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ボワーズ侯爵王都別邸

 冬の乾いた空が透き通る朝、私は女性騎士宿舎の別途で目を覚ました。

「さっむ」

 流石にこの世界にはエアコンやストーブなんかは無い。暖炉はあるけど寝る前に火を落としてしまう。

「おはようございます。フラン様」

 昨日はしゃいでいたお姉様方の一人が私を迎えに来てくれた。

「朝食は当宿舎でお召し上がりになるという事でよろしかったですか?」

「ええ、お邪魔させて頂きます」

「ではこちらへ」

 私は食堂に案内され椅子に座る。女性騎士は人数が少ないと言うこともあり、以外とこぢんまりとした食堂だった。

「今日のメニューはハムエッグとトーストです。普段通りの粗末な朝食ですがご容赦下さい」

 食堂の給仕さんが頭を下げる。いやいや粗末なんてとんでもない。日本で生きてた私にとってはごく普通どころかむしろおしゃれに感じますよ。

 普段食べてた納豆と味噌汁にご飯に比べたらね。いや和食が悪いとは言わないけどさ。

「とんでもない。私こういうの好きですよ?」

「そう言って頂けて何よりです」

 味は普通においしかった。良く転生物の小説なんかだと、同じメニューでも日本で食べてた食事よりおいしくないみたいな描写があるけど、そんなことは無かった。これだけはそう言う設定まで頭が回ってなかった当時の私に感謝すべきかも知れない。食に喜びが感じられなかったら気が滅入りそうだもの。


 朝食を取り終えた後、簡単に身支度をして宿舎を出る。

 こういう時荷物が少ないのは助かったかも知れない。

 宿舎を出た所でレヴァンが待っていた。

「おはようございます、フラン様。今日は寒いので風邪をひかないよう気をつけて下さいね」

「そんなに病弱では無いのですけど」

「いえいえ万一のこともありますから、気を付けすぎて損になることはありません」

 もう護衛の従者というより執事にでもなったかのようなレヴァン。

 そんな風に私を気遣うレヴァンにエスコートされ、王城の入り口へと向かう。そこで用意された舟に乗り込んだ。


 別邸は王都の東側、貴族街と呼ばれる区画にあるそうで、舟で二十分くらいかけて移動した。

 貴族街はその名の通り華やかな街で、路地の一つ一つに至っても他の地域とは違い、歩道が整備された広い水路しか無かった。

 大水路にも色々なお店が並んでいたけれど、貴族街のお店はそれとは比べものにならないくらい豪華な店構えで、貴族御用達の名に恥じない店舗ばかりだった。時間に余裕が出来たら観光したい。


「でけぇ……」

 あ、思わず声に出しちゃった。

 お嬢様言葉を意識できないくらい侯爵家の別邸はでかかった。

 いや大きさだけで言えば王城の方が何倍も大きいんだけど、あれは騎士団や魔術師団といった王国関連施設も含めての規模だったから、驚きはあったにしても声に出なかったけどさ。

 侯爵家って上位貴族ではあるけどもう屋敷って言うか城ですよ城。

 途中の公爵家のお城(正確には屋敷なんだろうけど)も凄かったけど、いざこれが貴方の実家の別邸ですよって言われたら、一般庶民だった人間にしては腰抜かすくらいの驚きですよ。

 レヴァンから何も突っ込みが来ない所を見るとおそらく聞こえてなかったんだろう。良かった。

「王国騎士隊長レヴァン・ドロス! ご令嬢を送り届けに参りました! 門を開けて頂きたい!」

 レヴァンが名乗りを上げる。するとゆっくり屋敷の門が開く。

 玄関まで続く水路を通り、玄関に踏み入れたとき私はまた驚いた。

 エントランスが凄く広い。結婚式場みたいだ。

 その広いエントランスに十数人の使用人たちが並んで最敬礼をしていた。

「ようこそお帰りになりました。フランお嬢様」


名前:セヴィル・フラウディア

身分:ボワーズ侯爵家従者序列一位

性別:男

年齢:五十六歳

登場作品:炎獄の侯爵令嬢シリーズ(当然以下略)

備考:先祖代々ボワーズ家に仕えてきた執事。大火当時当主からの命で領都を離れていたため被災を免れる。無き領主の忘れ形見のフランを支え、ボワーズ領再興の立役者となる。フランからはセヴィーとよばれ慕われている。


 おーけーおーけー。セヴィーね。私覚えました。

「セヴィー」

「「「「「お嬢様!」」」」」

 私が返事をするや否や従者の皆さんにもみくちゃにされる。なんだこのテンション。

「よくぞご無事で!」

「領都の大火の知らせを受け、心配していました」

「またフラン様に会えて幸せです」

 口々に声をかけてくる従者たち。愛されてるなぁ私。いや愛されてるのはフランか。

 それでも胸にこみ上げてくる物がある。私に記憶は無いけど、この人たちのことを何故か愛おしいと思うし、顔を見て安心する。

 私がここに来る前のフランの影響なのかも知れないけど、右も左も解らない世界で手放しに私を受け入れてくれる数少ない人たちだもの。大事にしよう。

「皆様色々話したいこともあるでしょうから、私はこれにて失礼いたします」

 レヴァンは従者たちに対して頭を下げる。

「この度は誠にありがとう御座いました。貴方がいらっしゃらなければお嬢様は無事では無かったでしょう。後日お礼をさせて頂きたい」

 セヴィーはレヴァンに対し頭を下げる。

「礼なんてそんな。職務を全うしただけですから」

 今のレヴァンは真面目モード全開だ。いつもこうなら良いのに。

「そうは申されましても、侯爵家として礼は尽くしませんと……」

 セヴィーは申し訳なさそうにレヴァンを見つめる。私まで死んでたら従者の皆様は一気に無職だもんね。それを救ったんだから何かしたいのは当然か。

「であれば、私を従者として取り立てて頂けませんか? フラン様は剣の腕が立つ分危なっかしいのでお守りしたいのです」

 ここでそれ出すか!

「あの……」

「なんと! それは願ったり叶ったりですな。当家の護衛騎士はほとんど領都へ出払っておりまして少しでも腕の良い護衛騎士を欲していますので」

 私が静止しようとする間もなくセヴィーが話し始めてしまった。

「ではよろしいですか?」

「むしろこちらからお願いいたします」

 なんでこの世界の人たちは私の意思を無視して決めるんだろう。

 まあ私のためになるからって理由は理解できなくも無いけどさ。

「そう言って頂けて光栄です。では騎士団の仕事もありますのでこれにて」

「はい。雇用条件に関してはまた後日」

 あっという間にレヴァンの従者化は本決まりになってしまった。

 もういいや。そんなになりたいならなれば良いさ!

 でもレヴァンの序列は最下位からね! 昔から居るであろう皆に失礼だし、新入りは一番下ってのはどこでも一緒でしょ?

 そんな私の思惑も知らず、レヴァンは嬉しそうな顔をして騎士団本部へ行くのだった。

レヴァン従者化確定!やったねレヴァン!

お付き合いありがとう御座いました。


2017/09/12 誤字修正

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