表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/28

冬の侯爵領(1)

 目が覚めると私は雪の降る夜の広場に居た。

 ナイトドレス姿の私は裸足でその広場に立っている。でも不思議と私の体は寒くない。

 そりゃそうか……

 目の前で街が燃えてるんだもんね……

 むしろ暑いくらいです。どうしてこうなった。


 見渡す限り炎、炎、炎。

 視界は三百六十度赤に染まり、空に分厚く広がる雪雲は炎の光を反射し、綺麗な橙色に染まっている。

 こんな状況じゃ無ければなんとも幻想的で綺麗な光景なんだと思うことができるかもしれない。

 しかし周りから炎が迫っている状況ではそんなこと考える余裕が無かった。むしろどうやって逃げよう。

 火の手の弱い通りを歩く。裸足なので地味に足の裏が痛い。

 街は見事に炎に包まれ、燃えていないところなど無いと思わせるくらい、火災の規模は大きそうだ。

 私の他に生存者はいるのだろうか?

 そもそもここはどこなのだろうか?

 いろんな疑問が頭に浮かぶ。

 幸か不幸かあまりに強烈な出来事のため、私は自分に降りかかった状況をとても客観的にとらえていた。

 まるでゲームをプレイしているような、そこには確かに私というキャラクターが居るんだけど、それを動かしている私にはこの危険が直接関わりが無いような、そんな不思議な感覚だった。

 実際問題、危険は私に降りかかっているし、おそらく火の手に巻き込まれたら大怪我、下手したら死んじゃうだろう。

 普通に生活しててこんな災害に巻き込まれたらパニックを起こして何もできなかっただろうけど、無駄に冷静になった私は幸いにも街の出口へ向けて歩くことができた。

「なんでこっちが出口って解るんだろう……」

 不思議な感覚だった。

 目の前にある燃える街は初めて見るはずなのに、なぜか私は地理を把握できていた。


 たしかあの自称神様は、”黒歴史ノートの世界が具現化した”って言ってたっけ。

 ということはここは私の作ったノートに出てくる街のはず。無意識に覚えていても不思議じゃ無いか……

 ふと街の門を見上げると、街の名前の刻まれたプレートが眼に入る。

 明らかに日本語ではない奇妙な文字で書かれていたが、なぜか読める。いや、これは私が作った文字だ。

 そこにはボワーズ侯爵領領都ベリーズと刻まれていた。

 そういえば私はフラン・ボワーズって名前にされたんだっけ……


 フラン・ボワーズ……領都ベリーズ……


「あ……」

 そう。私は気がついてしまった。

 この体、フラン・ボワーズも黒歴史ノートの世界のキャラの一人だったということに。


名前:フラン・ボワーズ

身分:ボワーズ侯爵第一令嬢

性別:女

年齢:一三歳

登場作品:炎獄の侯爵令嬢シリーズ(もちろん一行も書いてない)

備考:長年子宝に恵まれなかったボワーズ家に生まれた待望の子供。

利発で明るく、護身用にと習った剣術は下手な騎士にも引けをとらない。

母親はフランが六歳の時に病で他界。その際母親から譲り受けたボワーズ家の家紋が刻まれた懐中時計は肌身離さず身につけている。

一三歳の冬の日、ボワーズ領領都ベリーズで謎の大火に巻き込まれ、その火災は領都全土を焼き尽くすも、奇跡的にフランは生き残る。

領都唯一の生き残りとして、家族の命を奪い、フランから全てを奪った大火の謎を追うとともに、次期侯爵家当主として活躍する。


 なんということだ……

 思い出した情報通りならもうこの街はだめじゃない!

 当然私には行く宛なんて無い。

 雪の降る中体一つで放り出された私にはどうすることもできず、だ凍えて死ぬくらいしか残されてないじゃない。

「大雑把なキャラの設定だけじゃなくて、きちんとストーリー考えておけば良かった……」

 そんな私の後悔は燃えさかる炎に飲まれ、私は燃えさかる街をただただ呆然と見つめることしかできなかった。


「おい! 人だ! 人が居るぞ!」

「大丈夫か! 我らは救援隊だ!」

 呆然と立ち尽くす私の背後からいくつかの声が聞こえてきた。

 振り返るとそこには数台の馬車と友に数十人の兵士が居た。

 兵士たちは私に駆け寄ると、私に一枚の毛布を掛けてくれた。今更になって現実に引き戻されたかのように、私の体は寒さと恐怖で震えていた。

「もう大丈夫だ。この寒さじゃ凍えちゃうから、まずはあっちで火にでもあたらせてもらうと良い。」

 そう言った兵士はおそらく隊長格なのだろう。他の兵士より身形がよく、雰囲気にも貫禄がにじみ出ている。そんな感じだった。

「救護班! まずは少し離れたところで野営の準備をしろ! 戦闘隊はこのまま俺についてこい! 生存者がいるかもしれない。一人でも助け出すんだ!」

 彼がそう指示を出すと、兵士たちはてきぱきとそれぞれの持ち場へと動き出す。私はそれをただ見守るだけだった。


次は一週間後って言いましたね。アレは嘘だ。


とりあえずストックでき次第の更新で行けるところまで行きます。

お付き合いありがとう御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ