訓練場
訓練場では十数人の騎士が模擬戦を行っていた。
その熱気は独特の雰囲気で、猛者の集う所として十分な空気だった。
なんか道場での稽古をおもいだすなぁ。後でレヴァンに言って早速今日からでも訓練させて貰おう。
「隊長! お帰りなさいませ!」
「道中のことは伺っております。無事で何よりです」
手の空いている騎士たちは続々とレヴァンに声をかけている。レヴァンは部下にとても慕われているみたい。まあ多少強引な所はあるけど仕事は出来るんだろうなぁ。
そんな風に私が騎士団を観察していると、一人の騎士がレヴァンに近寄ってくる。この騎士だけ鎧に朱のラインが入っている。役職者かな?
「ああ、レヴァン。帰っていたのか。お疲れ様」
「よっ! と言ってもたった数日離れてただけじゃないかシュー」
シューと呼ばれた騎士は、レヴァンととても親しそうに話している。
話し方からするとレヴァンと同じくらいの役職なのかな?
「そちらのお嬢さんが例の?」
「ああ。フラン・ボワーズ侯爵令嬢だ。今は俺の主人でもある」
「へぇ~。レヴァンが従者にねぇ。正直意外だよ? どういう風の吹き回しだい?」
騎士はとても不思議そうにレヴァンの顔を見ている。
シューさんでしたっけ? もっと言ってやって下さい。そして従者の話を無かったことにして下さい。
「被災地でちょっと無礼なことをしちゃってね。寛大な心でお許し下さったんだ」
「そっか。レヴァンは一言余計なことが多いからね。気をつけなよ?」
そう言ってシューと呼ばれた騎士は私の方を見る。
「どうもはじめまして、シュタフゲート・ロズウェルと申します。これからよろしくお願いしますね、ボワーズ侯爵令嬢殿」
にっこりと笑いかけてくるシュタフゲートに対して、私は何か懐かしさというかデジャヴというか、身に覚えがある感じがした。
何だったかなー……。
ふと、レヴァンの情報を見たときの事を思い出す。
────レヴァン・ドロス:聖グラティシエ王国の王国騎士隊長。同じく騎士隊長であるシュタフゲート・ロズウェルとはよきライバルであり親友。
あーなるほど。レヴァンの親友設定のキャラでしたかそうでしたか。
そりゃどうりで覚えがある訳ですよ。
という事で私はシュタフゲートの情報を黒歴史情報から調べてみた。
名前:シュタフゲート・ロズウェル
身分:王国騎士隊長・ロズウェル子爵家次男
性別:男
年齢:十八歳
登場作品:風の記憶シリーズ(当然一行も(略))
備考:聖グラティシエ王国の王国騎士隊長。同じく騎士隊長であるレヴァン・ドロスとはよきライバルであり親友。幼い頃より剣の才能に優れ、17歳という若さにして王国騎士隊長の役職に就く。異界の影響を受けやすい体質のため、ある事件を切っ掛けに彼の運命は大きく変わってしまう。
ある事件って何よ!
レヴァンの情報にもあったけど何でその肝心な所書いてないのよ。あと彼の運命は大きく変わってしまうってザックリすぎるでしょ?
「それにしても騎士団に身を置くなんてずいぶん豪胆なのですね」
シュタフゲートはそう私に尋ねてくる。
「元々剣術は嗜んでおりましたし、今後は少なくとも自分自身は守れるようでないとと考えまして」
「そうですか。その年で色々考えてらっしゃる。」
「そんな大層な事では無いですよ」
なんか凄く物腰の柔らかい人だなぁ。レヴァンも口調は丁寧だけどこの人はちょっと違うというか、騎士っぽく無いというか。
「そうだ。もしよろしかったら今から軽くお手合わせ頂けませんか?」
「え?」
「おいおいシュー。いくら何でもフラン様に失礼……」
「純粋な興味ですよレヴァン。仮にも盗賊と渡り合う腕前と聞いてますから、どれほどの物かってね」
「お前、いい加減その悪趣味直せっての」
戦闘狂だ-! この人戦いが好きすぎる人だ! 俺より強い奴に会いに行くとかそういう人種だ!
そういえば日本にも居たなぁこんな人種。事あるごとに勝負勝負ってうるさい幼なじみ。
まああいつは別としても、こういう人種とはあんまり関わりたくないんだけどなー。でもこれからここに身を置く以上ある程度は付き合いが必要になるよね。
「私は大丈夫ですよ? 逆に貴方の相手が私ごときでよろしければですが」
「もちろんですよ! 私がお願いしてるんですから」
ま、私も剣を振りたかったってのが一番の理由なんだけどね。
そう考えると私も大概か。
「両者準備は良いか?」
私は黙ってうなずく。
「いつでもどうぞ」
シュタフゲートは落ち着いた表情でそう返事する。
お互いの手には木剣。周りには騎士団の人たちが集まっている。
「始め!」
号令とともに私は半歩身を下げる。
シュタフゲートは私の木剣の切っ先を見つめたまま動こうとしない。
しかしシュタフゲートの構えには隙が無く、下手に飛び込んでしまえばカウンターで切られるだろう。
じりじりとお互いの間合いを計るようにすり足で間合いを詰めていく。
先に動いたのはシュタフゲートだった。
「セイヤッ!」
飛び込みと同時にシュタフゲートの袈裟切りが私を襲う。
木剣で右にはじき、私はシュタフゲートの肩口を狙い剣を振り下ろす。
しかし一歩及ばず身を翻したシュタフゲートはその回転を利用した横凪を繰り出してきた。
剣を縦に構えその攻撃を防御する。一見優男に見えるシュタフゲートからは想像が付かないくらい重い衝撃を受け、私は少し飛ばされる。
「なかなかやりますね。その年でその腕前。将来が楽しみですよ」
シュタフゲートはまだまだ余裕そうだ。
その後数度打ち合うもお互いに決め手に欠ける展開になった。
シュタフゲートの一撃は確かに重い。私に直撃すればそこで試合は終わるだろう。でもスピードは若干私に分があるようだ。
攻撃を見切ってかわすだけならまだまだ出来そうだ。と言ってもぎりぎり紙一重の所だけど。であれば長期戦は避けないといけない。
私はこっちの世界で十三歳になってしまったから、日本で培った動きは出来ても体力が追いつかない。
回避に気をとられてたら私の攻撃も当てられない。なら……。
私の得意技の突き。師範代からも筋が良いと言われた私の必殺技。
この渾身の一撃で突き崩すしかない!
覚悟を決めた私はシュタフゲートに突撃していくのだった。
バトルは書いてて楽しいですがやっぱり難しい。
お付き合いありがとう御座いました。




