辛いのだ。
…さてと。
「じゃ、サッサと帰ってしっかり養生しような」
「栄養のある物作ってあげるね、何かリクエストは?」
「ん…じゃぁ……」
そう小さく呟くと、顔を伏せるように呟く。
「あまいもの…たべたぃ……」
「じゃ甘い果物買ってきてあげる」
「うん……」
…小さな家族の、ほんの小さな、初めての我侭。
「レモンを買うと申したか」
「耳ん中にゴミでも詰まってんのか」




