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俺の望む理想郷

いつでも活気あふれる商店街。だが、今日はいつも以上の活気にあふれている。

商店街に並ぶ長蛇の列。今日は土曜日の為長蛇の列には子供の姿が見られる。

その列の最後尾まで何十メートルも連なっている。

その列に並んでいる人たちの目的。それは今日発売される「リザードクエスト」という昔から人気のゲーム、いやゆるRPGゲームが発売されるのでそれを買いに来ているのだ。

もうそろそろ開店する、並んでいる人たちが一層期待を胸を膨らましているのだろう。

その長蛇の一番前、そこには高校の制服を着た一人の男がすわっていた。

彼の名前は「黒佐木 怜央」。しがない一般高校生だ。

「後1分で開店かぁ…。長かったなぁ」

ぼさぼさの黒髪に覇気のない顔。いかにもクラスの陰気キャラそのものだ。

だが、それでいいと俺は思っている。別にそんな奴だからって社会で役立たないわけでもないからな。

「徹夜して並ぶとやっぱ冷えるな。カイロ持ってきておいて良かった」

俺はカイロを手で擦りながら、白い息を吐く。これから冬に突入する。冬の一夜をそとで過ごすなんて一生に一度あるかないかだ。とても貴重な体験だった。俺の後ろに並んでいたおじさんなんて、深夜3時ころに寝てしまっている。俺は徹夜だ。

「さて、そろそろ開店かな。おい、おっさん。そろそろ開店するぜ」

俺は肩を叩いておっさんを起こす。

「う、うぅーん。おぉ、すまんね。どうもありがとう」

おじさんは立ち上がり、俺に一礼する。すると、おじさんは肩にかかっていたものを取り俺に差し出した。

「昨日、君から借りたジャケット。これのおかげで寒さを和らげることが出来た。本当に感謝しているよ」

「いや、別に感謝されるほどでもねーよ」

実は昨日このおじさんが寝る前、ちょっと寒いのか小刻みに揺れているのを見て俺が来ていたジャケットを貸したのだ。俺はジャケットを受取り羽織った。

「それにしても君はよほどこのゲームが楽しみなんだろうね。僕より早く来ていた人を見たのは初めてだよ」

おじさんは俺の肩を叩いてそう言った。

「そりゃ、世に出ているRPGのほとんどに手を出しているしな。RPGオタクとも言われているんだぜ」

俺は胸を反らせてすこし自慢げに語る。…と言っても自慢できるものではないのだが。

「そうかそうか。そんなにRPGが好きなんだね」

「おう、命の次に大事だぜ」

おじさんと俺。二人が高笑いしていると、店のシャッターが開く。

「さて、買ってきなさい。君が楽しみにしていたゲームだ」

「なかなか話が合っておもしろかった。いい時間が過ごせたよ」

俺は開店した店の扉をあける。

「いらっしゃいませー」

いつも通り、店員の声が店内をこだました


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「ふぅ…。早く帰ってこのゲームをやろう」

俺は商店街を歩いていた。長蛇の列は短くなったが、まだ残っているだろう。店はすこし小さいから、中に入れる人数は限られているし…。

「それにしても、徹夜はさすがにきついな」

俺はあくびをしながら頭をかく。そう言えば風呂に入ってなかったな。ゲームする前に風呂に入ろう。

そう思いながら、帰路に着くとふと足が止まった。

「あ、あれ?こんな道あったっけ?」

俺が目に止めたのは、商店街の裏道に続く細い道だった。ちょうど人がぎりぎり一人入れるぐらいの広さだと思う。

普段は何気なく通り過ぎている細い道だが、なぜか今日は目に止まってしまった。

「この道…。俺の家に近いかな?」

俺としては早く家に帰り、ゲームを開封したい。一刻も争う状況だった。だから、近道があるなら願ったりかなったりだ。

「でも……まぁ。いいか。運に身を任せよう」

俺は細い道を急いで通った。


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「はぁ、迷った」

俺は路地裏の壁にもたれかかっていた。

「なんでこんな道に迷い込んでしまったのか。本当に運に見放されてるわ」

俺は頭をかきながら深いため息をつく。普段からぼさぼさの髪がいつも以上にぼさぼさになってしまった。

「ケータイもないしな。現在地どこなんだよ」

空をみる。そこにはただ雲が風に流されているだけだった。

「いっそ雲になりたいわ」

座り込む。ゲームが入った袋を横に置き、目を閉じる。

「はぁ、RPGなら地図なりなんだり出してすぐ解決できるのに…。現実はこうもいかないのか」

俺は深呼吸しながら考える。そしてひとつの結論に達した。


「あぁ、いっそRPGの世界に入れたらなぁ…」


それは到底叶わぬ願望だということは分かっている。だが、俺には言論の自由がある。自分の願望を口にすることぐらいはいいだろう。

「さて…」

俺は出口を探すためにひたすら歩こうと決心を固め、目を開ける。

が、そこには俺に差し出されているであろう手が映っていた。

「それがあなたの望む世界と言うのなら、あなたをお連れいたしましょう」

俺の眼の前に立っていたのは、俺の後ろに並んでいたおじさんだった。

「どういうことですか」

俺は立ち上がらず、おじさんを睨む。おじさんはさっきと変わらない優しい笑顔を浮かべる。

「あなたにはジャケットの恩がありますので。あなたの願いをひとつだけ叶えよう、と思っただけですよ」

「この差し出している手に応じたらどうなるんだ?」

俺はすこし身を引くようにして問う。

「もちろん。あなたが望む世界に連れて行きます」

俺が望む世界。それはRPGの世界。俺の夢見る理想郷だ。

「そんなことが可能なのか?」

「えぇ、この世界にはいくつも平行世界が存在します。そのうちの一つを改変すればいいだけの話です」

頭が理解していない。この目の前のおじさんがなにを言っているのか、まったく分からない。ただひとつ理解したことと言えば、俺の望むRPGの世界に行けるということだ。

「で、でもこの世界の俺がいなくなるってやばいことじゃないのか?」

「大丈夫ですよ。そこまで手配出来るのが私ですから」

何なんだろう、このおっさん。いろんなことが出来るのか…。

「と、言ってもあなたに拒否権なんか存在しませんが」

「へっ?」

俺が声を放つと同時に俺は手をおじさんに掴まれた。

「えっ、ちょっ、おい!!!」

俺はおじさんに力強く引っ張られる。

「あなたがいないと、向こう側の世界が崩れてしまうんです。早めに処置するのが妥当だと思うでしょう?」

「そんなの関係ねーよ。いきなり過ぎんだろぉぉぉぉ!!!」

そこで俺の意識が途切れた。

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