0014:村々の繋がり
森の中にある道。
そこを延々と歩き続けて早6時間。
久々に歩いたが、ここまで長く歩き続けたのは久々ですよ。
足がガクガク…はまだせんか。
装備とのんびり歩きを考慮しても、一時間4キロなら24キロやぞ。
もしかしたらエルイーザから25キロも離れてないんじゃ……
てかイーリスちゃん普通に歩けてるって…逞し過ぎません?
そんな中でも、数分の休憩を挟みつつゆっくりと、それでいて着実に進んでいる。
「メシどうするのー…」
だが腕時計の針(実際はデジタルだが…)は4時近くを指している。
一度戻っての昼飯、所か晩飯に片足突っ込んでいる。
それ故に食事を、と声を掛けてみる。
が、反応は塩。
帰ってきたのは現地の保存食、ジャーキーでした。
しかもあやめが顔面に向かってぺしりと投げつけてくる始末。
せめて袋に入れろと。
とりあえず落とさずに手にしたソレを食らう。
ぶちり、と噛み切って口の中で租借する。
うーん…何とも言えない微妙な味ぃ……
強いて言うなら塩っ辛いゴム噛んでるような…
純粋に硬い、めっちゃ塩辛い、アカン喉が死ぬ。
ベルトに懸架したポシェットに収まっていたスポーツドリンクのペットボトルを手に、ぐびりと飲み込む。
日本の企業が作った呑みやすいさわやかな味で、口の中を綺麗にしながら人心地付く。
「せめて栄養バーをくれ」
「口の中パッサパサになるがよろしいか」
よろしくねぇよ。
「…冒険中は集落での食事以外は、基本想定しておらんのです」
「そうなの?」
はい、とテクス氏は語る。
基本的に人が住む場所は、朝から夕方にかけて道なりに進めば必ずあるそうで。
その間に昼食を挟んでいては、モンスターが活発化する真っ暗な夜を進む羽目になるとか。
一応転移扉で帰れますが…と言おうとした所で、徐々に森が開けてきた。
開けてきたといっても、ソレは切り倒され切り株だけになったが故に、視界が開けてきたに過ぎない。
それでも森はここが出口のようで、その先の道に木々は見えない。
家は点々と数件。
倉庫や納屋と思われる建物を含めても、両手で十分数えられる程度しかない。
その周りには木材や丸太なんかが整理され、ひげを生やしたおっさん達が斧を片手に仕事している。
村…というよりホントに集落に近い。
ここに居る総数的には20人も居ないんじゃないかと。
とは言え、樵?…のようなおっさん達は特に何か言うことも無く、こちらを一瞥すると仕事に戻った。
対してテクス氏は、当然のように集落の端の納屋、その裏手に荷物を降ろした。
え、それでよろしいので?
「暗黙の了解という奴ですよ。
冒険者はそれなりに安心できる所で休息でき、集落も防衛力が一時的とは言え駐在するのですから。
態々仕事の手を止めて挨拶する必要は無い、と」
「なるほど…」
文字通りの暗黙の了解なのね。
集落側も特にどうこう言わないし、冒険者側もどうこう言わない。
まさに共生関係のような…ちょっと違うか?
ま、とりあえず本日の目的地に到着。
人目が無い納屋の裏手で扉を開けて帰宅する。
森の中から即リビング。
電気を付けて靴を脱いで装備をおろす。
…とは言ってもポシェット位ですけども。
「とりあえずお風呂沸かすから、沸いたら入りなさいね」
「お姉ちゃん一緒に…」
「いいわよ、でもまずは晩御飯からね?」
「ん」
ほ っ こ り。
~~~
とりあえずは晩御飯。
有体に言えば余り物ご飯。
…とは言え白米味噌汁はあるし、残ってた鮭の切り身を焼いただけだが、十分ですわ。
「では、いただきます」
「頂きます」
「いただきます」
「はい召し上がれ」
そう言うと、思い思いに口の中に食事を放り込む。
合わせるように美味しい、と言ったかと思えばお茶頂戴だ、それ取ってだ、他愛の無い会話。
その流れのまま、保存食のレパートリーだ、覚悟決めて戦えだ、日常とは言えない日常会話に花が咲く。
いいね、日常。
ウマー。
…そんな会話の中、ふと思ったことを呟く。
「…そういや国境とかどうなのかね?」
「あー…個人証明とかの話?」
「そー」
何せ俺らは異世界人。
自身を証明する物なんてありゃしない。
このリビング案内すれば異世界人とは信じてもらえそうだけどね!
ハハッ、出来るか。
「入国時のゴタゴタは勘弁願いたいもんだねぇ」
「それほど心配する必要は無いかと」
「ぬ?」
俺のそんな呟きに、フォークで食事をしていたテクス氏が反応する。
「何せ冒険者の個人証明など調べられるほど余裕は無いので、問題なく出入りはできます」
「ほーん…そうなると国境とかはどんな感じに?」
「えー…」
彼は一度フォークを置いて説明をしてくれた。
あの世界における国や村の繋がりは、実は非常に単純。
冒険者等のキャラバン拠点としても活用される集落や村は、基本貴族領として扱われる。
貴族がそこを管理維持し、税収として金や物資を受け取り、それを利益としている。
例えば村や集落の規模は、それこそ数人から十数人程度。
これらは移動中の夜営拠点が成長する形で出来た為、収益は材木や農作物、家畜の肉等が主。
小規模過ぎるが故に防衛組織は派遣される事は無く、入村に関してとやかく言われる事も無い。
対して町は、道の分岐点等の人や物流の多い場所に、十数人から百数十人規模に発展する。
物流の要であり、様々な人々が集まる事から自然発生的に拡大し、規模が大きくなっている。
主に貿易、輸送、店や宿等が集まり、それらの家々から税収を得ているとの事
当然冒険者や業者の通行関係から、自警団等が防衛に当たり、規模によっては入るのに金が要る。
こうした大規模な場所を納める場合、貴族私兵団が防衛し完全な独立領として扱われる場合もある。
対して国は、その国を治める王族の住まう町の事を指し、規模も莫大。
王城とその城下町からなる巨大な集合体であり、大多数の商家や店が点在する。
主に国に住む人々の税収、入国料を税収として国を運営している。
そんな国に所属しているのが貴族であり、そこに税金として利益の一部を納めている。
その見返りとして、国家内での地位とそれらの地域の防衛が、国軍によって行われる。
こうして貴族配下の町村が国の所属として扱われるとの事だ。
当然国の配下の貴族領は同国の領地として扱われる。
とは言え国境は特に制定されておらず、配下貴族が鞍替えすればポンポン領土が変わる。
挙句そこまで隣接していない為、国境紛争もそう無いらしい。
基本的に、王国への入国する場所が国境のような物らしい。
因みにあの集落は、エルイーザが共同管理都市となった関係上、国家管理となっているとか。
「…まぁそんな感じでしょうか」
…何とも分かるような、わからんような。
まぁ異世界だから、成り立ちも違うんだろうけども。
ごちそうさまーと声を上げるイーリスちゃんを横目に、そう理解するに勤めた。
「…因みに彼女の家の管理地って…」
「6の町村、8の集落を管理下に置いてましたね」
「ヒエッ」




